SEKAI NO OWARIのほとんどの楽曲は、ヴォーカルのFukaseによって生み出されています。

よって、「SEKAI NO OWARIの世界観」=「Fukaseの脳内」と捉えられるでしょう。

本人も公にしていますが、精神病院に入院していた過去を持つFukaseは、人一倍「愛」や「平和」への「祈り」が強く、「戦争」や「いじめ」などにも独自の解釈を持っています。

音楽を始めるに至り、現在のメンバーで活動を始めた際も、バンド名に対してこのような気持ちを持っていたようです。

「SEKAI NO OWARI」というバンド名はFukaseが命名したもので、「世界が終わったような生活を送っていた頃に残されていたのが音楽と今の仲間だったので、終わりから始めてみよう」という想いが込められている。

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/SEKAI_NO_OWARI

そんなどん底から這い上がってきてできた音楽ですから、これほど多くの人の心を奪い、琴線に触れるのでしょう。

嘘や飾りでは到底出てこない言葉、無防備に投げかけられる疑問、幼い子どもが母親に訊くような純粋な「どうして?」という気持ち。

心のキレイな大人ではない私たちに深く刺さり、苦しみながらも夢中にさせられるのです。

表裏一体

何事も良い面があれば悪い面があり、善悪や好き嫌い、戦争と平和、生と死など、対になる物事が多いです。

SEKAI NO OWARIはどの楽曲でもこれらのテーマを数多く取り扱っていますが、目の付けどころがやや一般的な視点とは違います。

正しいかどうかとかそういう話ではなく、「そこからも見れるのか!?」という驚きを与えられることも少なくありません。

歌詞を捉える

物事のサイクルとしての命?

それでは、「生物学的幻想曲」の歌詞を追っていきたいと思います。

音源では聞き取りづらかった部分も、文字に起こすとリアルで痛いです。

「子孫をのこし繁殖する」
これが僕の産まれた「理由」で僕も「命のサイクル」の中の一つでしかない
それなのに僕は喜んで、怒って、楽しんで、悲しんで、死んでいく
「人類」が死なない為に僕は産まれたの?

出典: 生物学的幻想曲/作詞:深瀬慧 作曲:深瀬慧

私たちは何故繁殖するのか?──ここからまず疑問に思うのがFukaseです。

今でこそ、女性の晩婚化や結婚後の経済的な理由、保育園の待機児童問題など、さまざまな理由で子供を持たない選択をする、またはせざるを得ない人も増えました。

それでもやはり、「結婚→出産」という図式は多くの人の脳裏にあるようで、結婚後数年経っても子供を持たないでいると、「そろそろどうなの?」と聞かれる女性も多いでしょう。

これは非常に不快な質問ですし、繊細な問題でもあります。

「年齢が……」「機能的に……」「経済的に……」どの理由も、正直他人に言いたいものではありません。

しかし、ここでFukaseが出した「繁殖する理由」は、「“人類”が死なないため」ではないかというひとつの疑問でした。

紀元後2,000年以上経つ現代ですが、これまでずっと人類は、“人類”が死なないために命のサイクルを回してきたのでは……という疑念です。

自分はそのパーツのひとつに過ぎず、喜怒哀楽を持っていることに意味はあるのだろうか?と問いかけています。

美しく廻る永久の「命のサイクル」
ぐるぐるぐるぐる廻り永遠に繰り返していく
美しく廻る永久の「命のサイクル」
ぐるぐるぐるぐる廻り永遠に止めてはならない

出典: 生物学的幻想曲/作詞:深瀬慧 作曲:深瀬慧

すぐにサビになります。

意味もなく廻り続ける「命のサイクル」を、敢えて「美しく廻る」と皮肉っていますね。

たとえ自分の時代が終わっても、永遠に繰り返されていくであろう「命のサイクル」。

それを“永遠に止めてはならない”と歌います。

「ぐるぐる」の数は、本当はまだまだ足りないのでしょう。

ただ永遠に分裂を繰り返すアメーバに産まれた意味や
生きてる意味はあるの?
ただ永遠に繁殖を繰り返す人類の中で僕は僕で
ある必要はあったの?

出典: 生物学的幻想曲/作詞:深瀬慧 作曲:深瀬慧

人間はまるで、自分たちだけは他の動植物と違って、非常に高等な生物であると思い込んでいます。

だからこそ、アメーバには産まれた意味があるのだろうかと思うでしょう。

分裂で増えていき、他に何をするでもないように見えるアメーバ。

確かに、何のために産まれて生きているのかわからない、価値などない、と言う人もいるでしょう。

しかしそこでFukaseは問います。

それならば、“僕は僕である必要はあったの?”と。

それは同時に、“あなたはあなたである必要があったの?”ということであり、“僕(あなた)とアメーバの何が違うの?”と言われているようにも感じます。

そしてまたサビを挟むうちに、少し意識が変わってきます。

僕はいつか自分も「意味など存在しない」
大きなサイクルの中にいると解るんだろう
そしたらやっぱり僕も子供を授かって
「命のサイクル」の中で美しく廻ってみよう

出典: 生物学的幻想曲/作詞:深瀬慧 作曲:深瀬慧

恐ろしいことに、毒されてしまいました。

諦めた、とも言えるかも知れません。

ずっと考えていた大きな命のサイクルに、“意味など存在しない”と悟った時、考えることをやめてしまうのではないでしょうか?

それならいっそ、皆と同じようにその「命のサイクル」の中に入ってしまおう。

そして美しく廻るのです。

ぐるぐるぐるぐる、永遠に、永遠に……。

実はホラー的な

共感は得られなくても