はなさないでと 甘える指に
男心は いつでも遠い
そうよ そうなの 昨日の夜も
すがりつきたい あの人に
夢を消された 噂の女

出典: 噂の女/作詞:山口洋子 作曲:猪又公章

こちらを向くことのない男性を想いながら。

噂の女は何を夢見るのでしょうか。

掴めぬ心

主人公が愛した男性はどんな人なのでしょうか。

こちらを見ることがない、冷たい男性。

若しくは、最初からきちんとこちらを向いていない男性。

どちらにしても、彼女を大切に扱う人ではなさそうです。

たぶん彼女は最初からそうとわかりながら男性を愛しました。

そして、どんなに時間を重ねたところでどうにもならないとわかっていました。

甘えた指を振りほどかれるうちに、彼女は甘えることすらためらうようになっています。

「行かないで。」

「離れないで。」

そんな言葉を言えるのは、可能性があるときだけです。

何を言おうと届かぬ男性の心に彼女の心は崩れていきます。

夢とは

【噂の女/内山田洋とクールファイブ】歌詞を考察!誰にも理解されない…やりきれない女心が染みるブルースの画像

人間は夢をみることができる動物です。

同時に未来をある程度予見する、予測することができます。

夢をみることができるからこそ。

つらいことも悲しいことも、乗り越えられるのだといえます。

夢をみることを絶たれてしまうと、そこには絶望しかありません。

毎日、ただ食べて寝て、起きての繰り返し。

生きることの基本はそういうことです。

主人公の彼女は、男性を愛し、諦めながらも夢を持っていました。

二人で暮らす夢。

幸せをつかむ夢。

その夢の内容まではうかがい知れません。

しかし、彼女なりに「幸せ」を思い描いていました。

愛した男性によって夢を絶たれた主人公

愛と夢を同時に失った彼女には何もありません。

夢は諦めるよりも、消されてしまう方がずっとつらいものです

諦めること

【噂の女/内山田洋とクールファイブ】歌詞を考察!誰にも理解されない…やりきれない女心が染みるブルースの画像

街の噂に 追われて泣けば
あせてみえます くちびるさえも
つらい つらいは つめたい青春を
怨むことさえあきらめた
弱い私は 噂の女

出典: 噂の女/作詞:山口洋子 作曲:猪又公章

愛する人を失った主人公。

彼女はどんな風に、自分の心に向き合っていくのでしょうか。

はみだして

街では主人公の噂があちこちでささやかれています。

悲しい恋しかできぬ彼女を取り巻くつらい噂。

なぐさめや、優しささえも彼女にはつらさを誘うだけです。

突き刺さるような世間の噂から逃れるように逃げる主人公。

もし、彼女の心に火をともすことができる人がいるとすれば。

それは愛した男性をおいてほかなりません。

しかし、それは叶わぬこと

心を共有することのできない苦しみを抱えながらただ彼女は泣きます。

泣くことでしか今の気持ちをどうすることもできないのです。

いっそ怨めたら

全てを失ったとき。

悲しみのどん底にいるとき。

その根源となることを怨むことができたなら気持ちはラクです。

誰かのせいにして、全ての責任を相手に押し付けたなら、気分は少しは晴れるでしょう。

しかし、恋愛においてそれはなかなか難しいことです。

自分が愛した人を怨むのはまた別のパワーが必要です。

愛されなかったことを怨むというのはもっと難しく。

愛してくれない人を愛した自分に結局は返ってきてしまいます

怨むこともあきらめ、それを自分の人生と受け入れる。

それは簡単ではありません。

諦めるとは、自分の人生に区切りをつけることです。

主人公の彼女は、愛する人を諦め、そして、自分の人生を諦めようとしています。

何に負けたのか

自分のことを「弱い」と表現するとき。

人は何に対して負けを認めてそう感じるのでしょうか。

世間、そして自分自身。

主人公は、薄幸な身の上なりに幸せを思い描いていた女性です。

人を愛し、そして幸せを実感することもあったはずです。

愛した人を失ったとき、彼女は夢もそして自分自身も失いました

たとえ全てを無くしたとしても。

彼を怨み、世間を怨めば立ち上がることができたはずです。

そして、次の恋を探しに行くことができたはず。

彼女は、そんな風に器用には生きられない優しい女性です。

愛した人を怨むよりも、自分の負けを選びました。

悲しい恋に負けた弱い女。

そんな噂を体にまといながら、悲しみを一人で背負い込みました。

噂の女と呼ばれて