このフレーズは日本人が日々に抱える矛盾について歌っています。
決して天邪鬼ではないのに、つい人に気を使って逆のことをしてしまう。
これは協調性を強いられる人間社会を風刺しているのでしょう。
どうしても建前ばかりが先行して「自分」を大切にできない...
そのしがらみを具体的に歌う。
盛大な皮肉ともいえます。
近年はこの建前の呪縛を具体的に表現する歌はあまり見かけません。
しかしフジファブリックは過去の作品の歌詞でも似たような表現方法を取ってきました。
このストレートさがフジブリックの魅力の1つといえるでしょう。
冷めた感情と秀逸な言葉遊び
声もあげずに 見向きもせずに
とはいえ暑く なってもいない
半端悩みは 特にもならない
出典: 東京/作詞:山内総一郎 作曲:山内総一郎
建前の呪縛に真っ向から立ち向かえる人はそういません。
ただ冷めた目で見過ごすしかない。
この呪縛に限らず、何かに立ち向かうことは難しいことです。
そしてここで特徴的なフレーズが登場します。
歌詞3行目の「半端〜」というフレーズです。
「闇」とも「悩み」とも取れる微妙なニュアンス。
どちらの言葉でも意味は成立します。
どっち付かずな言葉をうまく活用した秀逸なフレーズです。
もう引き返せない
期限が切れて 感じるだろう
これでよかったのか 思うはずさ
行くしかないよ 確かめてみよ
他にはないよ
出典: 東京/作詞:山内総一郎 作曲:山内総一郎
ここで登場する「期限」という言葉。
これはおそらく青春の期限のことでしょう。
「これで〜」とあるように、大人になり過去を振り返ることは必ずあるはずです。
自分の青春の意味を見い出すためそして「行くしか〜」と東京に足を踏み出します。
ここで過去と未来が交錯するのです。
すぐに青春の場所に引き返せるという衝動。
これは大人になりながらも持っていた「若さの残り香」によるものでしょう。
ここは...
若さの都
青春の光だけは 色褪せる事なく
気づけば時間だけ いつの間にか過ぎてた
出典: 東京/作詞:山内総一郎 作曲:山内総一郎
再び戻ってきた青春の場「東京」。
そこは昔と何一つ変わっていませんでした。
行き交う人の何気ない会話や排気ガスの匂い。
恋人たちの出会いと別れすらもそのままだったのです。
あの頃は気づかなかった「青春」の素晴らしさ。
歌詞1行目にある通り大人になった自分からは輝いて見えたはずです。
そんな青春の雑踏の中に立ち尽くしているのでしょう。
輝く矛盾
出会って焦がして
傷ついて手を振って
踊り続けよ友よ
華やむ東京
出典: 東京/作詞:山内総一郎 作曲:山内総一郎
このフレーズに登場する矛盾は建前によるものではないでしょう。
全て「青春」によるものなのです。
なりふり構わず大きく手を振って道を行き青春を謳歌する。
若者冥利に尽きる日常なはずです。
そこに建前や同調圧力はありません。
ただ若さと時間だけが輝いているのです。
それは一瞬
袖触れ合うのも
吹き付ける風にも 振り返る事なく
透き通る彼方に いつか輝くだろう
出典: 東京/作詞:山内総一郎 作曲:山内総一郎