アーバンギャルド【ワンピース心中】歌詞の意味を徹底解釈!この恋に何を望む?ワンピースを着る理由とはの画像

あヽ何度でも何度でも間違える
何度でもわたしは間違える
そう何度でも何度でも恋してる
あなたの面影に恋してる

出典: ワンピース心中/作詞:松永天馬 作曲:浜崎容子

わたしは心中未遂であなただけを亡くしてしまう経験をしてもなお恋を探します。

この姿はまるで太宰治の人生そのもののようなでたらめさがあるのです。

恋によってひとりの人を亡くしてしまったことの重大さから目を逸らして様々に恋をします。

何度も失敗するのに、真剣に生きるとは何かについて分からないままに暮らしてしまうのです。

太宰治の文学には後世に遺るだけの才能があふれています。

一方でわたしはどうでしょうか。

わたしが人類にとって価値あるものを遺しているとはとてもいいがたいです。

しかし太宰治はその才能によって周囲に甘やかされ助けられすぎた点があるのも事実でしょう。

そもそも太宰治の最初の心中未遂で亡くなった田部シメ子。

このときの模様を太宰治は入水自殺とフィクションを交えて描いていますが服薬自殺です。

銀座のバー「ホリウッド」の女給で18歳の田部シメ子と鎌倉・腰越の海にてカルモチンで自殺を図る。だがシメ子だけ死亡し太宰は生き残る。この事件について太宰は『東京八景』『人間失格』などで入水自殺と書いているが、当時の新聞記事では催眠剤を飲み海岸で倒れているところを発見されたと報道されている。自殺幇助罪に問われるが、文治らの働きかけで起訴猶予処分となる

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/太宰治

太宰治との恋仲でワンピースを着ていた可能性が一番高いのはこの女性でしょう。

松永天馬は入水未遂であなた、つまり太宰治だけを死なせました。

この構想の源はおそらく太宰治の最初の心中で相手の女性だけを死なせてしまったことにあります。

松永天馬はこんな大きな事件があってもまだ恋愛体質を改善できなかった太宰治に復讐したのです。

本当は怖ろしい「ワンピース心中」の最奥の謎はこれでしょう。

なぜわたしは死んでいるのか

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もう一度もう一度会いたくて
もう一度もう一度ワンピース
着てみたの 生きてるの 死んでるの

出典: ワンピース心中/作詞:松永天馬 作曲:浜崎容子

最後の死んでいるという設定を敷衍するならば田部シメ子の亡霊こそがわたしの正体です。

神格化されて免罪される太宰治についてポップにその神秘化のベールを剥がしました。

田部シメ子の死というものは、そもそも太宰治の計画殺人ではないかという疑いさえ持たれています。

死ぬ間際に田部シメ子が叫んだ男性の名前は太宰のものではなかったとも伝えられるのです。

そうなると銀座のバーの女給をめぐる男女の様々な愛憎劇が見えてくるでしょう。

ワンピースにこだわるわたしはもっと恋がしたかったのです。

しかし太宰治によってその人生を若いうちに閉ざされてしまいました。

田部シメ子の亡霊は山崎富栄となってもう一度太宰治と出会ったという解釈も可能です。

今度はきちんと玉川上水で心中を完遂させてふたりともあちらの世界へ旅立ちました。

歌詞の最後のラインにわたしは死んでいることの告白があること。

この設定は様々な解釈を可能にさせるものです。

ワンピースというものの華やかさとポップさで目がくらんでしまいます。

しかし心中というものがどこまでも歌詞についてまわるのです。

怖ろしい解釈ばかりが渦巻くちょっとしたホラーのような歌詞でしょう。

太宰治はその死の間際に山崎富栄の狂気に気圧されて抵抗したという説もあります。

彼は最後になって生への執着を思い出したのではないかという考察です。

いや太宰治はそのときもう致死状態であったという説もあります。

山崎富栄は致死状態の太宰治を水に引き入れるだけだったという説です。

ここではもう山崎富栄の太宰治と心中して添い遂げたいという思いがクローズアップされます。

数々の女性を狂わせてきた太宰治も女性の狂気が上回った果てに生命を落としたのでしょう。

ワンピース心中

このような恋愛を推奨する歌ではありません。

むしろ生命の軽視というものを戯画化して私たちに伝えます。

太宰治が入水自殺をした玉川上水は当然に庶民の飲水の源でした。

玉川上水の畔の道に「桜桃通り」と名付けた国語教育学の太田正夫氏もそのことを赦してはいません。

庶民の飲む水に身を投げて汚すとは何ごとかという憤りを覚えたのです。

他者を顧みる力というものが本当にあったのかという根源的な指摘でしょう。

しかしこの国語教育学の権威も太宰治の文学の素晴らしさには疑問を挟みません

「ワンピース心中」は罪多き文人の評価というものについて色々と考えさせられました。

しかし太宰治が描いた様々な恋の風景・叙景に魅力がなかったらこの曲は生まれもしません。

恋というものの罪深さについてこれほど深く考えさせられることは中々ないでしょう。

アーバンギャルドの起こした奇跡に感謝したいです。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

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電気グルーヴについて存分に語ります。グループの結成30周年は波乱に満ちた年になりました。後世に遺す記事ですから「事件」への言及は少なめにします。30年の歴史へ敬意を表しながらおすすめ人気曲を10曲選びました。ご賞味ください。

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