孤独な夜を愛するシンガーソングライター秋山黄色
1人の夜が楽しくて...
2018年、Spotify等のサブスプリクションサービスを席巻した秋山黄色。
かくいう筆者もWeb上で彼の楽曲にハマった1人です。
宇都宮・渋谷を拠点にライブ活動を行うという秋山黄色のルーツは『けいおん!』。
現役ニートでフリーター、趣味はゲーム・アニメ・音楽。
性格は引きこもりで暗くて時間を守れない...まさに非リア充の申し子です。
真っ当な仕事には付けないだろうと自ずと音楽の道を歩むことを決めた秋山黄色。
宅録での音楽制作から始まりアートワークまで全てを手掛ける多才ぶりには驚愕するばかりです。
そしてその選択は彼の才覚を見事に開花させることとなりました。
「出れんの!?サマソニ!?2018」でのパフォーマンス
各種SNSにアップされた『やさぐれカイドー』『猿上がりシティーポップ』。
宅録とは思えぬクオリティは耳の早いリスナーをたちまち虜にしてしまいました。
特に『やさぐれカイドー』はSpotifyの国内バイラルチャートで最高2位を記録!
2018年の「出れんの!?サマソニ!?」では見事出演を勝ち取り大衆の心もロックしたのです。
1stEP『Hello my shoes』をリリース
秋山黄色は2019年1月23日に初のEP『Hello my shoes』をリリースしています。
レコーディングにはZazen Boysの松下敦、井上陽水のツアーベーシスト・なかむらしょーこが参加。
より進化したロックサウンドを聴かせてくれました。
またイラストレーションも得意だという秋山黄色が手掛けたアートワークにも注目です。
上半身は街中を、下半身は雪道を歩む独特のイラストは彼の表現する二面性を表しています。
今回は『Hello my shoes』より幻想的なバラード『ドロシー』をピックアップ。
退廃的なMVの内容から秋山黄色の魅力を紐解いてゆこうと思います。
現実と幻想が入り乱れる『ドロシー』のMV
『ドロシー』のMVを手掛けるのは映像ディレクター大久保拓朗氏。
RADWIMPS、ALEXANDROS、欅坂46などのMVを制作している人物です。
そしてミステリアスなヒロインを演じるのは新進気鋭の女優越後はる香。
2017年にデビューしたばかりですが存在感溢れる眼差しが魅力的です。
ボタニカル柄の壁紙が艶やかな薄暗い室内。
俯き加減の主人公の女性のクローズアップからMVはスタートします。
しかし室内だったはずの舞台は突如として水中に転換してしまうのです。
幻想を表す水の中
MVの続きをご覧いただくと場面がカラオケボックスであることが分かります。
それでは水中の場面は何を意味するのでしょうか?
これは主人公が抱える妄想の世界です。
ご承知の通り私たち人類は水の中で呼吸をすることができません。
しかし『ドロシー』の主人公は現実の場面で常に苦悶の表情を浮かべています。
まるで息の出来ない水の中にいるように...。
一方妄想世界である水中では安堵の表情を浮かべる主人公。
煩わしさから解放された妄想世界で初めて主人公は本当の安らぎを得ることができるのです。
ある名曲との類似性
感情の動きを水に沈むことで表現する手法。
これは90年代のあるアーティストのMVとの類似性を想起することができます。
それはRadioheadの『No Surprise』です。
絶望の果てに死を選ぶこと。
その先には永遠の虚無しか待っていない。
だからクソみたいな人生も生きるしかないんだよ、ということを表現した名曲です。
秋山黄色は1996年生まれ。
彼が1997年発表の『No Surprise』を聴いた可能性は不明です。
だからこそ彼の可能性しかない才能の片鱗を垣間見たような気がします。