黒い街から君の街へ届ける
前が見えなくなり立ち止まる
1人で歩いた汚れた細い道
ぶつからないように歩けばいいでしょ
僕は何処へ誰の元へ向かえばいいだろう
どうしようも無いからそこで立ち止まった
出典: 黒い街/作詞:樋口侑希 作曲:樋口侑希
煩慮している主人公の心情が投影されている歌詞です。
行く方向も分からなければ何を目標にしていけばいいかも分からない。
先ほどのサビでは強く前向きな想いが描かれていました。
ここはまさにそんな前向きな想いとの合間に生じる葛藤なのです。
歌詞の2行目では迷惑をかけずに生きていればいいという半ば諦念した様子が描かれています。
しかしここの歌詞でWONCADOLEの持つ野心や貪欲さが垣間見えます。
歌詞の4行目を見ると、主人公はそこに佇んではいるものの、後ろには下がっていません。
前に進めないからといって嫌になって後ろに引いてはいないのです。
逆に次のチャンスがくるまでここで待っているとすら感じさせられます。
そう思わせてくれるのはフロントマン樋口さんの強く吠えるような歌だからなのです。
藻掻いて進んだ先に
目に見えない物 触れられない物
手探りで探したんだ だけどなにも
あなたの街にきっとあるから
目を開けた
出典: 黒い街/作詞:樋口侑希 作曲:樋口侑希
前の歌詞で閉じていた目はここで開くことになります。
ここの歌詞の2行目からは藻掻いて進み続けてきた様子が分かります。
そして自分に無かったものを探そうとしますが、ここでは見つからなかった。
しかしそこで諦めているわけではないのです。
主人公の目線は君の世界へと変化していきます。
WONCADOLEを主人公とするならば君の世界とは私たち聴き手のことでしょう。
あなたに届けたい、会いに行きたいという強い想いを感じられます。
ファン側からバンド側へこのような感情が見られることはよくあります。
しかしながらバンド側から私たちにこのような想いをストレートに伝えているのは稀。
どこまでもついていきたくなるような彼らの心持ちが投影されています。
前へ進む覚悟と裏腹の葛藤
全速力で走って僕は 二度とない命を削った
間違い探しみたいな僕の日々数えました
数秒後に現れる症状 なんて気づく前に
目を奪ってしまうから、しまうから泣く 悲しい夜に
出典: 黒い街/作詞:樋口侑希 作曲:樋口侑希
ここで注目すべきは歌詞の2行目にあたるフレーズです。
『間違い探し』とは正解の物と比較して不適切な部分を見つける作業。
誰かと比較して自分の足りない部分を全て間違いだとしている様子が浮かび上がります。
誰かの人生を生きているかのような日々を振り返れば、数え切れないほど多かった。
そして今はそのような日々から抜け出すためにひたむきに走っているのです。
しかしながらずっと走り続けられる人なんて存在しません。
走っている時には感じなかった苦悩や煩悩の類が後から押し寄せてきます。
それに動じないなんてことは出来ず、ただひたすらに泣き崩れる。
それを乗り越えて明日をまた走りだすことが人間にとっての成長なのです。
歩き出すWONCADOLE
ようやく差した光
一寸先に見えた光は 二度とない景色を産んだ
このメチャクチャになった物全てがまた動き出した
数秒前の僕は凡人 なんて消えて
そこで目が光ってしまうから、しまうから叫ぶ
出典: 黒い街/作詞:樋口侑希 作曲:樋口侑希
これまで深い闇の中を必死に走り続けてきました。
時には立ち止まり、時には泣き崩れながらも出口を探してきたのです。
そしてその過程は無駄ではなく、ようやく目の前に光が差します。
ずっと求めていた唯一無二の世界が目の前に広がったのです。
彼らにとってはライブ中の光景やライブ終わりの空気感などでしょうか。
今まで耐え忍んで努力してきた時間が報われた瞬間です。
自分の中の歯車がもう一度動き始めるような感覚を抱く。
3行目の歌詞のような自分はもういないのです。
光らせた目で自分の想いを叫び続けます。
2013年に音楽の甲子園ともいわれる閃光ライオットでファイナリストとなった彼ら。
そこから活動休止など紆余曲折を経て今のメジャーデビューに至ります。
そんなバンド人生の葛藤が十分に込められた歌詞です。