君がいなくても春は来て
朝のバスにせわしく乗り込むよ
窓越しに見えたさくらは
あっけないほどきれいだった

さびしさなんて 気づかないまま
消えてくれたらいいのにな
強がりもうまくこなせない
僕はそれでも 生きたい

出典: TSUZUKU/作詞:水野良樹 作曲:水野良樹

ここから「いなくなった後」の日常風景を描かれていきます。

大切な人を失った後、自分の中で時が止まっている

なのに周りは変わりなく動いていくという体験を耳にしたことのある人はいるでしょう。

歌の主人公は決して強い人間ではなく、歌の中でその気持ちを赤裸々に語ります。

朝は忙しく、寂しい想いをしたくない人にとっては都合が良いかもしれません。

それでもふとした瞬間に思い出してしまうのです。

分かっているよ

歌詞はせつなく、心にぽっかりと穴が空いてしまった様子が滲み出ていますね。

聴きながら泣いてしまいたい気持ちになるかもしれません。

しかし「いきものがかり」が歌うと気持ちが沈み込まないのは不思議です。

明るい曲調で希望を捨てず寄り添うように歌っていきます。

決して「思い出を乗り越えて強くなれ!」と第三者の視点で諭すのではありません。

まるで「分かっているよ」と弱さも強がりも全てを包み込んでくれるような歌声です。

心の奥底で

うれしい 涙で
空がにじむまで
ちゃんと進むから
どこかで 笑っていて

出典: TSUZUKU/作詞:水野良樹 作曲:水野良樹

別れの言葉を繰り返して優しく思い出を噛み締めていきます。

ここでは最後の行にあるように、冒頭と同じ構成。

ただし最初と大きく異なるのは裏にある楽器が奏でる音楽です。

1回目は和音が落ち着くことなく音楽が止まりますが、ここでは音楽は歌より一足先に新しいフレーズへ。

気持ちの整理がつき、決心が形となってようやく歩み出したかのように感じられます。

大切な人がいなくなった後、取り残されるのはいつでも自分。

そして未来があり歩み始めるのも自分なのです。

思い出を忘れることなく、一緒に生きていくという前向きな気持ちが表れています。

小さな行動

かっこわるいことばかりさ
君に伝えた夢も かなえてない
笑顔になるのはまだだな
道を小さく蹴り上げた

時は流れて 街も変わって
僕なりに今日を暮らして
やかましい 君の笑い声
聴こえないけれど 生きたい

出典: TSUZUKU/作詞:水野良樹 作曲:水野良樹

春に桜を見て思い出の中で生きていた頃とは違う描写がされていることに気付くでしょうか。

今の自分を見つめながら「君」と共に生きていることが分かります。

夢というこれから先の未来を見据えている様子が見てとれるでしょう。

よく出来た人間というわけでもなく、あれから何も成長出来ていないけれども行動をしようとする気持ち。

今まで周りの変化を見ていたり物思いに耽っていましたが、4行目は自分で起こしたアクションです。

この行動で何か変わるわけではありません。

それでも身の回りや目の前の世界にフォーカスしていくことが出来るようになったのです。

完璧に前を向くことはまだ出来ていないけれども少しずつ変化が起こっています。

希望の灯

本当の気持ち

泣いても 泣いても
せつなさのなかに
さがしてしまうよ
ちっぽけな 望みを

だからね この手は
弱いままだけど
くじけたりもしない
あきらめは 悪くていい

出典: TSUZUKU/作詞:水野良樹 作曲:水野良樹

この部分は他とは一味違った角度からも考えることが出来ます。

これまでは遠くへ行ってしまった存在に対して想いを馳せるという内容でした。

一方ここでは自分のみに焦点を当てた状況でもあるのです。

例えば、少し重い話にはなりますが人生について考えてみましょう。

就職活動や受験に失敗、または借金地獄になってしまい生きる楽しさも見い出せないとき。

「逃げたい」「いっそのこと全て諦めて楽になれたら」とマイナス方向に考えてしまうこともあるでしょう。

それでも人は誰かと寄り添って生きたい、悩みを相談したい、苦しさを分かち合いたいと思うものです。

周りに助けを求めたりインターネットで検索したりして抜け出す方法を模索します。

どん底にいても心の奥底では希望を求めているはずです。

未来のレールは無限大