あらゆる職業の人へ向けたメッセージ

シンガーソングライターとして活躍する清水翔太

その圧倒的歌唱力作曲から作詞まで何でもこなす才能が脚光を浴びています。

ご紹介する「Curtain Call feat.Taka」は2021年7月に配信がスタート。

翌月にはアルバム「HOPE」にも収録されました。

彼のYouTubeチャンネルにはMVが公開されており、3週間ほどで600万回再生に迫る勢いです。

今回ゲスト出演をしたのはONE OK ROCK」のTakaです。

2人が表わしたいことや曲に込められた想いとは何なのか。

そしてどうしてこれほどまで聴く人の心に響くのか。

曲の歌詞から読み解いていきましょう。

全体の構成

落ち着くのに寂しい、音の秘密

ギターのアルペジオでポロンポロンと音が重なるイントロから始まります。

なんだかもの悲しい、トボトボ歩くような雰囲気を醸し出している秘密はコード進行にあります。

ハ長調であるのに、始まりはいきなりイ短調の主和音からスタート。

4つの和音のループの最後はハ長調に落ち着きます。

ハ長調やイ短調は素直で真っすぐ、飾らないといったイメージを持つ音です。

しかし短調の音が最初にあることで、何か一筋縄ではいかない印象的な感情を訴えかけようとしているのです。

作業員と清掃員になった2人

MVで映し出されるのは暗い夜に働く工事現場の作業員と清掃作業員の2人。

画面の薄暗さが特別感をあえてなくし、日常の1部を切り取ったように感じられますね。

実はこの2人の主人公が清水翔太とゲスト出演のTakaです。

途中には劇場で客席に座る姿や、舞台上で歌う風景が演出されています。

2人は自分が「もしも他の職業に就いていたら」という世界を描いています。

同時に現在の歌手である姿も見せ、まるで現在の自分を振り返っているよう。

タイトルの「カーテンコール」は舞台や演奏会の最後に行われる挨拶や礼のことです。

きらびやかな世界である歌手と縁の下の力持ちである作業員は逆の立場にも見えます。

しかしMVには作業員姿の2人がカーテンコールの場にいます。

華やかなカーテンコールが表わすものとは一体何なのでしょうか。

歌詞を探っていきましょう。

主役と脇役

不平等な世界

誰もが主役のショーなんて
どこにも存在しないんだね
それぞれ決まった配置で
tonight tonight tonight

出典: Curtain Call feat.Taka/作詞:清水翔太 作曲:清水翔太

初めは清水翔太の歌と作業員の映像からスタート。

工事現場といえば暑い日も寒い日も外で地道に頑張る体力仕事です。

人通りの少ない夜に作業が行われることもあります。

汚れることも日常茶飯事です。

涼しいオフィスで働くサラリーマンや服屋、花屋などの人気の職業…。

表舞台とは決していえない仕事を望んでも誰しもが就くことは出来ません

またサラリーマンにも部署が多くあります。

夢にまで見た会社に入社後、希望の部署に配属されず何年間も固定されることもあります。

作業員姿は1例であり、誰にでも現状に満足できないことがあるでしょう。

そのずっと同じ日々を過ごすやるせなさを表現しているのです。

諦め

やりたくないことだって
誰かがやんなきゃなんだね
でも誰が決めてんだろう?って
tonight tonight tonight

出典: Curtain Call feat.Taka/作詞:清水翔太 作曲:清水翔太

ここで主人公がはっきりと不満を抱いている様子が分かります。

しかし印象深いのは叫んだりつぶやいたり、と想いをぶつけることはしていない点。

子どもの頃から持っていた夢と全然違う!

希望の部署やもっとマシな作業場所に早く配属されたい!

このような心の叫びは誰しも始めに持つことでしょう。

もうその段階は過ぎて社会の仕組みに諦めを感じているのです。

冒頭と同様に、再び最後の行で繰り返される言葉。

下がっていく音形にも何だかとぼとぼと歩いていくような雰囲気があります。

ちょっぴり大人の寂しさが垣間見える歌詞です。

紙切れで決まる役割

3行目の歌詞に込められている意味を考えてみましょう。

通常、働く場所や内容を決めるのは上の立場にある偉い人です。

希望の仕事を得るためにエントリーシートや履歴書を出します。

面接や厳しいオーディションを潜り抜けるのはごく一部

こうした面接も数分で終わります。

自分の全てを伝えられることは難しいでしょう。

不合格の場合、届くのは素性も知らない社長や会社名が書かれたお祈りメールです。

やっとの思いで入社し、希望の部署を提出しても紙切れ1枚で通知が来ます。

まるで言葉に操られるロボットのようにあっさり決められてしまう仕事。

誰が決めているかだけが問題なのではありません。

心の奥底では社会の冷淡でドライな現実に嫌気が差しているのでしょう。