陽炎の届かない世界へ

血にまみれた戦場での終わらない戦。

その中で兼続は、常にを目指していました。

終わらない戦

幾つも死線を越えて
何度でも立ち上がって

出典: 蜉蝣/作詞:町屋 作曲:町屋

兼続が生まれてから、いくつもの戦いがありました。

中には、天下分け目の戦いと呼ばれる関ヶ原の合戦もあります。

一度の合戦の中で何度も死にかけたことでしょう。

一人斬れば終わりではなく、相手が降伏するまで斬り合いが続くのです。

例え傷つけられても剣を支えに身を起こし、辺りが静まるまで必死で剣を振るいました。

目指す場所は同じ

萌ゆる陽炎の様な土の朱
屍の上に立って
矛先を天に掲げ今
義を重ね傾(かぶ)け

出典: 蜉蝣/作詞:町屋 作曲:町屋

斬られた者から流れた血は土に吸われ、湿度や日射によって温度が上がれば陽炎となって立ち昇ります。

その色は赤。

赤い陽炎はある程度の高さまでしか届きません。

兼続が刀の切っ先を向けた空の高さに届くことはないのです。

つまり、人々が血を見ずに済む平和な世の中を目指している、ということを表現しているのではないでしょうか。

「義」は自分をなげうってでも誰かを守ることを指します。

実は関ヶ原の合戦で共闘している兼続と慶次。

同じ上杉軍として同じ高みを見ていたに違いありません。

傾奇者(かぶきもの)と呼ばれた慶次の奇策で窮地を切り抜けることもありました。

愚直ともいえる兼続の「義」と傾奇者の慶次の「義」。

ピタリと重ならないからこそ、ことがうまく進むのかもしれません。

戦の後

死線をくぐり抜けてきたからこその絆で結ばれている兼続と慶次。

しかし互いをライバルとして見ています。

ともに成長できる仲

花鳥風月に交わす杯で
語らう遠き日々の思い出
我等は激しく競い合いながら
互いの信義、貫こう共に

出典: 蜉蝣/作詞:町屋 作曲:町屋

季節の移ろいや美しい景色を眺めながらお酒を飲み交わした兼続と慶次。

関ヶ原の合戦で敗北を喫し、その後はともに戦から離れたのです。

二人はかつて「連歌会」という歌人のイベントに参加していました。

戦乱の世とはいえまだ平和だった当時のことや生い立ち、合戦の記憶、様々な話をしたのでしょう。

それぞれが理想として掲げている世の中は、全く同じものではありません。

しかしそれぞれが理想を叶えるためにあがいている姿は同じはずです。

どちらが先にゴールに辿り着くか、どちらが多くの人を救えるか。

戦うのではなく「競う」ことで切磋琢磨したようです。

良き友であり、良きライバルでもあったことがうかがえます。

一度きりの大輪の花