愛情を込めて悪態をつく!?
I’ve got something to say
To everybody, fuck you
It’s been on my mind
You know I meant it with love
出典: Same Thing(feat.Superorganism)/作詞:星野源、作曲:星野源
「みんなに言いたいことがあるんだ
クソッタレって言いたいんだ
ずっと考えてるんだ
でもそれ、愛を込めて言ってるんだ」
何を言い出すかと思えば、4文字のワードを言っています。
おげんさん、品が良くないですね。
でも心なしか、穏やかで楽しそうな口調の4文字ワードです。
なぜなら愛情を込めて言っているからです。
前章で述べたように、感情は相反する二面性を持っています。
愛する人に対してさえも憎いという感情を抱くことがあるものです。
ここでは「everybody」(みんな)といっているから、ひょっとすると社会や世界に対してかもしれません。
醜い出来事や事件が起こる世界…
でもちょっとはマシなことや、ステキなこともあります。
そんな世界に愛を込めて、「fuck you」といいたいのかもしれません。
初めての全編英語詞のサビの冒頭に、愛を込めたスラングを登場させてくる衝撃。
でもこの言葉が、リスナーに決してマイナスのイメージを与えるものではないというのは前述した通りです。
心地よいビートにのせたその言葉からは、むしろ開放感や自由を連想させる明るさがあるんです。
とりあえず、あれこれ考えずに音楽を楽しもうという心意気さえ感じられます。
何かからふっきれたかのような爽やかさを、この言葉で表現できる人は他にはいないのではないでしょうか。
日本語ではなく、英語詞だからこそ伝えられるニュアンスかもしれません。
ビートに乗せて体を揺らしながら聴いてほしい、この曲で一番のポイントになるサビの歌詞です。
新しい星野源さんの始まりを予感させます。
楽しい出来事もヒドい出来事も自分次第
I just thought it’d be fun
Went through a whole lot so fuck this
They all mean the same thing, you know
We alright, change it up, do your thing
出典: Same Thing(feat.Superorganism)/作詞:星野源、作曲:星野源
「きっと楽しいだろうなって思った
でもこんなの最悪と思ったこともあった
どっちだって同じことだよ
それでいいんだ、自分のやり方でいいんだ」
今度はなにかの行動とか、出来事についての二面性の話です。
どんな楽しいことでも、ちょっと嫌なことがあることがあります。
例えばこれが終わってしまうとか…
つらい仕事や勉強などをしているときでも、がんばれば楽しいことに変わるときもあります。
また、人によってはいろいろなことに向き合う熱量って違います。
がんばりすぎの人もいれば、いいかげんに向き合う人もいます。
人によって楽しさやつらさの度合いも違うものです。
でもそれでいいのかもしれません。
自分のやるべきことをやればそれでいい、ということなのだと思います。
サビ前半の歌詞で心を開放したあとに続くフレーズにはぐっとくるものがありますね。
普段の生活には必ず手ごたえがあるというわけではありません。
淡々と日々を送ることに、不安や達成感のなさを感じている方は多いかと思います。
目に見えて認められることがなくても、コツコツがんばっている自分を認めてあげたい。
そう思わせるエールソングのようにも聴こえてきます。
矛盾を“同じこと”として受け入れながら幸せを見いだす
過ちも愛情も両方あるから幸せといえる
Let’s be real for sec, I think you’ll relate, we feel down often too
Mistakes that were made, the love that we ate, they all share a lovey home
出典: Same Thing(feat.Superorganism)/作詞:星野源、作曲:星野源
「ちょっとだけ現実的になってみよう、きっと君にはわかると思う、
落ち込んじゃうときだってしょっちゅうある
犯してきた過ちと食べてきた愛、そのどっちもあるから素敵な家ができあがる」
現実的な話をちょっとしてみようといって、家庭の話に移ります。
もしかすると「home」というのは何かの例え話なのかもしれませんが、家庭での二面性について話しています。
ステキな家庭には過ちと愛の両方があるということです。
愛を食べてきた、というのは「狂ったように愛する」という意味だと思われます。
愛が強ければ強いほど、ちょっとした間違いも許せません。
相手に対して無関心であればどうでもいいわけですから。
ですから、その両方の気持ちがあってこそステキな家庭になるのです。
先ほども述べたように「家庭」というのは例え話かもしれず、何にでも当てはまる話かもしれません。
1番の歌詞とは少し違った抽象的なニュアンスで、楽曲の世界を伝える2番のAメロ。
ここからは、星野源さんではなく、オロノの落ち着いた歌声で始まります。
想像力をかきたてるこの歌詞を歌い上げるので、メッセージが耳にすっと入ってくるのが不思議です。
映画『ロスト・イン・トランスレーション』のカラオケ・シーン
Any who why don’t we just karaoke?
You’ll be Scarlett, I’m Bill
I wanna show you this really cool song, c’mon let’s fuck shit up
出典: Same Thing(feat.Superorganism)/作詞:星野源、作曲:星野源
「カラオケに行かない?
君はスカーレットで、僕はビルの役をやるよ
君にこのめちゃくちゃカッコいい曲を聴かせたいんだ、メチャクチャになっちゃおうよ」
いきなりカラオケの話になります。
これは、映画『ロスト・イン・トランスレーション』のカラオケのシーンのことを言っています。
スカーレット・ヨハンソンとビル・マーレイが出演しました。
東京を舞台に写真家の妻と俳優の心の交流を描いたスタイリッシュな映画です。
慣れない土地で東京の異文化に触れて戸惑いながら交流する様子が描かれています。
カラオケで、カッコいい曲を歌いまくるシーンがあります。
ロキシー・ミュージックの「More than This」、プリテンダーズ「Brass in Pocket」などです。
東京という土地で、外国のイケてる曲を歌って束の間の時を過ごす外国人たち…
星野源さんが海外アーティストとコラボしたこととオーバーラップしませんか?
楽曲の世界観を、実際にある映画の、しかもワンシーンを使って表現するセンスがすごいです。
映画を見たらきっとなにか行動を起こしたくなってしまいます。
この楽曲とこの映画には、おしゃれな雰囲気の中で感情の動きをフラットに伝えるという共通点があるのかもしれません。
日本的なもの“ワビサビ”と海外をごちゃ混ぜにして楽しもう
Wabi sabi
Make it messy
出典: Same Thing(feat.Superorganism)/作詞:星野源、作曲:星野源
「ワビサビ
メチャクチャにしちゃおうよ」
ワビサビとは、ご存じのとおり日本の「茶の湯」の風雅な精神のことです。
「messy」はメチャクチャということで、整然としていないことを表します。
日本的なものも外国的なものもごちゃ混ぜに共存して楽しもうよということではないでしょうか。
今星野源さんとSuperorganismがやっているこの活動がまさにこれを表しています。
「ワビサビ」という日本独特の精神もいい面がありつつ、ときにマイナスな面もあります。
でもそれも「同じこと」なのです。
頭で考えすぎずに身をまかせられる「音楽」という遊びを、純粋に楽しんでいいというメッセージとして受け取りたいですね。