ナイトクラブのダンスフロアで静かに体を寄せ合う二人

主人公と女性とはいったいどんな関係なのでしょうか。

恋人それとも?

主人公とその目の前にいる女性はどんな関係なのでしょうか。

彼女は主人公のネクタイに目をとめ、何かしら嫉妬しているようです。

「誰からのプレゼント?」

「出てくるときに選んでもらったの?」

相思相愛の深い関係にある恋人同士であれば、そのような嫉妬は考えにくいのではないでしょうか。

恋人同士であれば相手が自分以外の人からの影を思わせるものを身に着けることを想定しません。

もし、それをするなら「浮気」として相手を責めるものです。

現状の二人はまだ、相手の身上を探り合っている段階のよう。

「私のことをあれこれ口説いているけれど、本当は他に誰かいるんじゃないの?」

女性はそんな風に相手の本音を聞こうとしているようです。

対する主人公は、彼女の本当に聞きたいことには答えることはありません

するりと上手に質問をかわし彼女の体を引き寄せます。

音楽に酔いしれて

二人が寄り添うナイトクラブ。

そこは音楽とお酒、人を酔わせるものでいっぱいです。

素敵な男性にエスコートされ、ほろ酔い加減で素敵な音楽に身をゆだねています。

それは日常の場面からは切り離された空間です。

エレクトリカルな音楽が発達した現在、お店などのBGMの殆どは録音されたものでしょう。

生演奏に耳を傾けながら静かに時間を過ごせる場所は少なくなりました。

プロの生演奏には独特の人の心に入り込むパワーがあります。

押しつけがましくなく、それでいて無関心でいられない。

なんとも刹那的なギターの調べは今宵のカップルの雰囲気をより盛り上げます。

ナイトクラブのダンスフロアには、あちらにそしてこちらにカップルの影が重なっているようです。

恋が生まれる

石原裕次郎【二人の世界】歌詞を解釈!ナイトクラブでつかの間の逢瀬…プレイボーイな裕ちゃんにトキメこうの画像

逢えば短い 夜だから
何も云わずに 踊ろうよ
淡い灯が 又ひとつ消えてゆく
別れが切ない ナイトクラブ
恋のクラブよ

出典: 二人の世界/作詞:池田充男 作曲:鶴岡雅義

夜が更け、二人に残された時間は残り僅かです

名残は尽きぬとも、時間は静かに流れていきます。

この時間だけを

朝の顔、昼の顔、そして夜の顔。

様々な時間の顔を見せ合うカップルであれば、別れ際は寂しいだけです。

もちろんまた早く逢いたい、もっと一緒にいたい、そんな思いはありますが悲しみは少ないのではないでしょうか。

夜の時間だけを共に過ごすカップルであれば事情は異なります。

明るい時間を共にすることなく、夜に出会いそして恋に落ちた。

お互いに部分的にしか知らないある意味、都合の良い関係です

しかし、本当に相手に心が惹かれ出すとそれはとても寂しいと思えるでしょう。

夜が明ければ、彼は自分の知らない誰かになって知らない時間を生きるのだろう。

そんな想像をしながら、女性の気分は重く沈んでいきます

ナイトクラブを照らすのは

ナイトクラブや、ミュージッククラブと呼ばれる社交場では、キャンドルの灯が活躍します。

蛍光灯の白くまぶしい光ではなく、静かに落とされた間接照明。

それぞれのテーブルの上にはキャンドルが灯され、雰囲気を盛り上げます

カップルたちは、揺れる炎を見つめながら静かに会話を交わすのです。

客が入れ替わるとキャンドルの灯は一旦消され、新しく灯されます。

キャンドルの長さに反比例して二人の過ごした時間がそこに表れるようです。

閉店時間が近づくと、お客は徐々に減っていくでしょう。

テーブル席のキャンドルも、あちらが消え、そしてこちらが消えていきます。

名残を惜しむ二人のタイムリミットがすぐそこまで近づいているようです。

主人公の男性は

この歌の主人公を想像すると、それを歌う石原裕次郎の姿と被ります。

見た目が格好良く、ハイスペックでしかも明るい性格。

どこから見ても「素敵」な男性の要素であふれています。

プレイボーイを気取る人の中には、自分が楽しければそれで良いというタイプもあるでしょう。

しかし、主人公はそうではなく、相手への気遣いも忘れないようです。

相手を気遣い、その瞬間は本気で相手に惚れる男性です。

そうでありながら、誰に縛られるでもなく長期的な約束はすることはないでしょう。

恋愛を本気で楽しめるタイプです。

女性からすれば、いっそ自分勝手な遊び人であれば怨むこともできます。

主人公は、愛すべきプレイボーイです。

ターゲットになった女性にとっては罪作りな男性といえそうです。

ナイトクラブでの出来事

石原裕次郎の歌う「二人の世界」について歌詞を読み解いてみました。

この歌が生まれた1960年当時、高級な夜遊びは限られた人たちの娯楽です。

若くしてナイトクラブに出入りできるのは、ごくわずかな人たちだったでしょう。

そんな夜の社交場を舞台に繰り広げられる粋な恋の駆け引き

それはときに真剣に、そしてときに残酷に生まれては消えていきました。

夢の世界「ナイトクラブ」での出来事はそのすべてが夢物語でした。

ナイトクラブの開店時間中だけが二人の世界なのです。

夜遊びの場で生まれる恋は、白昼の元まで引き延ばすことは難しいものでしょう。

遊びとは本気でやるからのめり込むものです。

そして、「恋」は究極の遊びといえます。

「二人の世界」は言葉ではなく感覚で楽しむ恋の世界です。

あらゆるものを手中に収めた余裕のある男性のそんな恋が描かれています。