いつも同じ場所で同じ愛を
そっとただ渡してくれた
遠くて近い部屋の片隅
闇を照らしている
出典: 片隅/作詞:三浦大知 作曲:Kōki
何度も登場する「部屋」という単語。
そのままの意味で受け取ると、現実には存在しないような不思議な場所に感じると思います。
それもそのはず、この「部屋」は実際には存在しない場所。
というのも、「部屋」は主人公の「心の中」を例えていると考えられるからです。
部屋が暗い状態であっても、そのどこかで常に明るく照らしてくれた「君」。
「片隅」にいつもいるのは、主人公がその存在にあまり気づいていなかったからかもしれません。
恋愛より趣味や仕事へ熱中していると自分では考えていたのかも。
どれだけ「君」の存在が自分にとって重要なものだったのか、主人公は失ってから初めて気づいたのでしょう。
この曲の歌詞はそんな、主人公の後悔と虚しさを歌っているのです。
さて、続けて「君」が去った後の主人公の生活を、さらに覗いてみましょう。
毎朝不安な気持ちに
カーテン音も耳障り
カーテンの音 耳に障る
日々の始まりは不安で
窓を超えて差し込む陽が
心を照らすふりをする
出典: 片隅/作詞:三浦大知 作曲:Kōki
朝起きて、カーテンを開けるというのを習慣にしている主人公。
今までは何も思わなかった動作ですが、それすらも億劫な状態なのが伺えます。
主人公にとって「君」がいない今日が始まるというのは、今やとても不安定になることなのでしょう。
無理やり明るく振る舞おうとしますが、それも空回りしてしまうようです。
失恋の痛手と「君」を失った喪失感からは、まだ完全に立ち直れていないというのが分かりますね。
心にぽっかりと穴が空いたような気持ちでいるのではないでしょうか。
何を見ても思い出してしまう
瞳に映る色や形全て
君の元へと繋がって
「今なら」なんてもう 届かない
出典: 片隅/作詞:三浦大知 作曲:Kōki
見るもの全てが「君」を思い出すきっかけになってしまう…
歌詞を読んで感じましたが知らず知らずのうちに、かなり「君」に依存していた部分もあるのではないでしょうか。
忘れようとしても振り払えず、「君」の幻影に憑りつかれたように感じているのでは?
なかなかつらい状況ですね。
「君」の存在が自分にとってどれだけ重要なものだったのか気づいた今。
「もし復縁できたのなら、今度こそ大事にするよ」と伝えたいところですが…
主人公と「君」の縁はとっくに切れており、連絡も取れない状況。
でも、これまでないがしろにしてきた自分が悪いのだ…と自分を責める気持ちも少し感じます。
君を探してしまう
いつも同じ場所で同じ愛を
そっとただ渡してくれた
広くて狭い部屋の片隅
光る記憶
いつも同じ場所で同じ愛を
そっとただ渡してくれた
近くて遠い部屋の片隅
声を探してる
君を探してる
出典: 片隅/作詞:三浦大知 作曲:Kōki
今や、「君」は自分の心の中にはおらず、あるのは思い出だけ…
部屋の面積が一定でないような書かれ方をしていますが、それは主人公の心の中だから。
時と場合によって広いようにも狭いようにも感じるのでしょう。
きっと「君」が側にいた時は広いと思っていたのではないでしょうか。
広すぎて「片隅」にいる「君」をなかなか気にかけなかった。
そんな余裕が自分には無いとつれない態度をとっていたのかも…
今や、主人公の心は狭く暗い状態で、とても不安定に。
最後の歌詞は自分の中にある「君」の思い出を、必死で手繰り寄せている主人公の姿を描いたものでしょう。
「君」に会いたい、触れたいという想いの強さも感じます。
また、それを失恋の傷と喪失感を癒すための薬にしようとしているのかもしれません。
でも、歌詞から主人公の様子を想像すると、それは逆効果な気もします…
ますます落ち込んでしまいそうで、少し心配になってしまうラストでした。
最後に
失恋した主人公が相手の存在の大きさに気づいて悔やむ曲
かけがえのない存在を失ってしまったんだというショックな気持ち。
そして、そのことに今まで気づけなかったことに対する、やるせない思い。
そんな繊細な感情を日常生活を織り交ぜて、リアルに表現している曲だなと感じます。
独自の解釈になりますので、本当に三浦さんが伝えたかったこととは違っている可能性もあります。
歌詞の意味をそれぞれ考えながら聴いてみるのも良いかもしれませんね。