クライマックスの歌詞から抜粋しました。

宇宙へとふたりの愛を飛び立たせるというのがテーマになっています。

そのためにUFOとのコンタクトを希望しているのです。

とはいえ、桜井和寿の気怠い歌い方を聴くと本気でそんなことを願っているのではないと分かります。

一方でこの地球では苦しみがときに訪れることも口にしているのです。

こうした辛い日々からの脱却のためにUFOという思考実験が必要になりました。

地球の重力に縛られて羽ばたけない愛の様子などを上手く表現しています。

実際にUFOが地球に飛来したならば、私たちの暮らしは根本から変革されるでしょう。

そうした「リセット・ボタン」のひとつとしてUFOの存在を信じたいようです。

こうした側面はちょっと不幸な時代ともいえるでしょう。

11曲目「Drawing」

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シングル「youthful days」のカップリング曲です。

アコースティック・ギターの音色が切なく響きます。

後半にはシンセサイザーを基軸とした迫力のバンドサウンドに変わるのです。

静謐な印象は曲の終わりまで続き次曲「君が好き」まで自然に繋がります。

歌詞を見ていきましょう。

一瞬を永遠に描いておきたい

どんな場面でも
僕の絵には必ず君が描かれていて
目を閉じたまま深呼吸してみれば分かる
君はいつも 僕のノートに

絵に描いたとしても
時と共に何かが色褪せてしまうでしょう
永遠はいつでも
形のない儚い幻影(かげ)
君と共に 僕の元に

そしていつも 僕のノートに

出典: Drawing/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿

スケッチした肖像画はいずれ傷んでしまいます。

しかし君の姿を永遠に刻んでおきたいと僕は願うのです。

永遠というのは目の前の一日のことだという考えがあります。

永遠という果てしない時間も目の前の一日というわずかな時間がなければ成立しません。

日々の目の前の時間が永遠をも司っているのだという考え方です。

ここでの主人公の僕の時間に関する考えもこうした発想に似ています。

君の姿は不出来ながらも僕のノートの中にあるのです。

僕は君の永遠の一瞬をいつまでもノートにしたためています

ラブソング名曲です。

12曲目「君が好き」

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2002年1月1日発表、Mr.Children通算22作目のシングル「君が好き」。

大ヒットした名曲ですので、特に説明は不要かもしれません。

ラブバラードの傑作です。

分厚い演奏やサウンドが切ない歌詞をもり立てます。

ドラマの挿入歌で覚えていらっしゃる方も多いはずです。

歌詞を見ていきましょう。

好かれたいではなく「君が好き」

君が好き
僕が生きるうえでこれ以上の意味はなくたっていい
夜の淵 君を待ち
行き場のない 想いがまた夜空に浮かんで
君が好き 君が好き
煮え切らないメロディに添って 思いを焦がして

出典: 君が好き/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿

クライマックスから抜粋いたしました。

フチ」「マチ

歌詞の音韻をいかに大切に紡いでいるかが分かると思います。

僕の人生の総決算は「君が好き」だったことでいいと歌うのです

これ以上の愛情表現はないかもしれません。

人間というものはそのときどきの選択がその人の総決算になるはずです。

僕はいかなる選択の瞬間にも「君が好き」であることを最優先します。

情報誌は「どのように愛されるか」というトピックばかりを特集。

しかし大事なことは「どのように愛するか」という能動的な愛の姿でしょう。

僕は迷うことなく「君が好き」と伝えきります。

崇高な愛の姿がここに結晶しているのです。

大ヒットしたのも当然の傑作でしょう。

13曲目「いつでも微笑みを」

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橋幸夫と吉永小百合の「いつでも夢を」のオマージュ

スクラッチ音の演出などは旧い昭和歌謡へのオマージュである証拠でしょう。

5年後には損保ジャパンのCMで採用されるので耳馴染みがあるはずです。

単純ながらインパクトのあるリコーダーのメロディが頭に残る楽曲でしょう。

歌詞を見ていきましょう。

どんなときにでも笑っていられるかな

いつでも微笑みを
そんな歌が昔あったような
悲劇の真ん中じゃ その歌は
意味をなくしてしまうかなぁ

もし僕がこの世から巣立って逝っても
君の中で僕は生き続けるだろう
そう思えば何とか やっていけそうだよ

そう だからいつも いつでも微笑(えみ)を いつでも微笑を
いつでも微笑を

出典: いつでも微笑みを/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿

私たちは人の死の報に接して涙を流します。

そんな状況の中では「いつでも微笑んで」というような歌は不謹慎と罵られるでしょう。

しかし僕はこの世から去るとき、君の心のうちで僕が生きていることを知っている。

ならばそれほど悲しみに暮れることなく見送ってくれないかと僕は歌います。

中々、こうした心境には達せられないものです。

しかし死者は生者を煩わせたいなどとは少しも思っていないはずでしょう。

ならば生きている君は「いつでも微笑みを」と、逝ってしまう僕が願う気持ちも理解できます。

中々、人々の風習を変えることは難しいです。

それでも僕は君のことをすごく信じていることが分かるのが、この曲の魅力でもあります。

死についての新しいひとつの考え方として記憶しておきたい歌です。

14曲目「優しい歌」