ゴブレットとは、飲み物を飲むための容器を指します。
タンブラーのようにカップ部分が大きく、そこに短い脚と装飾用の台が付いていることが特徴。
歌詞を見てみると、そのゴブレットを使って火消しをしようとしていますね。
タバコの火がカーペットに移ってしまって、近くにあったゴブレットの中の水で消す。
そんなイメージでしょうか。
これが意味するのはもちろん言葉通りの光景ではありません。
続く歌詞で明らかになりますが、目の前に広がる光景の衝撃を際立たせるためのフレーズなのです。
マチルダは最初、アパートで起こっていることを理解できなかったのかもしれません。
いつもと違うことは察しつつ、でもそれはタバコの火を消すくらい小さくて簡単なこと。
そう捉えていたのでしょう。だからこそ状況を正しく理解した時の衝撃が大きかったのです。
現実に起こっていたことは
何て事ない
そんなわけない
銃声飛び交ってるランドリー
もうどうかしてしまいそうだわ
出典: MILK ft.000/作詞:神山羊 作曲:神山羊
そんなメルヘンな妄想とは裏腹に、マチルダを待ち受けていたのは厳しい現実でした。
マチルダの父は麻薬横領の報復として殺害され、同じく自宅にいたマチルダの家族も皆殺しにされたのです。
実の父からは邪魔者扱いで寄宿舎に追いやられ、父親の再婚相手からは邪険にされる。
そんな愛のない家族が殺されただけだったなら、マチルダの心はそこまで大きく動かなかったかもしれません。
しかし彼女が唯一心から愛していた幼い弟も殺害されました。
歌詞4行目はそのショックから発せられた言葉だと考えられますが、たった一言だからこそ重みが感じられますね。
衝撃、悲しみ、怒り、やるせなさ、儚さ、苦しみ…。
瞬間的に様々な感情が彼女を襲ったからこそ、このような言葉しか出なかったのでしょう。
マチルダの心の揺れ動きが丁寧に表現されているフレーズだといえます。
教えて欲しかったのは
恥ずかしいほど飛んじゃって
顔にまで出るのさアイロニー
もどかしいその幼さで
罰を越える感覚を内緒で教えて
出典: MILK ft.000/作詞:神山羊 作曲:神山羊
4行目の「罰」。これはマチルダがレオンに抱いた愛情をさしています。
マチルダは自称18歳ですが、実年齢はそれよりもはるかに下。
対するレオンは初老といってもいいくらい年上の男性でした。
親子といってもおかしくはない年齢差があるのです。
しかしマチルダはレオンと一緒に過ごす中で、彼に対して愛があることに気がつきました。
だから一線を超えようとしたのです。
確かにレオンは文字の読み書きが苦手で、年下のマチルダの方がよっぽど上手でした。
3行目の「幼さ」は、そんなレオンのことを表しています。
とはいっても彼は大人です。人を愛した経験くらいあるだろうとマチルダは考えたのでしょう。
だからせがんだのです。やはり彼女は背伸びしたい年頃なのでしょうね。
少しませた幼い少女の心。その揺れ動きが伝わってきます。
そしてここまで理解してから1-2行目に戻ると、ストーリーが繋がってくるでしょう。
ドレスで精一杯のおめかしをしたマチルダがレオンに迫った夜。
大人ぶってレオンを誘ったマチルダでしたが、本当は冷静でいられないほど緊張していたのかもしれません。
何も知らない純粋な少女のフリをしていながら、愛する男女がとる行動のことは理解している。
アイロニーという単語が表現するのは、そんな「大人になりたいマチルダ」そのものではないでしょうか。
マチルダの心
好物の牛乳が意味すること
もう同化してしまいそうだわ
嫌になるほど飲んじゃって
視界も染まりますアイボリー
出典: MILK ft.000/作詞:神山羊 作曲:神山羊
3行目のアイボリーは、牛乳の色を示しています。
実は殺し屋レオン、牛乳が大好物。
ここで唐突に牛乳が登場したのは、マチルダがどれほどレオンに依存しているかを示すためでしょう。
2行目ではマチルダも牛乳を飲んでいたかのようなフレーズが登場しています。
これはマチルダが殺しの特訓をするためにレオンの元へ通い詰めていた証拠。
2人の関係が親密になっていく様子を表しているのだと考えられます。
彼女の罪とは
もどかしいその危うさで
罪を正す感想をもっと教えて
出典: MILK ft.000/作詞:神山羊 作曲:神山羊
レオンは人を愛することを忘れた孤独な男性でした。
観葉植物だけが友達の孤独な男性は、幼きマチルダにとっても「危うさ」を持っているように見えたようです。
しかしそれでもマチルダはレオンに依存し続けます。
それはもちろん彼への好意があったからだとも考えられますが、1番の理由は彼の職業にありました。
マチルダはなんとかして弟の仇をうちたかった。そのためにはレオンの殺しテクニックが必要だったのです。
弟を死なせてしまったことは、マチルダにとって最大の罪でした。
弟の仇をうつことで、その罪を少しでも償えるのではないか。そんな気持ちがあったのでしょう。
だから2行目にあるとおり、仇をうつ=人を殺す感覚を知りたいとレオンに迫っているのです。