単純な楽観主義にも与しない

小沢健二【失敗がいっぱい】歌詞の意味を徹底解釈!失敗が持っている力って?長いものに巻かれずいこう!の画像

晴れた冬の朝 僕たちの魂は透き通る
訪れる幸せ 桜並木をどこまでもゆく
そんな日がくるような気はしないけど

出典: 失敗がいっぱい/作詞:小沢健二 作曲:小沢健二

どこまでが本気なのか少し分かりにくくなる箇所です。

もう終盤ですから詩才が過剰にスパークしているのを感じられます。

多くの人が相互理解を可能にして街をゆく姿が見られる日が来るはずでしょう。

しかし私たちのうちの誰もがこうした幸せな散歩に参加する訳ではありません。

小沢健二が使う僕たちという言葉もこの記事で使われている私たちという主語も範囲は明確じゃないです。

私たちはこの主語でどこまでを指定しようとするのでしょうか。

誰しもがこの枠内に入らされることを由とする訳ではないでしょう。

へそ曲がりの人というのはやはり一定数いますし、そうした人が社会を多様に彩ります。

幸せの理想を桜並木に求める人も多くはないでしょう。

それでなくとも僕たちや私たちという主語はときに線引きをしてしまうものです。

小沢健二はここではあたかも幸せが自動的・受動的に簡単にもたらせられるような楽観主義に釘を差します。

悲観主義も敵でしょうが何もかも上手くいくという考え方にも同意しないのです。

小沢健二は希望への願いというものは捨てませんがリアリストとしての自分も放棄しません。

神秘的で魔法的な小沢健二

小沢健二【失敗がいっぱい】歌詞の意味を徹底解釈!失敗が持っている力って?長いものに巻かれずいこう!の画像

涙に滅ぼされちゃいけない
毎日には
笑えないを笑えるにする力があるから
踊れないを踊れるにするお酒もあるから
眠れないを眠らないにする月だって出るから

感じないを感じちゃうにする
音楽へようこそ!

出典: 失敗がいっぱい/作詞:小沢健二 作曲:小沢健二

クライマックスです。

大団円を迎えたようにこの「失敗がいっぱい」の名場面が集いました

ただし再び現れた言葉たちには新しい意義が付与されています。

不可能を可能にする力が日々にはあるのだという新しい啓示です。

できないという思い込みには必ず解決策が用意されているのが人間のすごいところ。

力、お酒、月、音楽。

こうしたものが不可能だという思い込みを解きほぐす処方箋として登場するのです。

笑えなかったり、踊れなかったり、眠れなかったり、感じらなかったり失敗がいっぱい。

しかしこの世界にはきちんと処方箋があるから安心しようという歌になります。

そのチャンスは日々の中にきちんとあるから意識を研ぎ澄ませようという考え方が披瀝されました。

反省や懺悔によって魂が救済されるというテーマと親しいです。

しかしこの「失敗がいっぱい」の歌詞救世主は小沢健二が「毎日」と呼ぶものでしょう。

日々、見過ごしてしまいがちな時間こそが人の失敗を救済するチャンスをくれます。

救うとか懺悔などの言葉で神が人を救済することを想像すると答えを間違えるでしょう。

小沢健二が神の代わりに登場させたものは「毎日」という私たちが呼吸して消費しているものです。

「毎日」とは時間の枠組みでしょう。

その時間の中に可能性をもたらせるのは自分自身の意識の持ちようではないでしょうか。

「毎日」という時間を何に使いどう過ごすのかを意識して組み直そうというのが「失敗がいっぱい」の正体。

最後に不可能を可能にするために登場するのは音楽です。

小沢健二はこの音楽が歓びの歌であるかのように「失敗がいっぱい」を開いて閉じました。

アルバム「So kakkoii 宇宙」はまだまだ続きます。

この先に奏でられる音楽で感じて欲しいという思いを込めたのです。

そういえば「失敗がいっぱい」という不思議なボサノバの伴奏は失敗という観念を無効にするものでした。

これは何かの間違いではないかと思わせるような不思議な音が混声で響いてきます。

この音楽の中では失敗でさえ楽音として成立するのです。

そうした点まで見てゆくと「失敗がいっぱい」は失敗を無効化する智慧は何かという問いへの答えでしょう。

人はおそらくこの先も失敗をしてしまいます。

転ばぬ先の杖を探すよりも転んだ後の真摯なアフターケアの仕方を考えたい。

この曲の歌詞の中で様々な答えが現れてきました。

失敗には人を前進させるヒントがたくさん詰まっているのです。

これこそ失敗が持つ力でしょう。

そしてどんなときも失敗から悲観主義を導いてはいけないと歌ってくれました。

ユーモラスな楽曲なのにどこまでも感動的で、これこそ小沢健二の神秘的で魔法的な手腕の賜物でしょう。

ここまで読んでいただいでありがとうございました。

OTOKAKEと小沢健二の軌跡

小沢健二【失敗がいっぱい】歌詞の意味を徹底解釈!失敗が持っている力って?長いものに巻かれずいこう!の画像

OTOKAKEには小沢健二の関連記事がたくさんあります。

中でも一時期は小沢健二のラストシングルと呼ばれた楽曲をご紹介しましょう。

「春にして君を想う」のシークレット・トラックにもなっていたシングルある光」。

「流動体について」で小沢健二が帰還するまで最後のシングルという異名があった曲です。

本人もファンも疲弊するような楽曲リリース・ラッシュの最後の光。

線路を降りるとはどういうことでしょうか。

歌詞を徹底解剖いたしました。

ぜひご覧ください。

小沢健二の「ある光」は一時期「小沢健二の最後のシングル」という異名がありました。そのためファンにとってはひときわ特別な曲であります。また小沢健二自身がこの曲を今もステージで演奏します。複雑な歌詞を紐解いて小沢健二の真意に迫ります。

無料で音楽聴き放題サービスに入会しよう!

今なら話題の音楽聴き放題サービスが無料で体験可能、ぜひ入会してみてね