君も僕も古ぼけた言葉と
埃被った思い出にまみれ

出典: A STORY/作詞:HIDE 作曲:HIDE

主人公の“僕”がタイムリープして到着した場所は、“古”の地。

そこで使われている“言葉”は、主人公にとって聴き慣れないものだったのでしょう。

“古ぼけた”という言葉から、如何に古い年代へタイムリープしたかを想像できます。

一切“言葉”が分からない状況で出会った原始人“君”。

2人が互いに興味を持ったきっかけは、楽器だったのではないでしょうか。

ギタードラムの音色が印象的なイントロを踏まえた時。

主人公がギターを、原始人が太鼓を手にしていたのではないかと考えられます。

使う言語が違えど、音楽を愛する心は同じです。

ギターと太鼓のセッションが心の交流のきっかけになり、たくさんの“思い出”を作ったのでしょう。

“古”の地に住む人々と主人公が戯れる光景を2行目から感じ取れます。

同時に、土地の様相も。

“埃”は、人体に悪影響を及ぼす因子の1つです。

砂ぼこりが舞い、草木が生えない大地。地面を照り付ける灼熱の太陽。

住みづらい環境での原始人の営みを表現しているのではないでしょうか。

辛い日々を送っているところへ、突如として現れた主人公。

その手指から生まれる美しいギターの音色は、原始人の癒しとなったのかもしれません。

生きることへの執着

ガラクタになって
前も後も何も無い

出典: A STORY/作詞:HIDE 作曲:HIDE

信頼関係を築いた主人公と原始人。

知恵を出し合い、過酷な状況を一変させようとします。

それを嘲笑うかのように、猛威を振るう大自然。

人間は、どれだけ生きることに固執していても、大自然に太刀打ちできません。

災害に巻き込まれた際には、一瞬にして命を失います。

命を失った人間は、“ガラクタ”と一緒。

命があるからこそ、人間は生を尊び、精一杯生きようとします。

そして、他者を愛し、自身のDNAを残そうとする。

この生への執着や愛情を“ガラクタ”は持っていません。

自分だけの新たな歴史を紡ぐことが不可能です。

切ない人間のさだめを2行目の歌詞が強調しています。

命は唯一無二

生き長らえた人々は、死者を粛々と弔います。

そのような中、後回しにしてきたこと、やっておけば良かったことが脳裏に浮かぶのではないでしょうか

あの時なぜ耳を傾けなかったのだろう。どうして素直に気持ちを伝えられなかったのだろう。

大切な人を失った時、後悔の念は次から次へとこみ上げてきます。

そして、共に一喜一憂する時間がどれほど貴重であるかを気づかされるのです。

人間の命は、儚く脆い。

ゆえに、生きるという行為は、実にシンプルながらも、当たり前のことではありません。

命が蔑ろにされている世相を憂うかのように、サビが綴られています。

死しても尚

(Holy fallin')
肌に刺さる風は砂を運んでゆく

出典: A STORY/作詞:HIDE 作曲:HIDE

人間は、あまりにも辛い体験をした場合、無感情になってしまいます。

突然に命が奪われたなんて嘘よ。あの人は、どこかで生き延びているはず。

現状を受け入れられず、その反動で感情を失ってしまうのです。

心の中には、潤いがなくなり、砂漠のような状態に。

しかし、その“砂”は少しずつ減っていくのでしょう。

それは、死者の力なのかもしれません。

天へと召された死者が神聖なモノとなったことを“Holy”から推測できます。

とめどなく涙がこぼれ落ちていく時には、濡れた“肌”を“風”で慰め。

猛暑の日は、爽やかな“風”を運ぶ。

死しても尚、生きとし生ける者を愛する様子が感じ取れます。

主人公の助言

(Holy fallin')
目覚めれば君も僕も
ただの塊になる

出典: A STORY/作詞:HIDE 作曲:HIDE

一度、永眠した人間が現世で再び目覚めることはありません。

次に目覚めた時には、黄泉の国に居ます。

と言っても、魂だけ。

現世にある身体そのものは、全く動かない“塊”。

生きている間は、死後の世界など想像しないでしょう。

そのため、「今を楽しめればそれで良い」という考えに流されがちです。

主人公の“僕”は、このことを原始人“君”に助言するためにタイムリープしたのかもしれません。

原始時代、輪廻転生の思想が定着し、人々は何度も生まれ変われると信じていました。

ゆえに、原始人は、主人公の言葉に落胆したのではないでしょうか。

その姿を落ち込むという意味の英語“fallin'”が暗に示しているようです。

時計に導かれて

主人公と原始人に寄り添う時計