嫉妬と感謝を込めて

宇多田ヒカル【Making Love】歌詞考察!私と「あなた」は親友だけど…?意味深な歌詞に迫ろうの画像

ヒアタリヨシモヨリエキチカク
トナリノジュウニンモイイヒトネ
ヤサシイカレトノケイザイガク
ミカケニヨラズシッカリモノデ
ワタシトセイハンタイノアナタ
アラタメテイウノワテレマスネ
ワタシガハジメテホレタオンナ
イマカライウコトヲキイテ

根暗なマイ・ハートに一つ花が咲いた

出典: Making Love/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル

愛と皮肉を込めて親友に贈る言葉のプレゼント

自分にはないものを持っている友人に惹かれてしまうというのはよく分かる気がします。

だらしない人にはしっかり者の友だちが心配して寄ってきてくれるものです。

プラスとマイナスの引き合いにも似た何か。

人間同士の付き合いでもこうした自然現象に似た事柄が起こるようです。

一方でパートナーともに何もかも上手くいっている親友への嫉妬もうかがえます。

宇多田ヒカルはこの件に関してまとまった意見が根付く前に揺れる心を歌にしました

同性が惚れるような人柄を讃える言葉が挟まれます。

そして万感の想いを込めて素敵な言葉を贈るのです。

本来は地味な私の心に花を咲かせてくれてありがとうと歌います。

赤裸々で飾ることのない言葉で書き綴った「Making Love」です。

しかし、親友に直にプレゼントする文章はたまらなく詩的で素敵な言葉になりました。

揺れる心のままに

哀しいのは親友も同じ

宇多田ヒカル【Making Love】歌詞考察!私と「あなた」は親友だけど…?意味深な歌詞に迫ろうの画像

誰よりも幸せであってほしい
悲しみは似合わないよ君の目に
感じてないのにフリはしたくない
夜になってもまだまだ明るい

あなたに降りそそぐ光
遠い町でも平気だね
新しいお部屋で君はもう making love

出典: Making Love/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル

何でも話しができた貴重な親友。

人生のうちに何人出会えるか分からないような大切な人。

引っ越しによる喪失感を抱いているのは宇多田ヒカルだけでなく親友にしても同様なのかも。

宇多田ヒカルのパブリック・イメージは非常に明るいものです。

人見知りというものを知らない人というイメージでしょう。

しかしそんな彼女も誰でも友人にするという訳ではないでしょうし、まして親友に関してはもっと厳しい。

惹かれ合うものがあって初めて成立するのが親友です。

お互いに幸せを祈り合うのですが、一方で自分を置いてパートナーと旅立ったことに嫌味はいいたい

それは何でも打ち明けられる関係であるからこそいいたい一言です。

私を残して新居ですぐに愛を育んじゃうんだね。

そんな皮肉の一差し。

宇多田ヒカルの潜在意識の中の棘が少しだけ顔を出しました。

リスナーに向けてもこうした素顔を晒すのですから勇気あるアーティストです。

かっこよくするために格好を決める人ではないのでしょう。

一方でどんなに彼女がうらやんでみても親友の幸せは揺るぎません

揺れているのは宇多田ヒカル自身の心のうちだけなのです。

「Making Love」の豊かな余韻

今日に目を醒ますということ

宇多田ヒカル【Making Love】歌詞考察!私と「あなた」は親友だけど…?意味深な歌詞に迫ろうの画像

あなたに会えてなかったら
親友はいらないネ
探し続けた答えもう見つけてた

私を慈しむように
遠い過去の夏の日の
ピアノがまだ鳴ってるのに もう起きなきゃ

出典: Making Love/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル

親友はあなたしかいなかったということがいいたいのでしょう。

この事実に気付けた宇多田ヒカルはこの先の人生を楽しむには十分なほどに恵まれているでしょう。

実人生はもっと波乱万丈で色々な出来事が彼女を待っています。

ときは2006年ですから、彼女自身はその後の自分の人生を知ることができません。

悲喜こもごも様々なイベントに恵まれる人生がこの先の彼女を待っています。

超有名人ですから私生活に関しての報道がニュースとして世界中に知れ渡るのです。

しかし、本来アーティストは自分の人生を「売る」際には必ず自身の手で加工したいはず。

この曲「Making Love」は正にそうした加工を経た産物です。

どこでどう加工したか。

あるがままを書いて済ますのではなく芸術として昇華させる様々な詩的な表現

クライマックスに登場する最後のラインが特に素晴らしい余韻を感じさせます。

色々と刺々しい箇所もありましたが、最後は優しくリスナーのために短い詩を描きました。

追憶のピアノの音色が何を意味しているのかはリスナーの判断に任されます。

しかし、もう親友の引っ越しを嘆いている時間ではないことは本人も気づいたようです。

目を醒まして顔を洗い、水を飲んで今日もこれからも生きる決意をします。

親友が引っ越しただけで一編の歌を綴る彼女の感性の繊細さに改めて私たちも目を醒ますのです。

発表から十数年を経ても今なお鮮烈なポップ・ソング「Making Love」。

宇多田ヒカルの私小説的な内容ですが親友という誰にとっても普遍的な存在がテーマ。

私たちは彼女の感性に触れながら、一方でこれほど大切な人が自分にいるかなと確認するはずです。

そして見つけられた親友の存在に感謝するしかありません。

宇多田ヒカルは喪失感から描いた作品ですが、リスナーを悲しませたりはしない奇跡の歌です。

宇多田ヒカルの「Making Love」と追憶の2006年。

最後のラインの余韻をずっと味わっていたいです。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

OTOKAKEと宇多田ヒカルの軌跡

危ない罠って何だろう

宇多田ヒカル【Making Love】歌詞考察!私と「あなた」は親友だけど…?意味深な歌詞に迫ろうの画像

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甘いワナ~Paint It, Black

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