魔法少女は操り人形でしょ

アーバンギャルド【魔法少女と呼ばないで】歌詞の意味を独自考察!復讐されるのは私?タイトルの真意に迫るの画像

魔法少女は マリオネット
魔女狩りつづく夜に
変わってくからだ傷つけてくの
魔法少女は マリッジブルー
世界と結ばれても
変われなくてヴァイオリンを弾くの

出典: 魔法少女と呼ばないで/作詞:松永天馬 作曲:松永天馬

魔法少女とは要するに操り人形だと断言してしまいます。

手厳しい批判ですが自分というものをしっかり持っている女性はそもそも魔法少女ではありません。

「魔法少女と呼ばないで」はここからクライマックスに向かってさらに怖くなります。

まず魔法少女は魔女狩りによって追い立てられるという表現をするのです。

これは魔法少女が社会的に排斥されるということではないでしょう。

というのも魔法少女が多い方が経済は好調に循環すると広告業界は見込んでいるからです。

むしろ魔法少女は自然現象によって狩られてしまうのでしょう。

ときとともに年齢を重ねるという自然なことが魔法少女に老いという現実を見せつけます。

老いとともに変わり果ててゆく身体や表情というもの。

誰にでもいつの日か訪れる老化現象そのものが魔女狩りを企てる主体です。

いつの日か結婚して家庭を持つようになるでしょう。

そろそろすっきり魔法少女を卒業できる人もいるはずです。

しかし「ドラえもん」の中のしずかちゃんの印象のままにヴァイオリンを弾き続ける人もいます。

こじらせてしまった魔法少女の行く末は非常に暗いものです。

さあ、いよいよ「魔法少女と呼ばないで」のクライマックスになります。

松永天馬は魔法少女にどんな結末を用意したのでしょうか。

ディストピアの先に訪れるものは

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絶望という魔法捨てたら
希望という嘘をついてもいいかな

魔法少女と呼ばれたあの娘
まがいもののくちづけ
かわいくなってわたしに復讐するの
魔法少女と呼ばれたあの娘
まがいものの恋して
醜くなっていつか復讐されるまで

かわいくなるの かわいくなったら
ハートマークのバレットで撃ちぬいて

出典: 魔法少女と呼ばないで/作詞:松永天馬 作曲:松永天馬

クライマックスの歌詞になります。

歳を重ねて希望など嘘だと分かっても受け入れたくなる心境の変化が描かれるのです。

魔法少女は不本意ながらも成長してしまいました。

成長してしまうともちろん少女ではいられなくなります。

その代わりに新しい魔法少女は毎日生まれているのです。

そして魔法少女は毎日再生産されます。

このサイクルに終りがくる日が訪れるでしょうか。

日本社会自体の成熟の果てにこうした日も訪れるはずです。

しかし「魔法少女と呼ばないで」から数年を経ても現状に変わりはないでしょう。

むしろ事態はより過酷になっていると思わされます。

かつての魔法少女は新参の魔法少女によって復讐されてしまうのです。

しかしその新参の魔法少女もいつの日かより新しい魔法少女に可愛さで負けるでしょう。

結果的には誰も得しないサイクルができあがってしまいました。

これが日本社会のあるがままの姿でもあります。

老いというものをポジティブなものと捉えられない精神的な未熟さが背景になっているのです。

容易には解決できない問題に目を付けたアーバンギャルドが素晴らしい。

「魔法少女と呼ばないで」というタイトルはかつての大映ドラマ「不良少女とよばれて」のパロディ。

大映ドラマというものに馴染みがない若いリスナーが多いでしょう。

大袈裟な演出が売りで「昭和」な味わいがする大映テレビ制作のドラマのことです。

「魔法少女と呼ばないで」は戦場の描写など大袈裟な表現を引き継いでいます。

いつか誰しもが魔法少女でいられなくなるという単純な事実も表現しているのでしょう。

最後のラインはコインではなくハートマークの弾薬で撃ち抜いてと歌います。

ハートマークの意匠は様々なところで目にするものです。

ここにもkawaiiへのこだわりがあるのですから異様な現象でしょう。

かつて侘び寂びというものを至高の価値と考えた日本文化がこのように変化しました。

欧米化と資本主義社会への変化の果てにここまで捻じくれたのですからびっくりします。

「魔法少女と呼ばないで」はこうした現状の異様さをディストピアの中で表現しました。

しかし最後のラインは甘いポップ固有の表現でまとめてくれます。

しかしこの文言をそのまま受け止める訳にはいかないでしょう。

むしろ普通に使っているハートマークもちょっと異様だという含みがあるのかもしれません。

自然現象の老いというものを素直に受け入れられない魔法少女。

しかし否応なく老いによって復讐されてしまうわたしの姿から学べることは何なのか。

いままで疑問に思わなかった広告や情報に疑いを持てるようになったらチャンスでしょう。

可愛い少女を否定するものではないのです。

いつまでも美しさの価値基準をアップデートできない生き方への疑問が突き付けられています。

アーバンギャルドが数年前に描いたものがいまなお有効なのは一面では不幸なことでしょう。

成熟した社会って何だろう、大人になり老いることに積極的な意義を見出したい。

様々なことを考えさせられた楽曲が「魔法少女と呼ばないで」です。

少なくとも暮らしの中からまがいものを失くしたいと思うでしょう。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

OTOKAKEとガール文化の元祖

OTOKAKEにはガール文化に関する記事が星の数ほどたくさんあります。

その中でも日本社会にも影響を与えたアメリカのポップソングの記事をご紹介しましょう。

マテリアル・ガール

資本主義への分析とガール文化の関連を描いたマドンナの名曲です。

批評眼のようなものはアーバンギャルドと通じます。

渾身の記事ですのでぜひご覧ください。

1984年に発表されたマドンナの初期の名曲「マテリアル・ガール」。今でもマドンナのステージで歌われる名曲です。この曲を理解するには「マテリアル」という言葉の解釈が鍵になります。歌詞を和訳して解説いたしましょう。

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