主人公は自然と目で相手を追うようになっていました。

冒頭ではかなげな表情を見てしまった時におそらく恋に落ちていたのです。

激しい感情ではなく、波のように穏やかで静かな痛み。

わずかな変化でしたが、主人公は自分の恋心に気づいてしまいます。

「波」は『中学聖日記』で聖と昌の思い出の場所である海岸も連想させますね。

一番最後のフレーズは「教師にあるまじき、純愛」を抱いてしまった聖の心の叫びのようです。

気づいてしまった以上、無視できない恋心。

主人公の気持ちはどんなふうに変わっていくのでしょうか。

主人公はもう後戻りができないほどに、相手に対しての恋心が大きくなっているのを感じているのかもしれません。

好きな気持ちというのは、無意識に募っていくもの。

だからこそ気持ちを自覚した時には、恋をする前の気持ちに戻ろうとしてももう手遅れなのです。

「あなた」を想う気持ち

あなたを探してる
隠した瞳の奥で
誰にも見えぬように
行き場もなくて彷徨いながら

出典: プロローグ/作詞:Uru 作曲:Uru

恋心に気づいてしまってからは「あなた」を想うことを止められません。

「ここに彼がいないだろうか」とつい思ってしまうという意味ももちろんありますが…

「あの時も思えば彼のこんなところに惹かれていたな」

というふうに自分の記憶の中の「あなた」を思い返しているという意味も。

自分の気持ちがばれないように胸に秘めながら、ひっそりと彼を想っているんですね。

誰にも想いを打ち明けられずに、一人思い悩む主人公の姿が思い浮かびます。

自分の気持ちをひた隠しにするのは、それが許されないことだからなのでしょうか。

主人公は相談する相手がいないことで苦しんでいるのでしょう。

自分の気持ちに気付きながらもどうすればいいのか分からず、かといって誰に相談することもできない。

その状況に動揺しているのでしょう。

それでも「あなた」のことを気にしてしまうのは、それだけ相手に対しての気持ちが膨れ上がっている証拠です。

2人の思い出

あなたと見る世界は
いつでも綺麗だった
空には一つだけ
淡く光る 小さな星が
残ってる

出典: プロローグ/作詞:Uru 作曲:Uru

恋の魔法にかかった状態の主人公には、好きな相手と見る景色がどんなものでも美しく見えています。

2人で眺めていた夜空の光景を細かく覚えているほど、彼との思い出を大事なものだと感じているのでしょう。

また、「星」は2番の歌詞にも登場するキーワードでもあります。

それでは続けて2番の歌詞を見てみましょう。

主人公の恋はこの後、どのような展開を迎えるのでしょうか。

真っ赤に熟れた果実

振り回されているのにどんどん好きになっていく

求めては突き放す
読めない心
見つめられる程に
嘘がつけない

力なく点滅する
あの街灯を
見上げてた その横顔は
優しかった

出典: プロローグ/作詞:Uru 作曲:Uru

作中の昌は思春期だけあって、自分の気持ちをコントロールできません。

聖への恋心に戸惑って、驚くような行動に出ることもしばしば。

(突然のビンタには驚かされた視聴者も多いのでは。)

そんな彼の気持ちが理解できずに振り回される聖。

しかし、見つめられてしまうと、つい自分を全てさらけ出したくなってしまう…

昌という少年の不思議な魅力を良く表している歌詞だと思います。

何気ない風景に優しい視線を向ける「あなた」。

「街灯」はもしかしたら弱っている主人公自身を例えているのかもしれません。

感情のままに激しい行動を取ったかと思えば、優しい顔も見せる。

「こんな表情もするのか」

と、主人公はギャップにときめいているのでしょう。

本心の読めない相手に翻弄されながらも、その横顔に見惚れている主人公。

思わせぶりな態度に疲れながらも、自分の好きだという気持ちを再確認しているのだと考えられます。

しかし相手を想う気持ちは募っても、その気持ちを打ち明けられないから困っているのでしょう。

自分自身の心を騙そうとしても、どうしても相手のことが頭から離れない。

この恋心をどうすればいいのか分からず、かといって「あなた」のことを諦められるわけでもないのでしょう。

だから主人公は「あなた」に強く惹かれていることを受け入れ、自分の恋心と向き合おうとしているのではないでしょうか。

果実が意味するもの

破れそうに膨らんで
真赤に熟れた果実は
誰かの摘む手を待っている
ねえ、それは 私だった

出典: プロローグ/作詞:Uru 作曲:Uru

主人公は「あなた」が一方的にこちらを好きなだけだと思っていました。

しかし、自分も気づいていない内に強く「あなた」に惹かれていたのです。

胸のうちで密かに育てていた恋心はもう抑えきれないほどに成長しています。

恋心のたとえ方は「禁断の果実」であるリンゴを連想させます。

2人の恋が世間では「許されざるもの」であることを表しているのでしょう。

それを「摘む」ということは2人が完全に結ばれることを示しています。

主人公は今にも溢れてしまいそうなほど、「あなた」に対しての想いが募っていたのでしょう。

主人公は決して許されないと分かっていても、「あなた」と結ばれたいと願ってしまうのです。

何故なら、その気持ちを止められないほど「あなた」のことを愛しているから。

気が付かないうちに、主人公は「あなた」からの告白を待っているのでしょう。

この恋は報われないと知りながらも、主人公が心のどこかで期待しているのだということが感じられる歌詞です。

どうして二人出会ったの

プラトニックな「始まり」

あなたが溢れて行く
抑えた胸の数だけ
隠せない「始まり」を
次から次へ手の平に伝えていくよ

風は冷たいのに
染まった心は赤いままで
あなたに触れたいと思ってしまった
どうして二人出会ったの

出典: プロローグ/作詞:Uru 作曲:Uru

もう胸の中は彼のことでいっぱいで、抑え込むことが難しい状態に。

ここで、この曲は主人公が「自分の想いに気づくまで」の『プロローグ』を歌ったものと分かります。

想いは自分ではコントロールできないところまでふくれ上がり、体が勝手に動いてしまった…

主人公は衝動的に「あなた」に手で触れてしまったのではないでしょうか。

そして、「恋の始まり」を改めて自覚したのです。

「風」は世間から自分たちへの風当たりの強さを示しているのかも。

「赤」から連想されるのは「熱」。

心は「あなた」への気持ちで熱くなっているということを表しています。

自分たちの関係が、世の中に受け入れられないということは十分に理解していますが…

それでも触れ合いたいと思ってしまったんだと歌っているのです。

「いっそ出会わなければ良かったのに」

そんな主人公の苦しい気持ちが痛いほど伝わりますね。

「あなた」への気持ちを抑えきれなくなってしまった自分を非難しているようにも感じられる歌詞です。

自分の恋する気持ちを自覚してしまった主人公は、「あなた」を手放したくないと考えているのでしょう。

他の人たちから反対されようとも、もう後戻りできないところまで来てしまった。

主人公は「あなた」への恋心と、許されざる恋への罪悪感に挟まれているのでしょう。

どうすればいいのか分からず、出会ったことを後悔しているのです。