僕の片想い
楽曲「メイビーネイビー」の中には、大きく2人の人物が登場します。
視点主である「僕」と、「君」です。
歌詞の中から、「僕」は君に想いを寄せていることがうかがえます。
しかし、2人は交際しているわけではなさそうです。
そもそも「君」は、「僕」のことをどう思っているのでしょうか?
2人の関係性に注目しながら、歌詞を見ていきましょう。
君への想いが募る
君に見つめられたい
BABY BABY
その瞳の奥で何を見ているの
おしえてくれよ
MAYBE NAVY
気まぐれに踊る僕ら
出典: メイビーネイビー/作詞:はっとり 作曲:はっとり
「目は口ほどにものをいう」ということわざがあります。
目には、その人の思っていることや本当の気持ちが表れるものなのでしょう。
「僕」は「君」の本当の気持ちがどこにあるかを知りたがっています。
この「踊る」という表現にもポイントが1つあります。
曲中では花が重要なアイテムです。
花が風に揺れるさまを「風に踊る花」と表現することがあります。
歌詞の中では、「僕」と「君」も一種の花にたとえられているのです。
ですからここでは、ダンスの意味合いで踊っているわけではありません。
予測不可能な方向から風が吹いてくるように、2人は人生の流れに翻弄されているのです。
あるいは、「僕」がそのように感じていることの暗示である可能性もあります。
不思議な言葉の意味は?
エク・ド・ティン・チャール・パンチ・チェ
・サト・アト・ノウ・ダス
出典: メイビーネイビー/作詞:はっとり 作曲:はっとり
続いて流れるように歌われるのは、不思議な響きの言葉です。
実はこれ、外国語で「1、2、3、4……」と数を表す言葉だそう。
なんでもヒンドゥー語なのだとか。
インドの言語を使った影響なのでしょうか。
サウンドに耳を澄ませると、微かにシタールの音も聞こえてきます。
この曲全体に漂う、不思議な雰囲気には理由があったのです。
流れる約束
「約束の来週ね、先週の研修で流れたやつの
穴埋め」ごめん、バイトが入ってた
「はいおっけーはいバイバイ」
ああもう死んだ嗚呼もう終わったな
出典: メイビーネイビー/作詞:はっとり 作曲:はっとり
会話形式の歌詞が出てきました。
ここでポイントとなるのは、発言主です。
会話には2種類あり、カギ括弧がついているものと、ついていないものがあります。
一体どちらが「君」の発言で、どちらが「僕」の言葉なのでしょうか。
おそらく、カギ括弧が「君」で、括弧なしが「僕」ではないかと思われます。
また、これはあくまで予想ですが、2人は電話で話をしているかもしれません。
対面での会話で、息もつかず「はい」を繰り返すのはあまりに冷淡だからです。
逆に電話で話していると、相手の顔が見えません。
それでも明るく会話するために、対面の会話以上に「はーい」をつけることがあります。
2人は会う約束をしていたようですが、「君」の都合で約束はなしになってしまいました。
「君」は代わりの日取りを決めようとするのですが、今度は「僕」の都合が悪い。
予定の調整が難しいと分かると、「君」はすぐに会話を終わらせてしまいます。
電話を切ったあとでしょうか。
「僕」は「君」の反応を見て、とても悲観的な考えにとらわれています。
「君」にとって「僕」は、そこまで会いたい相手ではなかったのかもしれません。
どうしても会いたいならば、2人の都合がつく日をもっと真剣に探すはずです。
とはいえ予定の調整にも、気力と時間を使います。
会う当日になれば、待ち合わせ場所まで出向いていく気力と時間も必要です。
「君」にとって、「僕」は気力と時間をかけるほど大事な相手ではないのでしょうか。
そして、「僕」もそれをなんとなく感じ取っているようです。
「君」との約束は流れてしまった上に、返事もさして残念そうではありませんでした。
「君」の反応から相手の思いを想像し、悲観的になっているのです。
君に花を
最果ての地で祈る、水をくれと
君に似合う花を買って帰る
出典: メイビーネイビー/作詞:はっとり 作曲:はっとり
水は、生き物にとってなくてはならないものです。
植物は水がなければ死んでしまいます。
水は物質であると同時に、なくてはならない気力やエネルギーも暗示しているかもしれません。
落胆した「僕」には、自分をポジティブに保つためのエネルギーが足りないのでしょう。
誰かが、何かが、自分を補ってくれることを願っているかのようです。
そうして「僕」は、帰宅の前に花屋に寄ります。
「君」に会うわけではないけれど、「君」をイメージできるような花を購入したのです。
ここでは、具体的な花の名前は登場しません。
しかし2番まで歌詞を見ていくと、「アイリス」という具体的な名前が登場します。
歌詞に出てくる花の名前がこれ1つだけです。
そこで、ここで買った花もアイリスだと思われます。