思い出の中の「はみ出しそうな笑顔」ではなく、今の「君」の笑顔が見たいという歌詞。
きっと、見送る側の「君」は「僕」との別れが辛くて泣いていて、そんな「君」に、「笑って見せて」と言っているのです。
別れる前に、その笑顔を焼き付けておきたいという気持ちでもあるでしょう。
「子供の目で僕を困らせて」という歌詞は、いつもは「子供」のような悪ふざけで「僕」を困らせていたのでしょう。
つまり、ここで描かれているのは「僕」の、二人が一緒にいられる最後の日だからこそ、いつも通りに笑って過ごしたいという気持ちです。
いつも一緒だった二人
ふれあう度に嘘も言えず けんかばかりしてた
かたまりになって坂道をころげてく
追い求めた影も光も 消え去り今はただ
君の耳と鼻の形が愛しい
出典: 君が思い出になる前に/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
一緒にいればいるだけ、一緒に笑い、泣き、喧嘩もするものです。
それだけお互いに心を開いている関係だったのでしょう。
離れ離れになる今となっては一緒に追い求めた未来も消え去り、今までは当たり前に近くにあった、「君の耳と鼻の形」が「愛おしい」と言っているのです。
いつも通り過ごしたいのは別れが余計辛くなるからで、「僕」もやはり寂しい気持ちが強いのでしょう。
今まで一緒にいた時間は「この世に生きた意味を越えていた」
忘れないで 二人重ねた日々は
この世に生きた意味を越えていたことを
出典: 君が思い出になる前に/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
一生よりも大きな意味があるくらい今まで一緒にいられた時間は濃密な時間だったということを歌っています。
一生一緒にいるという夢は叶わなかったけど、それくらいの時間を今まで一緒に過ごしたんだからというこの歌詞は、別れ際に言われたらたまらない言葉ですね。
「君」と居られる「虹」のように消えてしまいそうなくらい尊くて儚い時間
君が思い出になる前に もう一度笑ってみせて
冷たい風に吹かれながら 虹のように今日は逃げないで
出典: 君が思い出になる前に/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
「冷たい風」だけが現実に戻してくれるような、夢のような時間が過ぎていきます。
「君」といられる最後の時間は「虹」のように、綺麗で、儚い、「僕」にとってとても尊い時間です。
こんなに心を通いあわせていて、一緒にいられただけでも「生きた意味を越え」るくらいの二人が、別れることなんてないのにと思ってしまいますが、出会いも必然なら別れも必然なのでしょう。
「君」は「僕」の最後のお願いに応えて笑うことができたのでしょうか。
おわりに
「君が思い出になる前に」は1993年のシングルで、蛇足ですが筆者が生まれた年にリリースされた曲です。
しかし、それだけ前に書かれたにも関わらず、その歌詞は今見ても色あせることなく、別れのシーンを美しく、切なく描いたものでした。
そして、別れの悲しみよりも、「生きた意味を越えていた」という歌詞からわかるように、一緒にいられた時間の尊さを強調しているところがこの曲の良さだと思います。
人生の選択で大切な人と離れ離れになってしまうという人もこの曲を聴いてみてはいかがでしょうか。
同じ別れでも、別れる悲しみよりも、一緒に入られた大切な時間を思い出して、心が愛しさでいっぱいになる、そんな別れになるはずです。
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