Witch hazel
1993年に発売された槇原敬之さんの4枚目のアルバム「SELF PORTRAIT」。
その中に収録されているこの楽曲「Witch Hazel」。
爽やかなメロディでありながら、どこか切ない歌詞です。
このタイトルにもなっている「Witch hazel」。
アメリカンマンサクという植物を表す言葉です。
「Witch」という言葉からも、日本での花言葉は「呪文」「魔力」。
しかし海外では、マンサクの木には神秘的な力が宿ると考えられているそうです。
ドイツやフランスでは「あなたは私を愛している」という花言葉があるとされています。
この花言葉はこの曲の歌詞に関わっているのでしょうか。
それではこの曲の歌詞を解説していきます。
学生時代の夏
ある覚悟
恋と呼ぶにはさよならを聞くことを
覚悟していた僕らだった
夏休み中のKISSの数が一番
たくさんあったそう覚えてる
出典: Witch hazel/作詞:槇原敬之 作曲:槇原敬之
3行目の「夏休み中」という言葉から、おそらく主人公は学生であると推測されます。
大学生くらいでしょう。
歌詞の1行目、2行目から主人公は上手くはいかない恋をしていることが伝わってくると思います。
しかし3行目、4行目からは、2人がとても愛しあっていたことがわかるのではないでしょうか。
「恋」というとあまり別れることは意識しないもの。
とてもドキドキして、むしろその時のことしか考えられないほど、夢中になるはずです。
しかし、もう別れることを覚悟しているというのは、あまり幸せとは言えない恋をしているのです。
ひと夏の恋といったところでしょうか。
とにかく「終わりが見える恋」をしていたのです。
夏の思い出
僕の肌がだんだん焼けてくのを
おもしろそうに見ていたよね
仲間からぬけ出して
借りたオープンカー
カーブ切るたび
髪が肩にあたった
出典: Witch hazel/作詞:槇原敬之 作曲:槇原敬之
肌が焼ける様子を楽しそうに見ていたことから、仲の良さそうな様子が伝わってきます。
「だんだん」という言葉からも、長い間一緒にいたことが推測されます。
車を借りて2人でドライブ。
5行目や6行目から、彼女を助手席に座らせていることがわかります。
カーブで彼女の身体が運転する自分の身体に当たる距離。
とても近い距離だと感じるのではないでしょうか。
この距離感の近さが、2人の心理的な距離も表していると考えます。
とても近い距離感が許される間柄の2人なのです。
この描写によってとても2人の幸せそうな様子が伝わってきます。
伝えられない思い
君が困る理由
本気で好きになったみたい
そう言えば君が
肩をすくめ困るのが
少し怖かった
例えばいつか誰かと
恋におちても君を
思い出すのが
少し怖かった
出典: Witch hazel/作詞:槇原敬之 作曲:槇原敬之
ここまでとても距離感の近い2人であることがわかりました。
しかし、彼女に告白するとなると、彼女は困ってしまう。
今までの仲の良さが覆されるような描写です。
1行目の「本気で」という言葉。
この言葉によって、今までは本気ではなかったということが理解できるのではないでしょうか。
つまり、今までは遊びの恋。
友達以上恋人未満のような関係性ではありながら、本気で恋人になろうとは思っていない。
自分だけでなく、相手も遊びの恋だと思っていたのです。
お互い遊びだと思っていたのに、1人は本気の恋であることに気がついてしまった。
相手が困ってしまう気持ちもわかるのではないでしょうか。
だからこそ、告白をする気にはなれないのです。
彼女を困らせ、確実に振られてしまう未来が見えていたのです。
困らせてしまった彼女の顔は、おそらくこれからずっと主人公の頭の中から消えないでしょう。
本気で好きな相手の困った顔は忘れられません。
そして自分と相手の想いがイコールではないことの表れでもあります。
その辛さを、彼女の顔を思い出すたびに思ってしまうのです。
これから恋をするたびにその顔を思い出してしまうことは、耐えられないのではないでしょうか。
その困った顔やすれ違った思いを思い出してしまうこと、それが怖かったのです。
だから本当の気持ちを伝えることができなかったのです。
もう彼女はいない
折ったままのチノのすそかくれてた
あの海辺の砂こぼれおちる
君がふざけて僕を押したひょうしに
ころんだ空はこの街にない
出典: Witch hazel/作詞:槇原敬之 作曲:槇原敬之