郷愁を誘う「Penny Lane」
ポールの回想
人は誰しもが何かしらの郷愁を胸に生活を送っているものです。
ビッグ・スターのポール・マッカートニーもまた幼少の頃の想い出を歌に託しました。
1967年2月、「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」と両A面で発売された曲「Penny Lane」。
「ストロベリー」がジョンの想い出であり、「Penny Lane」がポールの回想です。
作詞作曲はいつも通り「Lennon=McCartney」というクレジットですが実際はポールによるもの。
歌詞に歌われるいくつかのポイントは今もリヴァプールのペニー通りに名残を遺しています。
ビートルズ縁の地として有名になりましたが実際は何の変哲もない小さな通りです。
それでも郷愁をかきたてられる場所というのは人それぞれ。
ポールにとってこの地が想い出の場所であることは間違いないことです。
発表以来、ビートルズのファンにとっても馴染みの観光名所になります。
ペニー通りの標識にはビートルズのファンの落書きがいっぱいになったとか。
著名なホラー作家のクライヴ・バーカーはこの地の出身です。
しかし標識が落書きだらけだったので自分が住んでいる町の名前を知らずにいたという逸話があります。
「Penny Lane」はポールの曲ですが実際にこの地の近くに住んでいたのはジョンです。
それでもポールやジョージもこの地に想い出を残しています。
「Penny Lane」の歌詞はペニー通りの何気ない風景を切り取ったもの。
特別に大きなドラマは起こりません。
その点が何の変哲もない小さな通りであるペニー通りの姿を如実に伝えてくれるのです。
床屋さんはまだあります
立ち止まって挨拶する習慣
Penny lane there is a barber showing photographs
Of every head he's had the pleasure to know.
And all the people that come and go stop and say hello.
出典: Penny Lane/作詞:Lennon=McCartney 作曲:Lennon=McCartney
「ペニーレインにある床屋は写真を飾っている
彼が散髪した人たちの髪型の写真で見ていて楽しい
色んな人々が行き来する
立ち止まって挨拶をするんだ」
歌詞に現れるこの床屋はオーナーこそ違いますが今も健在です。
ビートルズの4人の写真も飾られています。
実際にジョン、ポール、ジョージは幼少の頃、この床屋で散髪していたそうです。
当時の床屋の名前は「Bioletti's」。
4人は有名になった後もこの床屋に訪れています。
よほどのお気に入りなのでしょう。
床屋や美容院などは一度気に入ったら中々お店を変えたりしません。
これは日本人だけの習慣ではなくイギリスでも同じようなのかもしれないです。
立ち止まって挨拶をする習慣が今も残っているかは分かりません。
挨拶の際に立ち止まるというのは日本でもいつの間にかなくなった風景。
イギリス・リヴァプールには残っていて欲しい習慣です。
銀行は外科に変わっています
レインコートの文化
On the corner is a banker with a motor car.
The little children laugh at him behind his back.
And the banker never wears a "Mac" in the pouring rain,
Very strange.
出典: Penny Lane/作詞:Lennon=McCartney 作曲:Lennon=McCartney
「自動車所有者の銀行員が角にいる
小さな子どもたちも彼のことを陰で笑っている
銀行員は土砂降りの雨の中でも決してレインコートを着ないからさ
とてもおかしい」
欧米では多少の雨では傘をささないといいます。
雨ですぐ傘を広げるのは日本人くらいだというのです。
そのかわりイギリスではレインコートの文化があります。
しかし銀行員は見事な出で立ちをレインコートで隠すのが嫌なのでしょうか?
土砂降りの雨の中でもレインコートを着ないのです。
ポールも幼少の頃、この銀行員を馬鹿にしていたのかもしれません。
角にある銀行は今や外科になっているそう。
「Penny Lane」の発表から50年も経つのですからリヴァプールの街も変わります。
サビの歌詞からうかがえるのどかさ
ビートルズとサイケデリック文化
Penny lane is in my ears and in my eyes.
There beneath the blue suburban skies.
I sit and mean while back.
出典: Penny Lane/作詞:Lennon=McCartney 作曲:Lennon=McCartney
「ペニーレインは僕の耳や瞳の中にある
都市郊外の青い空の下
その間、僕はくつろぐんだ」
「Penny Lane」は「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」との両A面。
ビーチ・ボーイスのブライアン・ウィルソンも嫉妬した「ストロベリー」の方が評価は段違いに高いです。
それでも「Penny Lane」のサビはトランペットが加わり中々目が醒めるような展開になります。
レコーディングはアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の直前です。
両A面のどちらの曲も幼少の頃の想い出に浸るもの。
コンセプト自体は「サージェント・ペパーズ」とも共通しています。
しかしアルバム「サージェント・ペパーズ」には収録されません。
アメリカ編集盤「マジカル・ミステリー・ツアー」に採録されます。
UKオリジナルではない「マジカル・ミステリー・ツアー」ですがアップル公認でリイシュー。
収録曲に名曲が多いですから当然の待遇。
ビートルズとサイケデリック・ムーブメントとの交錯があった時期です。