「ホリデイ」の大切さを歌う
1983年7月27日発表、マドンナの記念すべきファースト・アルバム「バーニング・アップ」。
このアルバムに収録されてシングル・カットされた「ホリデイ」の歌詞について解説します。
マドンナがまだ無名だった頃に録音制作されたこのアルバム。
たくさんの最新機材の使用が話題を呼び、全米ビルボード・アルバム・チャートで最高8位。
下積み時代を経験して大変な苦労人だったマドンナが音楽の世界でようやく花開きます。
新しい機材で練り上げられたダンス・ポップがリスナーに支持されました。
ポップ界の新しい女王の誕生の瞬間です。
「ホリデイ」はアルバムから3枚目のシングル曲としてリリースされます。
タイトルそのままに休日について歌った楽曲です
ありそうでなかった話題をテーマにしているのですが、深く読み込むと様々な意味が垣間見えます。
この曲「ホリデイ」の歌詞を和訳しながら休日というものについて考えてみましょう。
休むことはとても大事だという働き方改革を先取りしたような歌詞が見事です。
それでは実際の歌詞を見ていきましょう。
休日を我らに
歌い出しの前のブリッジ部になります。
本格的な歌はこの先です。
それでもこのラインに「ホリデイ」の内容が凝縮しているでしょう。
休日は祝杯をあげて
Holiday
Celebrate
Holiday
Celebrate
出典: ホリデイ/作詞:Curtis Hudson Lisa Stevens 作曲:Curtis Hudson Lisa Stevens
「休日をお祝いしよう
休日だから祝杯をあげよう」
歌い出しというよりは構造的にブリッジ部になります。
この歌「ホリデイ」の内容をコンパクトにまとめようとするとこれだけで済んでしまうのです。
「ホリデイ」も深く読んでゆくと奥底から意味が湧いてきます。
それでも非常にシンプルに捉えるとこのラインで「ホリデイ」の内容はカバーできてしまうのです。
「休日だから今日はお祝いしよう」
いつも働きすぎな私たちはたまの休日によって生き返ります。
カレンダー通りに土日・祝日が休める人を念頭に描いた歌詞になっているのです。
実際には接客業・サービス業などで不定休の方もいらっしゃいます。
そうした人たちにとってもたまの休日がもたらしてくれる恩恵は変わりません。
資本主義の初期の時代は休日・祝日が少ない酷い労働環境でした。
こうした悪条件が改善されたのは労働運動の高まりや社会主義国の政策を真似たからです。
抵抗する勢力がいなければ資本家は労働者からありったけの労働を搾り取ります。
しかし労働者の自意識の芽生えや人権意識の高まりの中で資本家の勝手が許されなくなりました。
そうした歴史を顧みると休日はすべて祝うに値するものなのです。
労働者を祝福する歌
しかしそれは微妙な味付けに過ぎません。
この楽曲「ホリデイ」は全世界の労働者を祝福するようなかなり真面目な歌詞になっています。
どうしてこのような曲をマドンナが歌ったのでしょうか。
彼女はデビュー当時から「闘士」の風貌がありました。
既成の概念を覆して新しい悦びを表現するアーティスト。
それがマドンナの正体であり、基礎になっている軸のようなものなのです。
彼女は音楽界にデビューしてから様々な社会問題について果敢に表現しました。
例えば「マテリアル・ガール」では物欲中心主義を皮相なものとして描きます。
「パパ・ドント・プリーチ」では未婚の母という社会問題に果敢に切り込みました。
その後もかなり先進的な立場から社会問題について語っています。
アメリカ合衆国のスターは自身の社会的地位に相応しい責任の取り方として政治的発言さえ厭わないです。
「ホリデイ」録音時のマドンナはまだまだ無名の新人でした。
それでも自分の意見を力強く押し出してゆきます。
今の日本社会では炎上必至かもしれません。
社会的な問題について自由に発言できない風潮こそ先進国としては異常なはずです。
「ホリデイ」のような労働者のために休息をという歌詞を歌える社会こそ先進国として当然なのでしょう。
祝日こそ最高の日
コーラス部分になります。
歌詞を和訳しながら解説いたしましょう。
休息は私たちの権利
If we took a holiday
Took some time to celebrate
出典: ホリデイ/作詞:Curtis Hudson Lisa Stevens 作曲:Curtis Hudson Lisa Stevens
「私たちが休日を取ったら
祭典のときにしようね」
私たちは本当に休日を本来の目的で祝福できているでしょうか。
「celebrate」には祝杯をあげて悦ぶくらいの楽しいお祝いの意味があります。
休日とは日頃の労働からの解放を祝う必要があるのでしょう。
あまりに普通のことですので私たちは今さら休日を祝ったりはしません。
しかし初期の資本主義は本当に苛烈なものでした。
労働者は休みもなく、睡眠さえ取れずに工場で労働を強いられていたのです。
労働者自身が社会的な運動を起こしてゆく中で休日を獲得しました。
休日というものはそれほど貴重なものであったのです。
そうした原点に帰って「ホリデイ」を祝いましょう。
それが楽曲「ホリデイ」の本意です。
せっかくの休日だから大切に祝いながら過ごしましょう。
祝杯をあげて一日を楽しみましょう。
それが私たちの権利なのだからと歌います。
「ホリデイ」は1983年の楽曲です。
ロナルド・レーガン大統領の「レーガノミクス」で経済は上向きます。
しかしレーガン大統領の政策は保守主義的な側面が色濃かったです。
マドンナのようなリベラルな立場のアーティストにとっては生きづらい世の中であったのかも。
しかし彼女自身が時代のポップ・アイコンになって、きな臭い政治に対抗した華やいだ文化を築くのです。