「モナリザ」である“あなた”に出会った日、歯車は動き出します。
ここから幸せな物語が始まると思いきや、主人公の感じる想いは「喪失」。
「“あなた”を失ってしまうのではないか」と、止めることの出来ない喪失が訪れる予感を感じるのです。
主人公が感じている喪失感から、「既に二人の出会いは別れに向かっている」ということが読み取れます。
では、歯車が動き出したばかりだというのにどうして喪失の予感がしてしまうのでしょうか。
あなたとの「忘れたくない」できごと
もうたくさんあるけれど
もういっぱいあるけど
もう一つ増やしましょう
(Can you give me one last kiss ? )
忘れたくないこと
出典: One Last Kiss/作詞:Hikaru Utada 作曲:Hikaru Utada
あなたとの忘れたくない思い出など、もうたくさんある。
だけど、もう一つ。
あなたとの思い出をもっと増やしたいの。
主人公のこの願いは、楽曲に漂う切なさを倍増させます。
そして英詞で紡がれるセリフや、何度も繰り返される「忘れたくない」というフレーズ。
そのすべてが“あなた”を失いたくないという主人公の未練、執着心を表現しているといえます。
かすかに感じる“あなた”との温度差
I love you more than you’ll ever know
出典: One Last Kiss/作詞:Hikaru Utada 作曲:Hikaru Utada
和訳すると、以下のような意味合いが描かれています。
あなたが思う以上に、私はあなたのことを愛しているのよ。
出典: One Last Kiss/作詞:Hikaru Utada 作曲:Hikaru Utada
あなたは私がどれだけあなたを愛しているか分かってる?
きっと分かっていないのよね。
ねえ、あなたが思う以上に愛しているのよ。
そんな主人公の想いが、ささやくような英語から香り立ちます。
ここで囁かれている言葉から、ひとつのことが感じ取れるのではないでしょうか。
それは二人の間にかすかな温度差があったということ。
また、これまで“あなた”の人物像については一切書かれていませんでした。
ですが、相手の気持ちに気付き辛い不器用さがあるということも読み取れるでしょう。
写真なんて必要がない程“あなた”を覚えている
私の心にはあなたが焼きついて
「写真は苦手なんだ」
でもそんなものはいらないわ
あなたが焼きついたまま
私の心のプロジェクター
出典: One Last Kiss/作詞:Hikaru Utada 作曲:Hikaru Utada
あなたは写真が苦手と言うけれど、写真なんていらないのよ。
私の心には、あなたがしっかりと焼きついている。
私の心はプロジェクターなの。
このように自分の心を「プロジェクター」に例えて、主人公は“あなた”への想いの強さを伝えます。
写真などなくても主人公の心にはしっかりと、愛している“モナリザ”の姿が残っているのです。
寂しくないふりをしたのは、傷つきたくなかったから
寂しくないふりしてた
まあ、そんなのお互い様か
誰かを求めることは
即ち傷つくことだった
出典: One Last Kiss/作詞:Hikaru Utada 作曲:Hikaru Utada