名盤「It’s a wonderful world」
記念すべき10作目
2002年5月10日発表、Mr.Childrenの通算10作目のアルバム「It's a wonderful world」。
ギター中心のポップ・ロックの楽しさが全快で表現されています。
Mr.Childrenの中期の名アルバムといえるでしょう。
「It's a wonderful world」というタイトルでお分かりいただけるように非常に前向きな世界観です。
各曲バラエティに富んでいるのですがアルバム全体にある世界観のようなものは統一されています。
いつものように小林武史が参加していますので、鍵盤楽器の様々な音色に耳が傾くはずです。
Mr.Childrenのギター・サウンドとバラエティあふれるシンセサウンドの融合が見事であります。
このアルバム「It’s a wonderful world」のすべての曲を解説してみましょう。
1曲目「overture」
「overture=序曲」の意味の通りに次の楽曲「蘇生」の前奏曲であり、さらにアルバム全体の序曲です。
作曲は小林武史。
シンセサイザーの音で埋め尽くされたこの曲は1990年代に生まれた「音響派」の音楽を彷彿とさせます。
すぐに「蘇生」へと繋がる短い曲ですが、単体の曲としても魅力がいっぱいあるようです。
Mr.Childrenがこのような音楽を追求していくのも聴いてみたいと思わされます。
とはいえ、歌詞もない序曲です。
うっとりとしているうちに次の曲「蘇生」へと自然と移行します。
2曲目「蘇生」
イントロの前曲「overture」をそのまま受けてリズム隊が走り出す辺りがかっこいいです。
12弦ギターの響きなどにも耳が傾きます。
パワー・ポップとエレクトロニカ風のシンセサウンドが特徴的です。
サビのメロディと歌詞も耳に残りやすいためにライブでよく歌われました。
後半になるにつれビートが前面に押し出されます。
歌詞を見ていきましょう。
311後にまた「蘇生」
そう何度でも 何度でも
僕は生まれ変わって行ける
そしていつか捨ててきた夢の続きを
暗闇から僕を呼ぶ
明日の声に耳を澄ませる
今も心に虹があるんだ
何度でも 何度でも
僕は生まれ変わって行ける
そうだ まだやりかけの未来がある
出典: 蘇生/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
クライマックスでビートが高鳴る箇所の歌詞です。
アルバム冒頭を飾る曲ですから希望に満ちた歌詞になっています。
時の移ろいの中でしっかりと自分を見据えて生きていこうという決意が歌われているのです。
桜井和寿やMr.Childrenの決意でもありながら、リスナーを鼓舞するようでもあります。
「虹」というのは歌詞の冒頭で被写体に収めようとした光景です。
しかし自分の心のうちにも架けた「虹」があると僕は気付きます。
その鮮やかな光彩を目指して前へ進んでゆけば、自ずと未来は拓けると歌うのです。
アルバム「It’s a wonderful world」はMr.Childrenの結成10周年を祝うアルバムでもあります。
これまでの10年とこれからも続く栄光の日々へ向けて生まれ変わることを決意するのです。
タイトルの「蘇生」とは生まれ変わりながら未来を拓くという意味でしょう。
2011年東日本大震災の直後の公演では1曲目に演奏されました。
「蘇生」
ノリやすい曲ですが固有の重さも感じられる楽曲なのです。
3曲目「Dear wonderful world」
最後の曲「It’s a wonderful world」のサビが取り払われたヴァージョンです。
小林武史によるシンセサイザーの重低音がよく響きます。
こうした曲はイヤフォンではなくヘッドフォンで聴きたいものです。
短い曲ですが歌詞を見ていきましょう。
アルバムのコンセプトが凝縮
Oh Baby 通り雨が上がったら
鼻歌でも歌って歩こう
この醜くも美しい世界で
無駄なことなど きっと何一つとしてないさ
君の身の上話のひとつでも聞かせてよ
Oh Baby 通り雨が上がるまで
カプチーノでも頼んで待とうか?
この醜くも美しい世界で
出典: Dear wonderful world/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
アルバムの仮タイトルである「この醜くも美しい世界」というフレーズが登場します。
3曲目ですがアルバム「It’s a wonderful world」のコンセプトのすべてがこの歌詞に詰まっているのです。
気楽さを含みながらも世界の稀少さを問うています。
誰しもが持っているような些細なエピソードのひとつひとつがこの世界を構成すると考えるのです。
君の話を聞かせて欲しいという願いは、Mr.Childrenがリスナーの願いを聴き遂げたいという思いでしょう。
喫茶店での雨宿り。
実際にSEで「カプチーノ、お待たせいたしました」という音声が入っています。
短い曲ですがとても重要な曲なのです。