“私たちは銃の撃ち方を学んだ

時に一人で、時に一緒に

千年にもわたる長い戦いの

解放者になれると思っていた”

「解放者になれると思っていた」という歌詞から、実際は解放者になれなかったと感じていることがわかります。

彼は訓令兵時代、兵士であることに誇りと使命感を感じていました。

解放者になりたいという想いもこの使命感からきていると思います。

彼は人一倍辛い訓練をしていたのでしょう。

歌詞から自主的に銃の撃ち方を練習していたことも伺えます。

しかし実際の戦地へ赴いた結果、『誇りと使命』だけでは表せられない別の感情が出てきます。

その思いが彼を、解放者にはなれないと考えさせるようになったのです。

では、その別の感情とはなんだったのでしょうか。

苦しい

I got this painful ringing in my ear
From an IED last night
But no lead light humvee war machine, could save my sargeants life

出典: Unbroken/作詞:Jon Bon Jovi 作曲:Jon Bon Jovi

“昨夜のIEDのせいでひどい耳鳴りがした

どんな鉛張りのハンヴィーも上官の命を救うことはできなかっただろう”

戦闘シーンが生々しく綴られます。

IEDとは簡易手製爆弾のことです。

彼の間近で爆発したのだと思われます。

そして彼の上官が亡くなったこともわかります。

彼の心に深く傷が残ったことは言うまでもありません。

彼は訓練ではない、実際の戦争を経験したのです。

そしてそれは苦しみに満ちたものでした。

彼にとって戦争は『誇りや使命』だけでは表せられない大きな苦しみを伴ったものでした。

祖国への帰還

思い出せない、忘れられない

It's 18 months now, I've been stateside
With this medal on my chest
But there are things I can't remember
And there are things I won't forget

出典: Unbroken/作詞:Jon Bon Jovi 作曲:Jon Bon Jovi

“勲章を胸に祖国へ帰って、18か月が経った

しかし思い出せないことがある

そして忘れられないことがある”

ここからは、帰国したあとの彼の生活が綴られます。

戦争の苦しみは戦地にいる間だけではありませんでした。

彼は重いPTSDに悩まされ、生活が蝕まれていきます。

思い出せないし、忘れられない。

彼は記憶障害にも苦しみます。

蝕まれる生活

I lie awake at night with dreams of devils shouldn't see
I wanna scream, but I can't breathe
And Christ, I am sweating through these sheets

出典: Unbroken/作詞:Jon Bon Jovi 作曲:Jon Bon Jovi

“悪魔も見ないような悪夢のせいで

眠れずベットに横たわる

叫びたいけれど、息もできない

神よ、私のシーツは汗でぐちゃぐちゃだ”

そして睡眠障害にも悩まされます。

悪魔も見ないような悪夢がどれほどのものなのか想像もつきません。

おそらく自殺も何度も考えたと思います。

生きることより死ぬほうが楽だと思ったはずです。

しかし彼はこの後、とても勇気ある決断をすることになるのです。

それは神への願いという形で歌われます。

願いに込められた真意

God of mercy, God of light
Seek your children from this life
Here these words, this humble plea
For I have seen the suffering
And with this prayer I'm hoping
That we, can be unbroken

出典: Unbroken/作詞:Jon Bon Jovi 作曲:Jon Bon Jovi

“慈悲深い神よ、光の神よ

あなたの子どもたちをこの人生から救ってください

この言葉を、このささやかな願いをきいてください

私は苦しみを見てきたのです

そしてこの祈りの中で私は願っています

我々がこれからも不屈の魂を持てることを”

主人公は神へ祈ります。

戦地へ赴き苦しみを背負った神の子供たちに、救いの手を差し伸べてほしいと伝えるのです。

そして彼は「we can be unbroken」であることを願います。

Unbrokenとは、「壊れていない」「途切れない」という意味です。

ここではこの先も壊れないでいられること、つまり「我々がこれからも不屈の魂を持てること」と訳しました。

彼は戦地でとても苦しい思いをしました。

そして帰国後もPTSDで悩まされます。

それは『誇りと使命』だけでは言い表せない、悲しく辛い体験だったのでしょう。

しかし彼はただ絶望したわけではありません。

それでも苦痛に打ちひしがれない、負けない心を欲したのです。

彼の願いに込められた真意がよみとれました。

このような気持ちになるのに、どれだけの勇気がいることでしょうか。

なぜ同じ道を行く?

生き続ける