初セルフ・プロデュース・アルバムのアイコン・ナンバー

ターニングポイントになった曲"ツヨク想う"

"ツヨク想う"は、2012年に発売されたアルバムThe Biginning」に収録されています。

ライブツアーのピックアップながら、絢香にとって初めてのセルフ・プロデュース・アルバムで、人生の転機と言えるでしょう。

歌手は、特にポップスでは、自ら作品をプロデュースすることは、なかなかありません。

「出せば売れる」大御所でない限り、楽曲制作投資企画であり、会社から「好きにどうぞ」とは言ってもらえません。

絢香はデビュー以来、営業的に失敗がない、いわゆる"カタい"アーティストです。

それでも、セルフ・プロデュースを実現するまで6年かかりました。

生涯、制作に関わらない歌手も多い中、彼女の創作への傾斜は強かったのでしょう。

自分でプロデュースが出来たアルバムには、とりわけ強い思い入れがあるはずです。

この中でも、"ツヨク想う"は、歌詞の内容といい、歌いぶりといい、絢香の思いが読み取れます。

2013年8月17日:国立代々木体育館

再生への希望を歌に込めた

絢香はバセドウ病の治療も含め、2年間近い休止期間を取っています。

この間、全く音楽活動をしていなかったわけではありません。

紅白歌合戦に最後に出演した2010年大晦日から、数度録音スタジオに姿を見せ楽曲収録を行なっています。

おそらくはこの中に「ツヨク想う」のデモ作成もあったでしょう。

契約交渉で悩んでいる中、再出発する自分を応援する意味でこの曲が作られたと見られています。

【ツヨク想う/絢香】信じること、想うことの大切さを教えてくれる歌詞に注目!ライブ動画&コードあり♪の画像

名曲はどうして生まれたか

"ツヨク想う"誕生のいきさつ

絢香はデビュー曲"I believe"がいきなりミリオンセラーとなる幸運に恵まれました。

その後もドラマのテーマ曲担当やコブクロとのコラボなど、巷の話題を独占するトピックを連発しています。

順風満帆のキャリアのまさに頂点で、メジャーレーベル「ワーナー・パイオニア」を離脱する勇断をします。

自ら立ち上げた自主レーベルで活動し始めたのは、結婚を期に所属事務所を退社したことが一因かも知れません。

セルフ・プロデュースは必然でもあったのです。

"ツヨク想う"の歌詞が自らを励ます内容にも読めるのは、これらが背後にあるとも言えるでしょう。

果てしなく続く光の先へ
君と僕の未来が輝いてる
目を閉じて そのずっと先
想えば
限界はない
Your future leads you here

強く 想う
君を 願う
愛で 包むよ
今を 生きる

強く信じ続けたその先へ
誰も知らない景色が待っている
手を繋ぎ 新しい明日へと
歩き続ける
Your future leads you here

強く 想う
君を 願う
愛で 包むよ
今を 生きる

出典: ツヨク想う/作詞:絢香 作曲:絢香

アーティストとミュージシャンの違い

"音楽"でありながら"芸術"でもある

映画や小説や音楽で「感動した」ときに流れる涙は、いったい何で出来ているのでしょう?

もちろん、私達の心の中に感情があって、それがメディアに触れて揺さぶられたことに間違いありません。

言葉や、映像や、メロディや、歌声に、心の中の何かが共鳴しているのです。多くの場合、理屈は要りません。

絢香の音楽が、これほど多くの人々に支持されるのは、"いい歌手だから"だけでは言い表せない理由があります。

彼女はデビューの瞬間から「大家」でした。歌声も、風格を持っていました。

絢香の楽曲は音楽でありながら、芸術作品だったのです。

【ツヨク想う/絢香】信じること、想うことの大切さを教えてくれる歌詞に注目!ライブ動画&コードあり♪の画像

ポップスだって"心に響く"

芸術かそうではないか、など一般人にはどうでも良いことです。

ポップスは"ポピュラー"の略語ですが、一般人向けだから平易で分かりやすく、というのは間違いです。

ガムテープを使った文字表示が、「フォントとして素晴らしい」と評価されたことがありました。

感性に訴えるものであれば、どういうジャンルでも芸術と言えるでしょう。

また、「芸術作品なのでポップスに分類されるのは不本意」など、不遜もいいところでしょう。

表現者がそれを主張するべきではありません。

芸術かどうかは、受け取る側の感覚によるものだからです。

どう類型化するかは社会学者がすることで、エンターテインメントとは無縁の作業です。

絢香の音楽はポップスですが、多くの人の心に響く不思議なチカラを持っています。

絢香の得意パターン"メジャー循環"

ヒットの法則はクラシックでも常道だった

絢香が作曲を始めたのは高校の頃と伝えられています。使う楽器ライブでも弾くことがあるピアノだそうです。

クラシックの人気にはパターンがあって、それはポップスでも共通しています。

カノン進行」「メジャー循環」「ブルーノート」などは定番でしょう。

「カノン進行」には、バッハの「G線上のアリア」と「レット・イット・ビー」や岡本真夜の「TOMORROW」。

「メジャー循環」では、ビバルディ「四季」とレッド・ツェッペリン「天国への階段」。

「ブルーノート」は、ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」とチャック・ベリー「ジョニー・B・グッド」などです。

"ツヨク想う"は、サビの部分を少し転調していますが「メジャー循環」で、ヒットの法則に従っていると言えます。