心の扉に鍵をかけて…
怖くて痛くて惨めでも大事で 隠して鍵かけて 忘れたふりして
守ってきた ほんとのほんとが 二人分でずっと 呼び合っているのに
出典: ほんとのほんと/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
人は多くの場合、本音と建前をうまく使い分けて生きています。
本来なら、自分自身が気楽でいられるように本音だけで生きていたいものでしょう。
しかし人は生きていく過程で、それではうまくいかないと学んでいくのです。
本音だけでは相手を傷つける。本音だけでは相手との関係性を成立させるのが難しい。
大半の人はこのことをきちんと理解しています。
しかし本音にこそ、その人の価値観が大きく反映されているのも事実です。
建前はいくらでも取り繕うことができますが、本音は取り繕うことなどできません。
そうだからこそ、その人の本質が映し出されるのです。
本来の自分自身を知ってもらうためにも、誰かの本当の姿を知るためにも、本音は重要なものです。
この曲の主人公はそれをきちんと理解しています。だからこそ大切に守っているのでしょう。
でもそれを簡単には出さない。いや、出せない。
相手との関係性を保つために、本音をどう表現しようかと迷い続けているのです。
主人公は気がついていない様子ですが、実は相手も同じ状況に陥っているようです。
本音と建前の使い分けを知りすぎているが故に、どう本音を表現したら良いのかわからない…。
お互いにもどかしさを抱えている様子がくっきりと描かれています。
成長がもたらすもの
大人の生き方は雑…?
大人の顔をしてから 生き方がちょっと 雑になった
普通の事だし 普通が大変で 時間に大体運ばれた
出典: ほんとのほんと/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
大人になるにつれて、人の生き方は変わっていくものです。
子どもは思ったことを思ったときに、パッと口にします。
つまり本音>建前で生きているといえるでしょう。
反面、大人になると状況や相手を見極めてから言葉を発するようになります。
つまり本音<建前という生き方に変わっているのです。
年齢とともに関わる人の数もどんどん増えますから、この切り替えは非常に大切です。
ある意味、世の中でうまく生きていくための術ともいえるでしょう。
しかしこれはすなわち、自分自身に素直ではなくなったことを意味します。
自分の中に抱えている「ほんとのほんと」、つまり本音に対する態度が雑になったということでもあるのです。
雑とはいっても、本音と建前を使い分けることは大人にとって普通のことだと思う人は多いでしょう。
確かに多くの人が当然の如く、両者を上手に使い分けて生きていますね。
しかしこの楽曲中に登場する主人公は、その当たり前に違和感を覚えているのです。
当たり前に使い分けるべき本音と建前、その使い分けは簡単に見えて、実は難しいことなのだ。
だからこそ悩み、迷い、苦しいのだと、そう訴えかけています。
再び崩れる心と体のバランス
側にいる意味を考えて なかなか辿り着けなくて
体はとっくに 解っているのに
出典: ほんとのほんと/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
先ほど登場した歌詞と対になっている部分です。
先ほどは、心がわかっていながら行動には移すことができない、その葛藤が描かれていました。
こちらではその反対です。
体はわかっていていつでも動ける状態なのに、心の理解が追い付いていません。
この2回の歌詞で、ほんとのほんとを表現することの難しさや大変さが鮮明に描かれているのです。
無理に取り繕う必要なんてない
生まれた時くらいの裸の声で 動物のままで 育たない声で
鏡みたいに 同時に触って
出典: ほんとのほんと/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
1行目は様々な表現がなされていますが、すべて同じことを指しています。
それは「ほんとのほんと」、つまりその人の本音のことです。
飾らない素の状態であることを、様々な言葉で表現したのでしょう。
一度だけでも。一瞬だけでも。
今が終われば今までに戻って それでもいいよ 今の続きなら
守っていく ほんとのほんとが 一度でもちゃんと 抱き合えた
分けられない ほんとのほんとが 二人分でずっと
出典: ほんとのほんと/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央