MVに登場する場所は、歌詞で歌われている「精神世界」を再現しているのではないかと推測できます。
カーテンを閉じるように、外の世界から遮断された心。
「心を閉ざしてしまった」ことが読み取れます。
薄暗い心に光が差すことはなく、ほんのり灯る照明のような「愛」にすがる他ない。
わずかな「愛」を必死に抱きしめている光景が想像できますね。
そして雑居ビルの間…狭い路地を通るとき、どんな気分になるでしょうか?
ごちゃごちゃとした薄暗い空間には「不安感」や「警戒心」が湧き上がる気がします。
この楽曲の主人公が歩む道は、この路地のような感覚なのかもしれません。
歌詞から読み取れる心の叫び
「偽り」とは?
どこにでもある 偽りの色彩
もう染み付き過ぎて
いつまでも 抜けない
どうしようもなく いびつな存在
狂ってるほど 僕には美しい
出典: 狂おしいほど僕には美しい/作詞:Michael Kaneko 作曲:Hiro-a-key
自分を偽って生きてきて、もう板についてやめられない。
そんな状況が読み取れます。
表面上は色彩豊かな明るい人柄に見えるけど、心の中は光が差さず退廃しているのでしょうか。
環境に対応するため、無理矢理頑張ることで「自分を偽ってしまう」ということがあります。
偽った自分が得たものは、本当の自分が得たいものとは違う…。
ここでは、無理を重ねた成れの果てが表現されているのだと思います。
「幸せ」を自ら遠ざける
愛しいモノほど 壊したくなる
醜いほどに 守りたくなる
一人でもいい 思い続けた
変わり始めた 月明かりの夜
誰かを好きになるなんて
馬鹿らし過ぎて 終わってる
裏切られるんだ
どうせ 僕は このまま
出典: 狂おしいほど僕には美しい/作詞:Michael Kaneko 作曲:Hiro-a-key
一般的な感覚だと「愛おしいものは抱きしめたい」と思い「醜いものを遠ざけたい」と思うはず。
ところがここではその逆を歌っています。
自ら幸せを遠ざけ、孤独を選んでいる生き様が想像できますね。
後半のフレーズではその真意が綴られています。
「裏切り」を恐れるあまり人間関係を遠ざけている…。
そう解釈できる気がします。
「愛おしい」からこそ「裏切られた」と感じると苦痛を感じる。
そもそも、親しくならなければ裏切られることはない。
そんな発想のもと、トラウマから逃げるように孤独を選んだのです。
「希望」を捨てた
もうたくさんなんだ
いつか見た 希望(ヒカリ)
追いかけてみて
慈しむんでしょう
もう歌えないと
言い出せない 怒り
狂おしいほど
僕には 愛おしい
出典: 狂おしいほど僕には美しい/作詞:Michael Kaneko 作曲:Hiro-a-key
ここでの「希望」は、過去の産物として歌われています。
いつしか「希望」を胸に期待することをやめ、冷たく凍り付いてしまった心…。
本心では明るい未来を求めているのでしょう。
でも、それを実現できない自分に憤りを感じています。
「愛おしい」「でも愛せない」「愛せない現状が憎い」。
そんな感情がグルグルと巡り、歌詞となって吐き出されているのではないでしょうか。
重たい体を引きずる
叶えられずに 散らかった夢
拾い集めて もう一度歩く
Just trying to put on a smile,
all of them could be fake
ややこしい人間 それでもいい
目を覚ましても 動けずに
起き上がるんだ 今すぐに
裏切ってやるんだ そうさ
僕は このまま
出典: 狂おしいほど僕には美しい/作詞:Michael Kaneko 作曲:Hiro-a-key
「希望」の先には「夢」という目標があります。
でも、先ほどのフレーズでは「希望」を持つことさえ諦めてしまったことが読み取れました。
その結果、もう叶うことはなくなった「夢」がゴミのように散乱している…。
ゴミに溢れた部屋の中で生活するような心の状態なのでしょう。
心配になってしまいますね。
「希望」を失い生きる意味を見いだせない主人公。
そのまま終わってしまう訳ではなく、後半では自分を奮い立たせています。
この現状を受け入れることが本望ではないようです。