カラータイマーが点滅してからが勝負のときだ
追い込まれてからヒーロー達は真の力を出し始めると言う
これまでは何をしていたのだと後悔はしないんだ!
絶体絶命の恐怖が迫りくる おそるべき時にこそゆける
出典: ウルトラマン・ゼンブ/作詞:小沢健二 作曲:小沢健二
カラータイマーは言わずと知れたウルトラマンの胸についた装置です。
エネルギー残量を示し、残量が少なくなると赤く点滅する機能があります。
カラータイマーが点滅してからウルトラマンは本領発揮し、怪獣を倒す、というのはお決まりですよね。
最初から本気を出せばいいのに、と野暮なことは言ってはいけません。
追い込まれた時に力を発揮する、火事場の馬鹿力的な意味合いがカラータイマーには含まれているのです。
では、この歌における「追い込まれた時」とは一体何を指すのでしょうか。
「子どものころ」と「今の僕」
ウルトラの奇跡を見せるよ
子どものころに隠しといた変身アイテムで
愛すればそりゃ涙は流れていくよと
知っている今の僕を賭け
この地点から放つ必殺光線は
(光線 光線 光線)
届くかな
出典: ウルトラマン・ゼンブ/作詞:小沢健二 作曲:小沢健二
小沢健二は1968年生まれ、初代ウルトラマンは1966年に放送を開始しました。
小沢健二はウルトラマンと共に育ってきた世代です。
ウルトラマンに憧れた「子どものころ」と「今の僕」との比較がこの曲のテーマになっていきます。
追い込まれているのは、絶体絶命なのは「今の僕」です。
これは歳を取ってエネルギー残量が少ないことを指しているのかもしれません。
もしくはこのコロナ禍における状況を指しているとも考えられます。
愛する妻や子供ができた「今の僕」は「子どものころ」に見たあの能力を発揮できるのでしょうか。
大人になることの失望と悲しみ
カラータイマーがついてないんだよな 悪い奴には
大人って存在の失望と悲しみを一つ一つ知る時思う
幼なごころに感動したのさ 圧倒的なる ULTRAMAN
最強の最高の心僕と君の未来までかえてゆく 憶えている?
出典: ウルトラマン・ゼンブ/作詞:小沢健二 作曲:小沢健二
大人になると人を愛することを知りますが、嫌なこともたくさん知ることになります。
見栄に嘘や妬みや嫉み、責任だったり諦めだったり。
その一つ一つに失望し悲しみを感じて大人へとなっていくのです。
でもそんな時に思うのはあの子どものころに憧れたウルトラマンの火事場の馬鹿力。
あの追い込まれた時のパワーが、あの強い心が未来を変えていく、と歌われます。
しかし「悪い奴」にはカラータイマーが付いていません。
「悪い奴」はヒーローのように逆境に打ち勝つ強い心を持っていないのです。
カラータイマーが付いてないことは「危機感を持つ力に欠けている」と捉えることもできます。
このコロナ禍において危機感を持てない人を指しているのかもしれません。
今この地点から放つ必殺光線
時空を越える強い心
ウルトラの時空は繋がる
子どものころに隠しといた変身アイテムで
生きていればこの涙は流れてゆく
この心は苦しくなる
何も言葉出なくなるよねと
知っている 僕の全部を賭け
この地点からあの必殺光線は
(光線 光線 光線 光線 届く)
(光線 光線 光線 光線 届く)
届くかな
出典: ウルトラマン・ゼンブ/作詞:小沢健二 作曲:小沢健二
大人になると苦しいことがたくさんあり、涙を流すこともたくさんあります。
でも子どものころに見たウルトラマンの強い心は時空を超えてパワーをくれます。
「何も言葉でなくなる」はミュージシャンが歳をとり曲を書けなくなることを指しているのかもしれません。
でもそんなことは知っている。追い込まれた今こそあの必殺光線を放つんだ!
そう歌われているのです。
必殺光線を届けたい場所とは?
ではその必殺光線はどこに向けて放たれたものなのでしょうか?
これにはいくつかの解釈ができるでしょう。
全ての大人たちに向けて「子どものころのあの心を取り戻すんだ」という想い。
このコロナ禍の全人類に向けて「追い込まれた今こそ力を出して打ち勝とう」というエール。
そして「歳をとった今、僕のゼンブを賭けた歌を作ったぞ!」という作曲への想い。
様々な想いがこの【ウルトラマン・ゼンブ】には込められているのです!