憧れ続けていた筈の、孤独と自由が首を絞める。

なんてこの世は果てしないのだろう。

出典: 生きる/作詞:椎名林檎 作曲:伊澤一葉

無知で純粋だった頃の自分が求めていた自由は、孤独と表裏一体だったという現実。

それに気付いてしまったことが、今の自分にとって受け止めきれない苦しみとなってのしかかります。

例えるなら、がむしゃらになって目指していた目的地にたどり着いてみたらそこは廃墟だったようなもの。

しかもそれは振り出しにも似た場所。

泣き出しそうな歌い方で綴られる最後の一文は、世界の真理の重さに耐えかねた気持ちの現れです。

頭だけで理解しても意味がない

理解できても納得できない

言葉と感覚が、結ばれぬまま。
居直れ我が生命よ。

現と夢の反芻。
繰り返す体で、知る由もない未来ごと此処に失せろ。

出典: 生きる/作詞:椎名林檎 作曲:伊澤一葉

『自分が思い描いたものと現実が別のモノである』

そう頭で理解しているのに、腑に落ちない状況です。

それをどうにか納得させんとする命令にも似た物言いですね。

夢と現実を行き来し、見えない将来の不安に駆られるくらいなら考えるな!

と、わかっているのに、それができない。

苦悩はまだまだ続きます。

繰り返される自問自答

(新緑の平穏にただ浮き足立っていたらば、あらたな己に出会せようか。)

出典: 生きる/作詞:椎名林檎 作曲:伊澤一葉

苦悩が続く原因。

それはこの、過去の自分からかけられるブレーキです。

少しでも明るい未来を描こうものなら、即座に現れて闇に叩き落とす。

過去に囚われ続けていることで、それらが枷になり、先に進めないでいます。

葛藤の原因。それは…

ここまでの流れでお気付きの方もおられると思いますが、この主人公。

実は絶望しながらも、未来に対して明るい希望を持とうとしているのです。

思い描いた現実とのギャップに苦悩し、全てを過去ごと否定しているのは事実。

でも、それでも葛藤が続いているのです。

全否定から絶望し、未来を閉じてしまえばここまでの葛藤にはならないのですから。

もし未来を閉じていれば、もっと後悔の念だけが淡々と綴られるはずなんです。

しかしこの曲はそうではない。

この永遠にも感じられるほど繰り返される自問自答と負のスパイラル。

どんどんと深みにはまりつつも、その闇を抜けた先に何かを感じている証拠です。

2コーラス目からバンドサウンドになり、勢いが増した表現からも見て取れますね。 

後悔の中で知った現実

数々の助言の意味を理解できていなかった

最早何ぶん諸々を聞き飽きて居る。

噫・・・囚われないで、云わないで、為遂げる光のしなやかさよ。
至らなかった。

出典: 生きる/作詞:椎名林檎 作曲:伊澤一葉

もう少し。

もう少しで何かが見えそうで、掴めそう。

そういう兆しがここで感じ取れます。

これまで周りからもらった助言や、自分で気付いた答えは心に残っているのです。

けれど、それらを掴もうとしてこなかったということに気付いたのです。

自分の周りに点在するたくさんの『答え』

もううんざりするくらいに見てきたものでした。

でも、それらは過去に囚われていた自分では掴む気になれない『答え』だったのです。

だからこそ掴んでこなかったはずなのに、ここに来てそれらも正解だと思えた。

長きに渡る負のスパイラルの中で自問自答を繰り返し、世界に絶望していた中に見えた一筋の光。

絶望の淵で見たその光明は、これまでずっと自分の周りに当たり前に存在していた『答え』でした。