「自分らしく」って何?

和久井映見や堤真一が出演していた「ピュア」というドラマの主題歌にもなりました。
200万枚以上を売り上げたメガヒットナンバーです。
歌詞に目を通すと、「あるがまま」とか、「自分らしさ」という言葉がよく出てきます。
この言葉には、これからわたしが書こうと思っていることとは少し違うのですが、ミュージシャンとして人気者になった彼らの葛藤も感じられます。
CDがよく売れる時代であったのはたしかですが、彼らは、CDを出せば必ず大ヒットするようなアーティストになっていました。
そんな中で、自分たちの本当に作りたい音楽と、人々から求められる音楽に、ズレを感じてきたのかもしれません。
CDのジャケットは、ボーカルの桜井和寿が舌を出しているもので、その舌には「NO NAME」と書かれています。
少しパンキッシュなこのジャケットから、どこか反抗的で投げやりな印象も受けます。
ですが、そういった彼らの心情を心に留めておきつつ、一旦それは置いといて、歌詞を見ていきましょう。
愛のメッセージとは?
君を受け止める
ちょっとぐらいの汚れ物ならば
残さずに全部食べてやる
Oh darlin 君は誰
真実を握りしめる
出典: 名もなき詩/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
冒頭から面白い表現の歌詞ですね。
君の過去のことは、よっぽどのことでなければ、全部受け止めてあげるよ。
君の真実を受け止めてあげるよ、というような意味だと思います。
ところで、「Oh darlin」というと、女性から男性への呼びかけだと思われがちです。
しかし、一般的には男女問わずに使われるらしいのですが、何故か日本では一方向な呼びかけになって根付いてしまったようです。
わたしは、ここでの歌詞は、男性から女性への呼びかけと解釈しました。
そして、次の「君は誰」という歌詞は、意味というよりは言葉遊び的な面が強い気がします。
「ダーリン」と「ダレ」で韻を踏んでいますね。
誰でも過去には、何か嫌なものを抱えているものです。
別れても、まだ好きな彼がいるのでしょうか。
辛い恋をして、もう恋はしたくないと思っているのかもしれません。
彼女の過去から目を背けず、全て受け入れる覚悟は出来ているのです。
それだけ強い愛ということでしょう。
君が僕を疑っているのなら
この喉を切ってくれてやる
Oh darlin 僕はノータリン
大切な物をあげる oh
出典: 名もなき詩/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
というわけで、「僕はノータリン」についても、言葉遊び的といえます。
「ダーリン」と「ノータリン」。
ちなみに、「ノータリン」は放送禁止用語らしく、当時は少し問題になったそうです。
さて、本題に戻って歌詞に目をやると、穏やかではない言葉が書かれています。
信用してくれないんだったら、死んでもいいよ、と歌われています。
「死んでやる!!」というような、冗談半分の脅しのような感じかもしれませんね。
そして、大切な物をあげてもいいよ、と歌われています。
「大切な物」とは何でしょうか?
人それぞれ思い浮かべるものは違うでしょうが、「愛」と解釈するのが一番わかりやすいと思います。
サラーッとした口調ですが、これも愛のメッセージと言えるのではないでしょうか。
彼女は彼の言葉を信じられずにいるのでしょうか。
言葉では何とでもいえる…。
そんな彼女に向かって、自分の命をかけてもいいというのです。
「愛」という解釈と共に、「命」をあげるとも捉えることが出来ます。
彼は命がけで愛を伝えようとしているのではないでしょうか。
この歌詞を聴くと、命よりも愛の方がずっと重いという方程式になっているのです。
不安定な世の名だけど一緒にいよう
苛立つような街並みに立ってたって
感情さえもリアルに持てなくなりそうだけど
出典: 名もなき詩/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
「感情さえもリアルに持てなくなる」というのは、どういう状態でしょうか。
自分の感情が本物かどうかわからなくなる、というような意味で解釈してみましょう。
一方、「苛立つような街並み」というのは、どういうことでしょう。
「街並み」は、社会であったり、世間であったりを表していると考えてみましょう。
すると、「ストレス社会」のような意味でとらえることができますし、次のAメロの歌詞にもつながります。
本来なら苛立ちをあらわにしてもいいような、職場だったり学校生活、もしくは家庭環境の中で、それに順応して生きている自分。
これが果たして本当の自分なのだろうか、自分らしく生きているのだろうか、というような葛藤を表しているのではないでしょうか。
多かれ少なかれ、誰もが持っている悩みだとも言えます。
こんな不調和な生活の中で
たまに情緒不安定になるんだろう?
でも darlin 共に悩んだり
生涯を君に捧ぐ
出典: 名もなき詩/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
再びAメロが歌われます。
歌詞の最初の2行は、上のBメロの解釈とつなげて考えると、言葉通りにとらえることができると思います。
そしてそれに続く2行、「共に悩んだり 生涯を君に捧ぐ」という部分。
プロポーズにも似た、愛のメッセージ。
「名もなき詩」の歌詞は、結局のところこの2行に集約されているように思えます。
上のAメロやBメロで書かれた「悩み」、そして、このさきの歌詞にもいろいろ「悩み」が書かれています。
それらの答えは全て、ここの2行にあるように思えます。
本曲は、自分の気持ちを伝えるだけの歌ではありません。
一緒に悩み、一緒に人生を歩んでいきたいという共存を求めている歌詞です。
好きだから一緒にいるのではなく、嫌いな部分も弱い部分も全て受け止めて一緒にいたいのです。
だからこそ自分の総てをかけて、愛を伝えているのではないでしょうか。
彼は自分だって完璧じゃないんだ、と告白しています。
本来なら好きな相手には格好のいい所を見せたいものですが、それでは偽りになってしまうのでしょう。
彼は偽りのない愛を捧げているのです。
一緒に乗り越えよう
あるがままの心で生きられぬ弱さを
誰かのせいにして過ごしている
知らぬ間に築いていた
自分らしさの檻の中で
もがいているなら
僕だってそうなんだ
出典: 名もなき詩/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿