「傷」とは?

ねえ そんな貴方を愛した
死ねない程 愛した
戻れないよ もう遅いから
痛みも忘れてしまうものなら
消えない傷 付けていいかな

出典: 作詞:堀江晶太、luz 作曲:堀江晶太

苦しい状況でも主人公は愛を貫き通したようです。

人は生きることが辛いと感じたとき、生きることを放棄するために「死にたい」と願うことがあります。

しかし、主人公は「貴方」をあまりに愛しているがために、辛くても死ぬことができないのです。

だって死んでしまえば二度と「貴方」と会えないから。

まさに生き地獄を味わっているような状態ですね。

そして後半のフレーズでは「痛み」や「傷」といった言葉が出てきました。

これはどんな意味合いなのでしょう?

おそらく「貴方」に深い心の傷を負わせることで、ずっと自分のことを覚えさせたい。

そんな心情だと思います。

主人公はトラウマになるほど心に傷を負い、この先も「貴方」を思い出し続けることでしょう。

でもそれに比べ、「貴方」は平然としている。

そんな状況に耐えられず「貴方」に治すことのできない傷をつけたいと考えたのです。

渦巻く嫉妬心が向かう先

教えてくれよ 一体幾つの愛を持って
いま僕に触れているの?
でもね 居なくならないよ
もしも望まれたって 消えやしない
消せやしない

出典: 作詞:堀江晶太、luz 作曲:堀江晶太

他に相手がいることは察しているけど、その全貌は掴めない状況…。

どんどんと悪い方向へと思考が進み情緒不安定になってきました。

「いつ自分が捨てられるか分からない。」

でも、それでもいいといっています。

もし今後会えなくなったとしても、離れ離れになったとしても…。

これから「貴方」へ刻む傷は永遠と自分の存在を思い起こさせる。

深い愛情は狂気じみた願望へと開花しました。

主人公は自分が負ったのと同じ痛みや傷を、相手にも刻みたいのです。

そうすることで、彼の中の絶望感が救われるのでしょう。

「貴方」との関係性

(Dearest, Dearest) ヒトはヒトの中に棲まうと
(Dearest, Dearest) 貴方が僕に教えた
(Dearest, Dearest) 喰らい貪るのが愛ならば
そうして ねえ愛して
二人朽ちるまで

出典: 作詞:堀江晶太、luz 作曲:堀江晶太

1行目は、依存関係を表現しているのでしょう。

貪(むさぼ)るように主人公の愛を喰い散らかした「貴方」。

主人公は心に深い傷を負って生きるエネルギーを奪い取られたような状態です。

そして、相手の心も同じように喰い散らかしてみせようといっています。

それはまさに「依存的」な関係性。

二度と離れない。

お互いに傷つけあう運命を辿りたい。

そんな歪んだ愛情が形成されていますね。

壊れた心が狂気じみていく

心が壊れ始める音

ねえ そんな貴方を愛した
死ねない程 愛した
許さないよ もっと欲しいから
いっそ壊れてしまえば いいのにね
傍にずっと居られるから

出典: 作詞:堀江晶太、luz 作曲:堀江晶太

深く深く愛に堕ちた主人公は、もう相手を逃がすつもりはありません。

道連れにするつもりです。

愛情はさらに「狂気じみた」感情へと変化しつつあります。

「壊したい」という願望は「貴方の自由を奪って身動きを取れなくしたい」という意味合い。

自分の前から簡単にいなくなってしまいそうな「貴方」。

いっそ「貴方」の心を壊して自分無しでは生きていけない状態にしてしまいたい。

苦しい状況を無理に我慢した結果、思考が歪んできてしまったのでしょう。

正常な思考でいたら頭がパンクして自分が壊れてしまいます。

もう既に心が壊れ始めているのかもしれません。

もう手遅れ

(Dearest)もう離さない
何処へ行ったって
誰の腕に抱かれたって 待っているから
(Dearest)ねえ 貴方が 狂わせたんだ
溢れるほどの愛と憎で 塞いでやるから
こんな筈じゃなかったのにね 遅いよ

出典: 作詞:堀江晶太、luz 作曲:堀江晶太

「貴方」が他の誰かと関係を持つことさえ肯定していますね。

本当は胸が痛んで仕方がないはず。

でも、慢性的な痛みで麻痺した心は、その苦しみさえ物ともしなくなりました。

どうせもう自分の心はボロボロに壊れてしまった。

狂ってしまった。

もう取り返しがつかないところまで堕ちてしまった。

だからこそ、いっそのことどこまでも狂ってしまおうと開き直っているのです。

愛情は憎しみの裏返しといいます。

愛が深くなるほど胸の痛みはより激痛になり、憎しみを生みます。

本当は「貴方」を純粋に愛し抜きたかった主人公。

もう、心の中は歪んだ愛情と憎悪で染まってしまいました。

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