そもそもの事のはじまり
映画ができるまで
作家の伊坂幸太郎は会社勤めをしながら小説を書いていた際、通勤中にこの曲を聴いて退職を決意、執筆活動に専念することにしたと語っている。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/幸福な朝食_退屈な夕食
小説家でヒット作を次々連発し、映画になった作品も多い伊坂幸太郎。
作品の舞台が、だいたい仙台市に設定されていることでも有名です。
そんな伊坂は、斉藤和義の大ファンでした。
そんな2人がある日出会い、斉藤から伊坂に、歌詞を書いてくれないかとオファーが出されます。
伊坂は短編「アイネクライネ」を書き下ろし、それを斉藤が歌に仕上げます。
「アイネ~」はモーツアルトのセレナーデ曲のタイトル、ドイツ語の意味は「小さな夜の曲(小夜曲)」。
今度は映画化の話が起り、今泉力哉監督が担当。
三浦春馬、多部未華子主演で撮影が進み、2019年秋公開されました。
映画についての情報は、映画公式サイトをご覧ください。
主演:三浦春馬/原作:伊坂幸太郎/監督:今泉力哉、映画『アイネクライネナハトムジーク』9月20日(金)全国ロードショー/9月13日(金)宮城県先行ロードショー
さらにコミックも
映画公開にすこし先がけて、小説は、人気作の多い少女漫画家いくえみ綾によって漫画化され出版。
こうして小説のテーマでもある、『小さなつながり』から、一大コラボ作品群が出現したのです。
その作品群のなかに、斉藤和義の「ベリー ベリー ストロング」が位置しています。
この、やたらにこんがらがった、幸福な奇跡の1パーツとして、「ベリー ベリー ストロング」はあるのです。
歌、そしてその元になった小説の主題は、「つながり」というものです。
そしてこの企画の拡大の仕方全体が、つながりということを、実際に体現したものになっている。
まずその面白さがあります。
そして小説を下敷きにした歌詞の展開も、実に面白みがありますので、さあご覧ください!
それでは歌を
駅前でアンケート調査 なんで俺ばっかこんな目に
バインダーなんか首から下げ 誰からも目をそらされ
出典: ベリー ベリー ストロング/作詞:斉藤和義 作曲:斉藤和義
ほとんど小説と映画の筋書きそのままに話ははじまります。
リサーチ会社の若手社員の僕が、仙台駅前で街頭アンケートをとっています。
声を掛けても掛けても素通り。
いい加減げんなりしてきます。
何しろみじめな気分。
人からあからさまに無視される仕事の代表例なわけですから、世界のつれなさを恨みたくもなります。
ビルの壁ではタイトルマッチ 日本人初のヘビー級
背広姿がシャドウボクシング 女子高生はそいつを写メ
出典: ベリー ベリー ストロング/作詞:斉藤和義 作曲:斉藤和義
さてここで唐突に、ボクサーの話が出てきます。
日本で初めての、ヘビー級ボクサーのタイトルマッチとは悪い偶然。
僕がアンケート収集中なのに、仙台駅前のビルの壁の大スクリーンで生中継中です。
向こう側では、人だかりもしています。
みすぼらしく相手にされない「僕」と好対照です。
出会いはあの人にもあって 一緒になったんだろうな
どんな出会いだったのか?なぜだか妙に気になった
まるで進まないアンケート 自信喪失へこんじゃうよ
そんなふうにさけないで
出典: ベリー ベリー ストロング/作詞:斉藤和義 作曲:斉藤和義
街頭アンケートぐらい人を不安にさせるものはありません。
なんで人はこんなにも冷たいのだろう、そう思います。
みんなボクシングに夢中のようです。
すると僕は宙ぶらりんの時間の中で、勝手なことを考え始めます。
会社で世話になっている先輩は、奥さんとどうやって出会ったのだろう...?
ベリーベリーストロング いつか誰かが言ってた
ベリーベリーストロング 強い絆の話だよ
ベリーベリーストロング ああ つながってる誰かと
ベリーベリーストロング いつ どこで出会う
出典: ベリー ベリー ストロング/作詞:斉藤和義 作曲:斉藤和義
これはつながりの話なんです。
と言われても、この時点では何のことかわかりません。
タイトルのストロングは、いくつもの言葉に係っています。
ここでは強い「人と人との紐帯」の意味です。
街角に立って誰が答えてくれるともわからないアンケートを、頼りない気持ちで集めている僕。
どこかにこの世界のバラバラ感とは別の、『不思議な強い絆』が存在しているような気がしてきます。
空いた時間僕の考えは遠くに飛んでしまします。
僕はまだ、そのつながりを知らないのです。
それって、どんなつながりなんでしょうか?