1番の歌詞を簡単にまとめると、真夜中に秘密の話をしている2人がいて、互いに孤独感にさいなまれているという状況が前提として浮かんできます。
その上で、主人公の「僕」は今まで自分が持っていた優しさを欺いてでも相手を救いたいと考えているのです。
この歌詞に込められている感情は、とても純粋で、怖いくらいに深い恋愛感情なのは明らかと言えます。
そして、この1番が前を向くことを望む言葉で終わっていることから、先述のとおり主人公は相手との未来まで考えていたのでしょう。
この後2人はどうなったのでしょうか。それは2番の歌詞から考えることができます。
すべては過去のこと?2番の歌詞から見える主人公の姿
どこにも貴方はいない
寄り添っても充たされないのは 確かな傷があるから
今もきっと僕が望んでた 答えは此処にはないと知った
有り触れた意味を持つ 胡乱な夜の囁きに 身を委ね 眠りにつく
出典: Dolly/作詞:須田景凪 作曲:須田景凪
2番は1番よりも直喩的な表現が増えています。
前半の歌詞では、2人の距離がどんなに縮まっても満たされず、ただ寄り添うだけの行為に答えはないと主人公は悟ったことがうかがえるでしょう。
歌詞の中に見える物語は「僕」が眠ったことでいったん止まります。
ちなみに、次に登場するメロウとは、やわらかく美しいという意味や、熟しているという意味を持った言葉です。
これは主人公が相手に向ける愛しさのことでしょう。2人で過ごした楽しい時間という解釈もありかもしれません。
思い出したんだ 心では 飲み干せないくらいのメロウ
辛いこと 話してよ 傷跡になってしまう前に
重ね合っていた掌も 覚束ない
眩暈の様な やましさも抱きしめて 日々の底で惑っていたい
夜は等しくなった 違えたままの関係だ 而して愛しくなった その全てを覚えている
形も忘れてしまった 煤けた日々の心像だ 而して愛しくなった その全てを覚えている
出典: Dolly/作詞:須田景凪 作曲:須田景凪
続く「傷跡」や「覚束ない」という言葉から連想できるのは過去というワードです。
この歌詞の上から2番目の行は、2人の思い出が傷跡(過去)になりつつあるということを意味していると考えられます。
さらに覚束ないという言葉はもう相手の存在が目の前から消えかけているか、あるいはすでに消えてしまったという状況を思わせるものです。
忘れられない愛しさ
主人公は心の中にわだかまりはあるけれど、それらすべてを受け止めて2人の思い出の中にいたかったのでしょう。
しかし、下から2番目の行にある歌詞からはそれが叶わなかったことがうかがえます。
また、同じ意味は次に続いている歌詞にも込められているのでしょう。
この歌詞の下から2番目と1番下の行の最後でくりかえされている言葉です。
覚えているということは、目の前にないけれど記憶の中にはあるという意味になります。
つまり、自分の前にもうかつて愛し合ったはずの相手はいないのです。
思い出したんだ 言葉では表せないくらいの景象
酷い鼓動 諭してよ かしましくなってしまう前に
胸に飼っていた 優しさも欺きたいと思うほど
正しくはあれないよ それなのに前を向いてみたい
出典: Dolly/作詞:須田景凪 作曲:須田景凪
ここでサビに突入します。2番の歌詞を通すと、最後の一節にある前を向くことを望んだ言葉の意味が少し変わってくるのがわかります。
すなわち2人の未来が1人だけの未来となってしまったけど、それでも前を向いて行きたいという気持ちです。
もしかしたらこの歌の中に登場しているのは2人ではなく、実は主人公1人だけで、ずっと記憶を相手に自問自答していたのかもしれません。
真夜中に、かつて愛した人を思い浮かべながら自問自答を続ける姿を想像すると、歌全体にただようどこか物悲しい空気にも納得できる気がします。
MVを徹底解釈!プロポーズにも見える場面の意味とは
『Dolly』のMVには、さまざまな場面が登場します。
その中には、意味深なものもちらほら見られ、一体どういう背景があるのか気になるのではないでしょうか。
ここでは『Dolly』のMVについて徹底的に解釈を試みます。
「Dolly」のもうひとつの意味
アボガド6さんが手がけたMVの冒頭は、ピアノを弾いている女性らしきシルエットです。続いてMVには顔の見えない男女が登場します。
2人が描かれているのは、男性は手で作ったカメラのポーズ越しに女性を見たり、ベンチで並んで座ったりしている場面です。
この場面と前後して、どこかの街中をカメラのレンズ越しに見ているかのような絵が続きます。
曲名の『Dolly』の意味が三脚台という解釈はここから成立するのです。
また、よく見るとMV内で描かれている女性のてのひらは関節がどこか人形っぽさをうかがわせます。
曲名の『Dolly』は人形という意味も持ちますから、これはMVの女性自身を表してもいるのでしょう。