バスや電車の乗り物に乗っている時、大人数が同じ速度で同じ場所へと向かって進みます。
そこに乗っている人たちは一人ひとり違う人間です。
少し視点を変えて、それを地球規模の大きなスケールで見ればどうでしょうか。
一様に動く集団は、遠目からだと一つの塊とみなすことができます。
主人公の気付き。
それは、同じバスに乗っている彼女と主人公は地球からみれば同じ存在であるということです。
バスが進む事によって起こる引力は、地球の重力が作用して発生しています。
主人公と彼女は何一つ言葉を交わしていません。ただ同じ場所にいるだけの他人同士です。
ですが今、二人はバスを介して一つの存在となり、同じ引力を共有しています。
彼女と一つになっている。その状態に主人公は大きな喜びと希望を見いだします。
一つになって同じ体験を共感し合えているならば、二人の心は繋がっているも同然。
そう主人公は考えました。
後ろに座っている自分の存在を彼女はまだ知りません。
それでも、心を通わせたなら恋は必ず進展するはず。
そんな予感を胸に、主人公は心を弾ませるのです。
ときめく予感
君を感じる
窓が曇るほど
乗客は多く
君の顔が陰で見えなくなる
喋るその声に
耳を傾けて
僕は胸の奥をときめかせた
出典: 重力シンパシー/作詞:秋元康 作曲:原田ナオ
バスにはたくさんの乗客がひしめきあっています。
視界を塞がれて、彼女の姿が隠れてしまいました。
それでも主人公は楽しげに話す声に聞き入って、彼女の存在をじっくりと噛みしめます。
姿が見えずとも声だけで主人公は幸せになれるのですね。
バスが急に
スピード 上げた瞬間
みんな一緒に
仰(の)け反(ぞ)った
出典: 重力シンパシー/作詞:秋元康 作曲:原田ナオ
バスが速度を上げるのにつられ、乗客がまた同じ力を受けて揺れ動きます。
そうして主人公は再び彼女との繋がりを実感するのです。
分かち合う引力
愛は重力フレンズ
そこにいるそれだけで
2人は そう
地球を共有する
愛は重力フレンズ
存在 認知されてなくても
そのベクトル
進めばいい
出典: 重力シンパシー/作詞:秋元康 作曲:原田ナオ
愛を深めあう恋人達。
手を繋ぎ、心を一つにし、その関係はまさに一心同体といえるでしょう。
一つの物体には一つの重力がかかります。
二人の人間がいればそれぞれ受ける重力は異なりますが、愛を深めた恋人達は一心同体。
二人にかかる重力は一つです。
逆を言えば、同じ重力を分かち合うことは愛し合うことと同義といえます。
同じバスに乗って同じ力を受けている、彼女と自分は今愛し合っているといえるのではないか!
主人公の頭の中にはそんな理論が思い浮かんでいるのです。
たとえ彼女が主人公のことに気付いてすらいなかったとしても。
進み続けるバスの中で二人の心は確かに繋がっている、主人公はそんな風に考えを膨らませるのです。
膨らむ希望
ときめく心
君に重力シンパシー
何も話せなくても
確かに 今
僕らはひとつになる
君に重力シンパシー
いつか 同じ重さで
愛について
想うだろう
出典: 重力シンパシー/作詞:秋元康 作曲:原田ナオ
地球から同じ力を受けながら、主人公たちを乗せたバスは進みます。
言葉を交わしていなくても、ひとつの物質として彼らは地球から同じ力を受けているのです。
重力を分かち合って、知らない間に心を重ね合っている。
バスに揺られている時間に、主人公はそんな幸せを見出します。
心重ねて
相手への共感。
それは恋のきっかけとなり得るものです。
人は自分に近いものを感じた相手に親近感を覚えます。
そうすることで心理的な距離が近くなり、相手への好感を感じやすくなるのです。
そこから恋が発展していくことも少なくはありません。
そんな共感を、歌は地球規模の大きなスケールにまで拡大しています。
個々の心の作用としても大きな効果を発揮するのです。
地球規模の引力がもたらす効果はすさまじいものではないでしょうか。
それこそ容易く人の心を掴んでしまえるでしょう。
引力を共有している間、彼らは一つの存在として心を重ね合っています。
そうして、彼女の心に主人公の存在が刻みつけられていくのです。
そんな時間を重ねたことで、彼女は次第に主人公へと惹かれていきます。
心を重ね合わせた二人はいつかきっと両思いになれるのでしょう。
そんな空想と恋心を膨らませながら、主人公はバスに揺られ、君を見つめ続けるのです。