楽曲について
花譜の楽曲『私論理』。
シティポップでキャッチーなサウンドの裏に自身の抱く理想像が訴えられている楽曲です。
2020年1月8日にYouTubeにて公開されたMVは、公開7か月にして再生回数は230万回を突破。
花譜の抑揚とスキップをするように乗っている歌い方がなんとも魅力的です。
メロディーを聴いているだけでは、決して感じることの出来ない心に潜んだ憂いが描かれている歌詞。
横文字や湾曲した表現が巧みに使用されている内容について詳しく見ていきます。
ロンリー
自分だけが取り残されて
今更もう遅いよ
誰もが踊ってるキラーボールの
幻が蠢く街
I don't know
さあ、声を振り絞って
スクランブル交差点
君とだけは交わらない
出典: 私論理/作詞:カンザキイオリ 作曲:カンザキイオリ
開始早々に謳われているのは、生きている世界が既に手遅れだという諦念です。
「キラーボール」とは、ミラーボールに踊らされているといった意味。
皆が足並みを揃えて、楽しんでいる状況に対比されているのは、何にもなれない自分自身の姿です。
楽曲のタイトル及び、楽曲の最終行にもあるように「私論理=私ロンリー(独り)」。
スクランブル交差点と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、雑踏で溢れた東京の大通りです。
その中を歩いていても、感じるのはたった1つ「孤独」に過ぎないといっているのでしょう。
そして、ここで述べられている「君」とは、心の中の自分を指しているのではないでしょうか。
その後に「だけ」という風に、限定表現が用いられている点からも、自分を受け入れられない様子が感じ取れます。
深層心理にあるのは
どうしてよって君が惑う
声が聞きたいの
「歩けど歩けど人で群れるのに
なんで1人と踊らなきゃならないの?」
ハイファイに混ざるビル街の
この先君と私は出会える?
出典: 私論理/作詞:カンザキイオリ 作曲:カンザキイオリ
鍵括弧の部分は、心の中の自分が言い放ったどこまでも素っ気ない態度を有した言葉です。
深層心理には、自分を愛したい、人の温かみに触れたいという正直な想いがあるのだと解釈します。
それを邪魔しているのは、過去の経験や無意味に高いプライド、斜に構えた考え方などがあるのでしょう。
自分を愛してあげられるようになることで初めて、誰かを愛することが出来るのです。
その、自己愛や自尊心すら満たされていない自分から零れる想いは、全て自己犠牲を内包しています。
あなたはどこに
理想を空想
come on!Baby Baby
見つけ出して摩天楼の隠れ家で
私lonely lonely
バズった妄想で
さあ、今私風になる
出典: 私論理/作詞:カンザキイオリ 作曲:カンザキイオリ
注目すべきは、歌詞4行目に謳われているフレーズです。
自分自身が人から必要とされ、毎日が輝いている状況をイメージしている様子が感じ取れます。
花譜に置き換えれば、ファンに囲まれて自身の歌を届けられている環境こそが、理想像なのです。
現実とは真逆ともいえる状況を思い浮かべることで、少しばかりの幸せに浸る。
それが終わった瞬間に襲い掛かってくるのは、何者でもない自分のリアルな姿。
自分が心を開くことが出来る瞬間を「摩天楼~」と表現している点にも注目です。
それは心の奥深く、誰にも見つけられないような場所にあるという想いのもとに表現されているのでしょう。
ずっと待ち続けている
この街にHello 寂しさにHello
幼気な魔浪 噛み締めてirony
今は今はこの場所で待ってる
会いに来て?
出典: 私論理/作詞:カンザキイオリ 作曲:カンザキイオリ