【夏休み/吉田拓郎】噂の歌詞の意味を徹底解釈!2005年のアルバム「一瞬の夏」収録のアレンジも秀逸!の画像

シングルカットからさらに16年後、2005年にリリースされたアルバム「一瞬の夏」に収録されて、「夏休み」という曲は改めて21世紀の世に放たれることになります。

2003年、吉田はツアーを行いました。「TAKURO & his BIG GROUP with SEO ~豊かなる一日~」。ビッグバンドを率いての待望のツアーでした。「たくろうLIVE'73」以来30年振りのビッグバンドツアーです。

ビッグバンドの演奏による「夏休み」を新たに聴くことができるツアーでした。

しかしこの年、吉田は肺がんのため手術を受け、肺の5分の1を摘出しました。このためツアーは一旦、延期されたのですが、手術の半年後に開催されたのです。

このツアーで好評だった曲をチョイスして、改めてコンサートホールでレコーディングしたアルバムが「一瞬の夏」です。

「一瞬の夏」はライブアルバムに分類されることもありますが、オーディエンスがいる状態で録られたものではありません。

2003年のツアー中に会場で録音されたものは、ライブアルバム「豊かなる一日」として、「一瞬の夏」リリースの1年前に別にリリースされています。

「一瞬の夏」のジャケットアートは漫画家・江口寿史によるもの。江口は若い頃からの吉田のファンで、吉田が好きでならなかった高校生時代の自身を描いた「マークⅡ」という短編を発表しています。

「マークⅡ」は吉田の曲のタイトルで、「一瞬の夏」にも収録されています。

1.あゝ青春
2.マークⅡ
3.唇をかみしめて
4.恋唄
5.家へ帰ろう
6.全部だきしめて
7.夏休み

出典: 一瞬の夏/吉田拓郎

デビュー曲のカップリング「マークⅡ」、映画『刑事物語』主題歌「唇をかみしめて」、フジテレビ系『LOVE LOVE あいしてる』主題歌「全部だきしめて」など、時代を網羅した7曲です。

永遠の名曲「夏休み」が歌うもの

「夏休み」と聞いて、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。学生時代の長い休みを思い出さないでしょうか。

吉田拓郎が歌う「夏休み」はどうでしょう。みなさんが思う夏休みを歌っているでしょうか。まずは歌詞をご覧ください。

麦わら帽子は もう消えた
たんぼの蛙は もう消えた
それでも待ってる 夏休み

姉さん先生 もういない
きれいな先生 もういない
それでも待ってる 夏休み

絵日記つけてた 夏休み
花火を買ってた 夏休み
指おり待ってた 夏休み

畑のとんぼは どこ行った
あの時逃がして あげたのに
ひとりで待ってた 夏休み

西瓜を食べてた 夏休み
水まきしたっけ 夏休み
ひまわり 夕立 せみの声

出典: 夏休み/作詞:吉田拓郎 作曲:吉田拓郎

短めの、簡潔な詞です。実にストレートな、小細工のない素直な歌詞です。これが吉田拓郎の歌詞」です。簡潔で、余計なものがありません。思いがそのまま、平易な言葉で綴られています。

「麦わら帽子」、「たんぼの蛙」、「絵日記」、「花火」……こういった要素から察するに、歌われているのは小学生の夏休みではないでしょうか。

けれども、「麦わら帽子」も「たんぼの蛙」も、「もう消えた」と歌っています。何故消えたのでしょうか。

おそらく、この歌詞の主人公は年齢を経ていて、現在は麦わら帽子を被ったり、たんぼの蛙を見に行ったりするほどの時間の余裕や、小学生の頃のような長い休みなどを得られないのでしょう。

あるいは、蛙が棲むようなたんぼがある田舎から都会へと出て生活しているのかもしれません。麦わら帽子を被ってたんぼの蛙を捕まえに行ったり、きれいな先生に会った夏休みは、遠い思い出なのです。

小学生の夏休みを経験したことがある人は、絵日記をつけたり花火を買ったりしたことがあったでしょう。梅雨が明けたら夏休みまでの日数を指折り数えたことでしょう。

それらは遅かれ早かれ、いずれ思い出になります。思い出とはのちに懐かしく思い出すことです。この曲を書いた20代半ばの吉田もそういった思い出の風景をただそのままに書いたのだと思われます。

夏休み/吉田拓郎

吉田自身の思い出、懐かしい風景を歌う曲であると同時に、日本人の誰もが持つ心の原風景という普遍的なものを歌う曲でもあるのです。

誰の心にも懐かしい。それが「夏休み」という曲が時代を越えて長く愛される理由でしょう。

「夏休み」を原爆攻撃を受けた広島を歌った反戦歌である、とする説が広く流布していますが、この説の出どころは2006年に発売されたある週刊誌だということが分かっています。

この雑誌のインタビューを受けたあるアーティストが誌上で「夏休み」についての「個人的解釈」を述べました。それが原爆を歌った反戦歌であるという解釈です。

吉田が広島で育った人ということもあり、そのように解釈したのかもしれません。この解釈がインターネットを通じて一人歩きしたようです。吉田自身はこの説を否定しているとのことです。

まとめ

まさに現代日本の音楽シーン形成の基礎を築いた人、吉田拓郎。吉田が歌う「夏休み」は時代を映したものでしたが、時代を越えるものでもありました。

今後一層歌い継がれるであろうこの曲を、みなさんもこれからの夏に口ずさんでみてください。