『まあ君にはきっと無理なんだ』
「だから君にはきっと無理なんだ」
いつのまにやら外野にいたんだ
そんなガヤばっかり飛ばしてきたんだ
皆必死に自分を守って救いの手を待ってるのさ
出典: https://www5.atwiki.jp/hmiku/pages/36818.html
誰かが何かを目指す時、それを否定する人たちがいることはよくわかります。
そしていつの間にか、自分が他人の夢を奪う存在になっていたのでしょう。
人々が抱くいつか救いの手があらわれるという希望の感覚すら否定してしまいます。
凄くシニカルな歌だと思います。
優しさに温度も感じられない
差し伸べた手に疑いしかない
穴が空いて愛は垂れてしまいになったんだ
倒れそうな僕を覗き込んだんだ
出典: https://www5.atwiki.jp/hmiku/pages/36818.html
人の優しさに温度を感じず、差し伸べられた手を疑う。
ここには病的な感覚があります。
愛というものが液体のようなものとして表現されていて、それは穴があくとこぼれてしまうもののようです。
そして自分の中から愛がなくなってしまったから、倒れそうなのに自分自身をのぞきこんでいます。
生きているということから言語ばかりが先行し、現実から乖離して自分をみつめるもうひとりの自分が登場します。
離人症的な心境が歌われているのかもしれません。
でもその病的な感じが一種のポップアートとして昇華されていると思います。
もし世界を支配する黒幕がいるとするなら、その黒幕が嫌がることは、人々が主体を持つことです。
でもこの歌はそういう主体としての自分が奪われた感覚が歌われていると筆者は想像します。
病と芸術
表現されたものと精神には密接な関係があります。
小説や音楽、映画や絵画などある特定の表現が一種の精神的状態をあらわしていて、そこに病理がみえることもあると思います。
しかしアーティストはそういう表現を通じて、自分が掴みとった世界観や、自分がみてきた経験などを広めていると言うことができると思います。
Eveという歌い手が感じてきたことが、彼の表現から感じられます。
この時代感覚はインターネットという箱に閉じ込められ行き場のない現代の若者の感覚でもあるのかもしれません。
離人症的な表現はこの時代だからこそ生まれているのかもしれませんね。
黒幕という言葉も世界を演劇として捉えているから生まれるもの。 この歌はだから"ドラマツルギー"なのでしょうね。
Eveのそのほかの作品
筆者が面白いと思ったそのほかのEveの曲を紹介します。
「ナンセンス文学」
「あの娘シークレット」
Eveの3作目の作品だそうです。最近の作品と比較するとストレートですね。
「デーモンダンストーキョー」
Eve自身の作詞ではありませんが、こちらは彼の歌が魅力的な作品です。