駄目だなんて文字にしないように
馬鹿だなんて文字にならないように
残りゆく跡にならないようにと
手紙はいつもまだ書けないままで

出典: 書きかけの手紙/作詞:鬼束ちひろ 作曲:鬼束ちひろ

主人公は、何度も「手紙」を書こうとしていたようです。

しかし思い浮かぶ言葉は「駄目」や「馬鹿」…。

他の言い回しや表現をしたいと思っても、それしか思い浮かばない…。

下手に「手紙」にしてしまえば、そのまま主人公の言葉として残ってしまいます。

つまり、「言葉」そのものが主人公に対する周りからの印象や評価につながってしまうのでしょう。

そう思うと、なかなか言葉にできないのです。

違う表現にしてしまえば、それはもう主人公が納得できる言葉にはならないから。

先ほど例としてあげた鬼束ちひろさんの「月光」の歌詞にある「腐敗」と同じことです。

周りも自分自身も納得できる言葉が見つからないので、「手紙」は書けないのでしょう。

主人公の生き難さが感じられます。

自分のための「言葉」がないことに気づく

解らない言葉は全部調べ出せた
だけど誰かの為の辞書でだったから
頼りないものさえそっと頼りにした
きっとどこにもない気持ちだったから

出典: 書きかけの手紙/作詞:鬼束ちひろ 作曲:鬼束ちひろ

ここの歌詞では、主人公の誰にもわかってもらえない、言葉にできない気持ちが込められています。

どのような言葉も、検索したり辞書で調べれば意味にたどり着けるでしょう。

主人公もそうしていたようです。

しかし、その言葉では漏れてしまう主人公の気持ちがあったのでしょう。

その漏れ出た部分を含めてぴったりくるような言葉は見つかりません。

漏れ出た部分だけを意味するような言葉も見つからないのでしょう。

なぜならそれは主人公だけが持つ価値観や感情だから。

まともじゃない」「ふつうじゃない」と言われてしまう主人公が抱く気持ち

それを表現できる言葉は、「まとも」で「ふつう」な世の中にある辞書には載っていないのです。

作詞をした鬼束ちひろさんの苦悩や皮肉など、真の気持ちが込められているような部分でしょう。

「手紙」が書けないのは自分が「まともじゃない」から

貴方に優しく出来なかったあの頃や
貴方に辛さだけぶつけたあの頃へ
全部忘れられないと届いた返事

出典: 書きかけの手紙/作詞:鬼束ちひろ 作曲:鬼束ちひろ

この歌詞は曲の中で、似たような形で2回繰り返されています。

ここにもまた、主人公の苦悩が感じられるでしょう。

「貴方に優しく出来なかった」で、本当に悪いのは主人公ではありません。

そもそも批判や意見をしてきたのは貴方なのです。

その貴方に対して、優しくすべきだったけれどできなかった主人公。

笑顔で大人な対応をすべきだったけれど、主人公はできなかったのです。

その経験が主人公に全て残っていて忘れられない。

それを言葉にすると返ってきた返事が下記の言葉なのでしょう。

「まともじゃなくたって いいから」
「ふつうじゃなくたって それでいいからね」と

出典: 書きかけの手紙/作詞:鬼束ちひろ 作曲:鬼束ちひろ

主人公と周りの人たちにおいて、会話の成り立たなさが感じられます。

主人公の気持ちや価値観を理解しているかのような言葉。

けれど、主人公からすれば本当に理解してもらえていると感じられないでしょう。

しかし、その言葉に込められた優しさも、主人公は感じているのです。

「あなたは、あなたのままでいい」と言われるのはうれしいでしょう。

しかし同時に、永遠に分かり合えないと言われてもいるのと同じです。

とても生き難い世界ながら、生きていくしかない主人公の苦しさを感じるでしょう。

生き難い世の中を前向きに生きていく力強さ

今回ご紹介した「書きかけの手紙」には鬼束ちひろさんの実話が盛り込まれています。

本人は具体的にどの部分が実話なのかまでは公表していません。

しかし、この曲全体から、鬼束ちひろさんの苦悩や生き難さを感じられます。

つらい経験もあれば楽しい経験もある。

皮肉も感じられるような歌詞ですが、同時にそんな世の中でも生き抜こうとする力強さも感じます。

これまで生きてきて、最大限に頑張ってきた。

けれど折り合いがどうしてもつかないことは、誰でも一つはあるのではないでしょうか。

それでも前を向いて生きていく

そんな鬼束ちひろさんのメッセージが込められているように感じます。

この先、どのような曲を作られるのか注目していきましょう。

OTOKAKEでは、鬼束ちひろさんに関する記事を多数掲載しています。

ぜひそちらも見てみてください。

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