今必要なのは認められること

マドンナ【パパ・ドント・プリーチ】歌詞を和訳&解説!パパに何を話している?まだ若い彼女の悩みとはの画像

Papa don't preach I'm in trouble deep
Papa don't preach I've been losing sleep
But I made up my mind I'm keeping my baby mmm・・・
I'm gonna keep my baby mmm・・・

出典: パパ・ドント・プリーチ/作詞:Brian Elliot Madonna 作曲:Brian Elliot Madonna

有名なサビです。

メロディと言葉を覚えていらっしゃると思います。

「パパ、叱ったりしないで 私は底深いトラブルを抱えているの

パパ、叱ったりしないで 私は眠ることさえできないの

だけど 私は気持ちを固めたわ 私は赤ちゃんを手放さないって

私はどうやっても赤ちゃんを手放さないわ」

ポップスの歌詞「my baby」が私の赤ちゃんの意味である楽曲は少ないのではないでしょうか。

「パパ・ドント・プリーチ」も愛の歌ではあるのですが、単純な恋愛ソングとは別次元なのです。

「preach」を叱ると訳出しましたが「お説教」という意味でもあります。

赤ちゃんを抱えていて大事なときなのだから説教はやめてという気持ちを父親にぶつけるのです。

実際、赤ちゃんが生まれてしまったのならば説教などしても何の意味もないはずでしょう。

もちろん必要な家庭教育はしっかりやっている父親でした。

しかしその延長線上で未婚の若い母になってしまった娘に説教するのは意味がないこと。

未婚の若い母とはいえ、彼女にとって赤ちゃんを手放すことなど考えられないことです。

マドンナはこうしたきちんと問題に向き合っている少女を支持します。

父親の頑なな態度がむしろ娘の背中を押したのかもしれません。

彼女は少女から母親へと精神的に成長してゆくのです。

マドンナの「パパ・ドント・プリーチ」という言葉は世の中の無理解な父親全員に向けています。

彼女は旧い因習的な考えと闘う姿勢を示す女性として絶大な信頼を得るのです。

「パパ・ドント・プリーチ」は最初の一撃でした。

その後も社会問題を積極的に提起するVIPスターになります。

誠実なパートナーの存在

未婚の若い母に必要なものは

マドンナ【パパ・ドント・プリーチ】歌詞を和訳&解説!パパに何を話している?まだ若い彼女の悩みとはの画像

He says that he's going to marry me
We can raise a little family
Maybe we'll be all right
It's a sacrifice

出典: パパ・ドント・プリーチ/作詞:Brian Elliot Madonna 作曲:Brian Elliot Madonna

パートナーの意志がはっきりするラインです。

「私と結婚するって彼はいってくれる

ふたりで小さな家庭を設けることができる

私たちはきっと大丈夫

こうしたことは必要な犠牲なのよ」

パートナーも幼い過ちをしたのかもしれません。

若い女性のためにしなければならないことを怠ったのは彼です。

しかしマドンナはそのことで彼を詰ったりはしません。

むしろ主人公にとって頼れる人間としてパートナーを描きます。

この辺りが上述した「愛が動機であることを全肯定する」思想の現れなのかもしれません。

未婚の若い母に結婚を約束するパートナー。

すべての未婚の若い母が結婚を約束された訳ではありません。

シングル・マザーとして子どもを育てるケースも出てきます。

しかしいずれにしても共助・公助によってきちんと彼女たちと子どもたちが救われなければいけません。

旧い因習的な思想に隷従する方には理解できないかもしれない。

しかし成熟した社会の条件として未婚の母に優しいというのは必須のものなのです。

幸い将来を見据えられる愛が歌われています。

sacrifice」は直訳の犠牲という言葉を採用しましたが、意訳すると少しの辛抱というようなものです。

この若いカップルには経済的な余裕がないのでしょう。

生まれる子どもにとって100パーセントで良好な条件という訳ではないのです。

しかし家庭というものは小さなスケールでも成立します。

本人たちの意志は固いです。

しかし周囲の理解が中々得られないことに憤るのは主人公に自らを投影したマドンナ自身なのでしょう。

説教をすべて排斥した歌詞

周囲に向けて放つマドンナの一撃

マドンナ【パパ・ドント・プリーチ】歌詞を和訳&解説!パパに何を話している?まだ若い彼女の悩みとはの画像

But my friends keep telling me to give it up
Saying I'm too young I ought to live it up
What I need right now is some good advice please

出典: パパ・ドント・プリーチ/作詞:Brian Elliot Madonna 作曲:Brian Elliot Madonna

無理解だったのは父親だけではありません。

「それなのに私の友だちは諦めろといい続けるわ

私は若すぎるし 人生を楽しむべきだというの

私に今すぐ必要なものは本当に役に立つアドバイスなのよ、お願い」

友人は友人だからこそ主人公を心配します。

その心配自体は善意からのものです。

しかし主人公の境遇にはまるで役に立たない忠告ばかりでした。

若い少女が自分の子どもを育むことができるのか。

また、可能性のある少女が子どもにつきっきりで、豊かな暮らしができなくなることを心配します。

それでも主人公の女性は赤ちゃんを手放すなど考えられません。

マドンナはこうした境遇では周囲の理解が何よりも大事なのだからとこのシーンを挿入します。

彼女は世の父親たちだけではなく周囲の人々にも批判の矛先を向けるのです。

すべての市民の意識を変えたいという想いさえ持っていたのかもしれません。

とはいえマドンナは上から目線ではなく地道にドラマを紡ぐことでそのことを表現するのです。

「パパ・ドント・プリーチ」というくらいですから説教臭い要素は排斥します。

ドラマの中で分かって欲しいと願うのがマドンナというアーティストの矜持なのでしょう。

若いふたりに祝福を

新しい生命を迎い入れるために

マドンナ【パパ・ドント・プリーチ】歌詞を和訳&解説!パパに何を話している?まだ若い彼女の悩みとはの画像

Daddy, daddy if you could only see
Just how good he's been treating me
You'd give us your blessing right now
'Cause we are in love We are in love so please

出典: パパ・ドント・プリーチ/作詞:Brian Elliot Madonna 作曲:Brian Elliot Madonna

間にサビが含まれます。

リフレインですので訳出は割愛しました。

「パパ、パパ 彼が私を大切にしてくれてきたことを

あなたが分かってくれたならば

今すぐわたしたちふたりにあなたからの祝福をください

なぜって私たちは愛に包まれているの 本当に愛し合っているからね そうお願い」

クライマックスに向かっています。

理解ある優しいパートナーがいてくれるから父親として祝福して欲しい

そんな切実な想いが打ち明けられます。

マドンナは愛があるふたりのカップルを例に出しました。

繰り返しになりますが「愛が動機であることを全肯定する」彼女は当然にふたりに味方します。

全世界の未婚の若い母を祝福する歌を歌い上げるのです。

後は近しい人たちの理解だけが必要だと歌います。

生まれてくる赤ちゃんはこうした事情を知らずにこの世に誕生するでしょう。

そうした赤ちゃんたちに周りの人たちが笑顔を向けなかったならば不幸は因果として再生産されます。

そんな事態だけはどうしてでも避けなくてはいけません。

社会を生きる先輩として私たちは誕生した新しい生命には絶えず笑顔を向けなくてはいけないのです。

そしてそれが若い母の近親者であればなおさらのこと。

マドンナはきちんと愛を描いてその結果の子どもの誕生を祝福してくださいとリスナーに願います。

「パパ・ドント・プリーチ」とポップ・スターの使命