『はっぴいえんど』が収録されているアルバム『葡萄』
アルバム『葡萄』の特徴は?
『葡萄』は、2005年の14本目のアルバム『キラーストリート』から約10年ぶりにリリースした15本目のアルバムです。
『葡萄』には、WOWOWのCM曲にも起用された『アロエ』や『はっぴいえんど』などを初めとする全16曲が収録されています。
30周年を迎え、53枚目のシングル『I AM YOUR SINGER』の発売と同時に2009年からの活動休止を発表したサザンオールスターズ。
その後、休止中の数年間を振り返り「たくさんの人たちと楽しもう」というメンバーの意見が合致したこともあり、2013年に活動を再開しました。
復帰1作目として発売されたアルバム『葡萄』は、桑田佳祐が好きだという”和”がテーマになっています。
まるで英語詞のように聞こえる日本語詞という特徴を取っ払った、日本情緒あふれる作品となっています。
桑田佳祐曰く、英語詞に逃げるのをやめ日本人として日本語のポップスを作ろうと思ったとのこと。
平和や反戦イメージの楽曲が多く収録されていますが、『はっぴいえんど』は、妻の原由子やメンバーへの感謝を綴った楽曲とのこと。
さっそく、暖かい気持ちになれること間違いなしのこの歌を一緒に見ていきましょう。
サザンの特徴である英語詞が少ない
今までサザンオールスターズは、英語詞が多いのが特徴でした。
しかし活動休止中、桑田佳祐自身が食道癌に見舞われたこと、東日本大震災が起こったこと。
いろいろ桑田佳祐にとって考えさせられる出来事が多くありました。
そして、「日本人として」に重点を置いた曲を作ろうと思ったのではないでしょうか。
”和”という言葉が好きだったこともあり、この歌からは「日本人」であることが随所に感じられます。
それでも、アメリカンやイギリスのロックへの思いはどうしても断ち切ることができなかったようです。
欧米のロックを日本風にアレンジして出来上がったのが『葡萄』なのです。
ロックでもポップでもない!?テーマは歌謡曲?
サザンオールスターズの楽曲を聴くと良くも悪くも、”サザンらしい”と強く印象づけられています。
しかし『葡萄』ではこれまでのサザンオールスターズというイメージからかけ離れた、「歌謡曲」や「大衆音楽」に近い楽曲が多いのです。
先述したように、日本語と英語を掛け合わせたような詞が特徴的でそれが結果として”サザンらしい”楽曲となっていきました。
日本語と英語をつなげ、堅苦しい文法を無視した自由表現で、日本語で歌っているのに英語に聞こえるロックの先駆けとなった存在です。
ではなぜ『葡萄』では”サザンらしさ”を封印したのか、それはサザン活動休止中に起こった様々な出来事も原因のひとつ。
『葡萄』は、桑田佳祐の人生における転機となったことは間違いないでしょう。
『はっぴいえんど』はなぜ注目されるのか?
死に直面したからこその感謝
『葡萄』に収録されている『はっぴいえんど』は、桑田佳祐自身が原坊やメンバーへの感謝を綴った名曲です。
大震災で失われた命や自身の食道癌による闘病生活で、”死”に直面したからこその感謝。
また、かつては「愛と平和」なんて安っぽい言葉だと思っていた節もあるようです。
しかし、『葡萄』を制作した頃には自身の年齢もあってか、骨身に染みる言葉となっていたようです。
生きていられることへの感謝、自分を見守ってくれていた妻やメンバーに対するすべての感謝がこの楽曲に詰め込まれているのです。
「ありがとう」は照れくさいから楽曲にしちゃおう!という斬新なメッセージ
活動休止中に食道癌で闘病した桑田佳祐。
10年ぶりとなったアルバムリリースの際、メンバーへの思いや病で迷惑を掛けた妻・原坊へのお詫びのメッセージも入れてしまおうと思ったとのこと。
改まって言うには照れくさいという妻への「ありがとう」という想い。
自分の病が原因でツアーが中止となり、メンバーにも迷惑をかけて申し訳ないという、桑田佳祐のすべての想いが『はっぴいえんど』に深く刻まれています。
面と向かって言わずに歌詞にする。これこそアーティストの腕の見せ所ですね。
桑田佳祐らしい表現で綴られたこの歌。
きっとメンバーや奥さんへ、感謝の気持ちはこれ以上ない形で、しっかり伝わったことでしょう。
『はっぴいえんど』の歌詞を解釈する
言葉より そばに居て欲しい 眠れないボクの手を握りしめて 病む時も 笑顔見せてくれ ボクよりも長く 生きるキミよ
出典: はっぴいえんど/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐