僕たちの あの日々は
いつ 思い出に 変わって行ったんだろう
出典: やさしい風が吹いたら/作詞:小田和正 作曲:小田和正
1行目の「日々」というのは、主人公と「君」が共に過ごした日々のことを表しているのでしょう。
2人が共に過ごしていた時間は過ぎ去り、今ではその思い出だけが彼の心に残りました。
思い出というのは、もうその地点には戻れないということを否が応でも私たちに対して突きつけてきます。
このパートでは彼の、「君」との別れに対して抱いている切ない気持ちが感じ取れます。
彼にとって「今」であったはずの出来事が、いつの間にか「過去」へと変わっていった。
そのことは彼にとって「君」と過ごした時間があっという間に過ぎ去ったのだということが分かります。
時が流れていくことの切なさが伝わる歌詞です。
刻一刻と「過去」になっていく「今」は、時間が有限であることを私たちに伝えます。
愛の行方
小さな未練の数々
長い坂道 ふり返れば
幾つかの 小さな心のこり
出典: やさしい風が吹いたら/作詞:小田和正 作曲:小田和正
この坂道というのは、主人公が登っているものだと考えられるでしょう。
彼にとっての坂道というのは何を指しているのでしょうか。
これは恐らく、今までの人生の道のりのことを指しています。
彼にとってはまるで坂道と感じられるほど、険しい道のりだったのでしょう。
もしくはこれは「君」と過ごした日々のことを指しているのかもしれません。
その今まで歩んできた道を振り返るという行為が指しているのは、彼が思い出を振り返っているということ。
そして思い出の中に存在している、「君」に対しての後悔や未練を1つ1つ数えているようです。
そこまで重大な未練ではないけれど「あの時ああしていればよかった」と思ってしまうような出来事の数々。
今そのことに彼が気がついたのは「君」との日々を事細かに思い出していることの証明といえます。
愛を失って
ありふれた 愛だった
ずっと 続いてゆくんだと 思ってた
出典: やさしい風が吹いたら/作詞:小田和正 作曲:小田和正
「ありふれた」という言葉はどこか自虐的にも感じられます。
今ではもう跡形もなく消えてしまったことを指して「ありふれた」という言葉を用いているのでしょう。
他の恋と同じように消えていくようなことはなく、ずっと2人でいられると考えていた主人公。
しかし残酷にも2人は離ればなれになってしまいました。
当たり前に続いていくと思っていたほどに「君」に対して彼は深い愛情を感じていたのでしょう。
過去から未来へ
過去になった日々
二人 今を 生きていれば
それだけで 幸せと思ってた 遠いあの日
出典: やさしい風が吹いたら/作詞:小田和正 作曲:小田和正
ただ2人で居られればそれで幸せだと思いながら過ごしていた日々。
その先にも必ず変わらぬ幸せが待っていると疑うこともなかったのでしょう。
しかし今では時が過ぎ去り、そんな日々もまるで夢のように感じている主人公。
誰よりも近い距離にいた2人は今では、とても遠く離れてしまっています。
そのことも彼があの日々を遠い昔のことのように思わせている原因の1つなのでしょう。
彼にとってその思い出というのは、今だからこそ振り返ることのできるものなのかもしれません。
別れた直後の喪失感が消えていき、やっと思い出に浸りながら当時のことを思い出せるようになった。
彼は今、前を向いて新たな道を進んでいこうと考えているのかもしれません。
未来に向かって
やさしい風が 吹いてきたら
歩き始める それを 君も待っているはず
出典: やさしい風が吹いたら/作詞:小田和正 作曲:小田和正
1行目の「風」が吹くというのは彼の人生における新たな段階を指しているのではないでしょうか。
以前までは「君」のことを考え、そのことによって上手く前へ進めずにいたのでしょう。
しかし今、その思い出と向き合うことによって新たな1歩を踏み出したのです。
彼は心の中にある未練の数々と向き合い、「君」との思い出に浸ることで過去を整理したのではないでしょうか。
そして過去を見つめ直したことで、今からの人生が明確になった。
だからこそ彼は未来に向かって歩き出そうという気持ちになったのでしょう。
そしてそんな風に過去に悩むよりも前に進むことを「君」も望んでいる。
そのことに過去と向き合ったことで気がつけたのでしょう。
彼の心にあった「君」への切ない想いも今では晴れて、代わりにそこには穏やかな「風」が吹いているのです。
それは彼の新たな人生を祝福する「風」だといえるでしょう。