米津の場合も、Foorin版と同じく強い決意を歌っています。
現実に押しつぶされそうになりながらも、また夢を見つけようともがく姿がここまで描かれてきました。
励ましてくれた子供の頃の自分に感謝するとともに、「新しい夢を叶えた自分」を目指していく。
決意を胸に、未来を見据えています。
それぞれの未来に向かって
パプリカ 花が咲いたら
晴れた空に種を蒔こう
ハレルヤ 夢を描いたなら
心遊ばせあなたにとどけ
かかと弾ませこの指とまれ
出典: パプリカ/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
最後のサビに突入。
1、2番の歌詞に、最後に1行が加えられています。
「未来に向かって駆け出し、夢を掴みに行く」と歌っているのではないでしょうか。
Foorinが歌う子供の自分は「夢を叶えた自分」に向かって。
米津が歌う大人の自分は「新しい夢を叶えた自分」に向かって。
それぞれ駆け出して行きます。
「誰か」とは誰なのか
冒頭で歌詞で人物を表している単語は「あなた」のみだと書きました。
実はもうひとつ、人物を表している単語があります。
それは「誰か」です。
1、2番ともにAメロで登場していました。
米津が歌う大人の自分にとって、それは「現実をよく見ろよ」と引き戻そうとする周囲の人たちでしょう。
そんな落ち込む背中を子供の頃の記憶が押してくれ、歩み出すことができました。
ではFoorinが歌う子供の自分に励ましの言葉をかけてくれたのは誰なのか。
それは米津が歌う「夢を叶えることができなかった自分」ではないでしょうか。
子供の自分も、大人になった未来の自分に励まされていたのです。
未来の自分からの自戒も込められているのかもしれません。
「パプリカ」は夢に向かって、子供の自分と大人の自分が対話をしている歌だともいえるのです。
「パプリカ」に込められたメッセージ
どんな経験も自分の糧になる、だから夢に向かって頑張って欲しい。
それが「パプリカ」で米津が伝えたいメッセージなのではないでしょうか。
たとえ夢を叶えることができなくても、積み重ねてきた経験が無駄になることはありません。
米津が歌う大人になった主人公のように、新しい夢へと向かう糧になります。
そうやって咲いた夢が、子供の頃に描いていた色とは違っても。
パプリカのように、どれもが鮮やかで美しいものになり得るのです。
「パプリカ」を聴いて育った子供たちの未来に、色とりどりの花が咲くことを願っています。
原爆でなくなった子供への想い
この歌のもう一つの解釈は、原爆で亡くなった子供への想いです。
こちらも少し解釈していきましょう。
あなたとは亡くなった子供
ここでのあなたとは、原爆によって命を落とした子供になります。
今を生きている自分が、戦争で命を落としたあの子に向けて会いたいといっているのです。
死んでしまったあの子に会いたいといっているかのようです。
見つけた星は、あの子なのではないでしょうか。
明日もこの平和が続きますように…、そんな祈りにも似たフレーズです。
捉え方によって、これまで解説してきた考え方とは全く異なってきます。
この歌には二重のメッセージが隠れているのではないでしょうか。
誰かは自分とあの子
原爆でなくなった子供への歌という捉え方をすると、当然「誰か」の捉え方も変わってきます。
雨に燻り 月は陰り
木陰で泣いてたのは誰
一人一人 慰めるように
誰かが呼んでいる
出典: パプリカ/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師