「可愛い君を捕まえた」僕の心境
可愛い君を捕まえた
とっておきの嘘ふりまいて
寂しい僕に火をつけて
知らんぷり ハート型のライター
出典: スパイダー/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
サビは繰り返しなので、一旦後に回して、二番の歌詞を見ていきます。
ついに「可愛い君」を落とすことができた「僕」。
カッコつけていろんな嘘も言ったようですが、男性がプライドを保つための多少の嘘は恋愛につきものですよね。
孤独であまり人を好きになって来なかったであろう「僕」をこんなに好きにさせておいて、そっけない態度で自分のタバコに火をつける彼女ですが、そんな彼女が使っているのは「ハート型」のライターで、そっけないながらもデレの部分が出ている「君」にかなりやられている「僕」の姿が見られます。
「火」をつけるのは心とタバコ、「知らんぷり」の冷たい態度と裏腹な「ハート」型のライターが、自然な描写の中に恋の駆け引きの妙を捉えているすごい歌詞だと言えますね。
真っ逆さまに恋の夜に落ちていく
こがね色の坂道で 加速したら
二度と戻れないから
出典: スパイダー/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
こがね色の坂道ということは夕暮れの坂道。
大人になってからはすることがないかもしれませんが、学校帰り、夕暮れの坂道を自転車でスピード出すと止まれないですよね。
そんな風に、坂道で加速したように真っ逆さまに落ちていく、止まらない恋と、夕暮れの「こがね色」から走り続ければ夜になる、つまり、恋も、時間帯も進むことで、サビの「千の夜を越えて」に繋がっている歌詞なのです。
奪って逃げたいくらい君が好きだという思い
だからもっと遠くまで 君を奪って逃げる ラララ 千の夜を飛び越えて走り続ける
出典: スパイダー/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
「千の夜」とは、「千夜」という言葉で平安時代の和歌の頃から使われているたくさんの夜という意味です。
会えない時間は千という言葉で表現したくなるくらい長く感じるから、そんなもの飛び越えると言っているのです。
わかりやすく言うと、「千の夜を飛び越えて走り続ける」は千の夜を走り続けなくてはならないくらい大変でも、そんなものを走りながら飛び越えられるくらいずっと一緒にいたいという強い気持ちを歌っているのです。
だからもっと遠くまで君を奪って逃げる
力尽きたときは そのときで笑い飛ばしてよ
出典: スパイダー/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
君のためなら千の夜も越えられるなんてロマンチックな口説き文句ですが、そんなことを女の子に言ったらあまりの壮大さに、そんなに走ってきつくなったらどうするの?って聞かれても仕方ないですよね。
そこで、「笑い飛ばしてよ」と言う歌詞です。
この歌詞を誘拐ととらえると、「君」は「知らんぷり」してばかりの全くなびかない相手で、蜘蛛の糸で捕まえるように身動きできなくして手に入れると言う解釈になるのでしょうが、「笑い飛ばしてよ」と言う言葉の先には笑顔でいる彼女の姿が見える気がします。
つまり「奪って逃げる」と言う歌詞も、無抵抗な君をさらっていくのではなく、恋の駆け引きもあった上で、奪って逃げたいくらい君とずっと一緒にいたいということではないでしょうか。
ここまで、普通の恋の駆け引きの曲として解釈してきましたが、それには他の曲から考えられる根拠があるので、紹介したいと思います。
君を不幸にできるのは俺だけって言っちゃう俺様な恋愛ソングもスピッツのかっこよさ
君を不幸にできるのは
宇宙でただ一人だけ
出典: 8823/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
「君を不幸にできるのは宇宙でただ一人だけ」というこの歌詞はスピッツの「8823」という曲の一節です。
別にこの歌詞も「奪って逃げる」と同じで、本当に「不幸にできる」って言っているわけではありません。
少女漫画風にいえば「俺以外の男に泣かされてんじゃねーよ」という俺様風なセリフが浮かびますが、自分は絶対に不幸にしないと誓っているからこそ君を不幸にしていいのは「一人だけ」(自分だけ)と言っているのです。
また、「スパイダー」のカップリングとして収められている「恋は夕暮れ」にもこんな歌詞があります。
恋は迷わずに 飲む不幸の薬
恋はささやかな 悪魔への祈り
出典: 恋は夕暮れ/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
「不幸の薬」や「悪魔への祈り」のように、「スパイダー」でいうと僕と君の恋愛をまるで蜘蛛とお姫様の物語であるかのように書いたファンタジックなワードチョイスが見られます。
しかし、よく意味を考えると、「不幸の薬」は不幸になるとわかっていても迷わず落ちてしまうような恋や、「悪魔への祈り」は好きな人と結ばれるためなら友達が自分の好きな人と上手くいかないように祈ってしまうような恋など身近な恋をテーマにしている歌詞だとわかります。
また、「スパイダー」では一緒にいたい気持ちを「奪って逃げる」と表現したと解釈しましたが、スピッツの曲には直接的な言葉を使わずに好きな人に会いたい気持ちを歌った歌も多いです。
うめぼし食べたい
うめぼし食べたい僕は
今すぐ君に会いたい
出典: うめぼし/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗