完全生産限定シングル「夜天」収録曲
2021年1月27日に「女王蜂」より発売された、完全生産限定のニューシングル「夜天」。
発売の1週間前にYouTubeへアップされたMVでは「夜天(STARRY NIGHT)」という表題を掲げています。
明るくポップな曲調とは裏腹に、どことなくさみしさの漂う歌詞が印象的です。
楽曲名である「夜天」とは「夜の空」を意味します。
MVタイトルでのみ使用されている「STARRY NIGHT」は「満天の星空」を意味する言葉です。
どちらも夜をイメージしていることに変わりはないといえるでしょう。
今回は、「夜天」の歌詞に込められた意味を考えていきながら、MVにおける表現も併せて見ていきます。
リスナーに向けられたメッセージ性を徹底的に紐解いていきましょう。
思いとは何のためにあるのか
「夜天」の歌詞は人の心・人の思いをテーマにしています。
人間の心と夜の空はどのように繋がるのでしょうか。
現代だからこそ問われる、言葉と感情の意義
たとえば言葉の総てに力を失くしたとしても
誰かのことを思う心に嘘も偽りもなく
出典: 夜天/作詞:薔薇園アヴ 作曲:薔薇園アヴ
言葉が何の意味も持たなくなる世界を、想像したことはあるでしょうか。
突然突拍子もない想像だと思うかもしれません。
SNS文化が発達した現在、言葉の重みが薄くなったように感じる方も少なくないのではないでしょうか。
手軽な文字のやり取りは便利である反面、その価値自体が飽和してしまいます。
しかし、言葉を失ったとしても人の心や思いが変わってしまうことはありません。
言葉があるからではなく、感情があるからこそ、人々は相手を思いやることができます。
それを踏まえて考えるとこの歌詞は、自分の感情と向き合うことが大切だと訴えているメッセージに思えます。
縛られず、自由に
ひたむきな美しさは切なさや儚さを越えて
呆れるほどに高く深く さあ、どこへだってゆける
出典: 夜天/作詞:薔薇園アヴ 作曲:薔薇園アヴ
1行目にある「美しさ」とは、先述した「他の誰かのことを思う心」を指していると考えられます。
それが、切なさや儚さを越えて、自由に好きなところへ行くことができるのです。
誰かを思う心に際限はないということでしょう。
2行目前半の歌詞も、その心の在り方の可能性を表しているのではないでしょうか。
思いやりと苦悩
ジョークを考えるより茶化すことのほうが
とても楽なのにそれを選べないひとたち
思い詰めてしまった夜の果てわたしたちは出逢い
持ち寄る孤独は灯火のように、胸に宿る
出典: 夜天/作詞:薔薇園アヴ 作曲:薔薇園アヴ
「ジョーク」は人を笑わせるための話です。つまり相手を思いやった上での無害な行動を指します。
しかしこの後に続く「茶化す」というのは、相手の真面目な話をからかう行動です。
真面目な話をからかわれて、いい気分になる人はいません。
3行目は茶化すことよりもジョークを選び、苦悩するひとたちのことを指しているのでしょう。
相手のことを思いやるがあまり、考えすぎて思考に詰まってしまう状態です。
その果てに出会った人々は思いをより深く持っているために、孤独にならざるを得ない人たちだと考えられます。
人間という複雑性
季節たちよりも豊かで時計の針より確かな
かけがえのない何もかも総て そう、いつだって試されてる
深く隔てている悲しみに呑まれて
繋いだ手を弾く 痛みが走ってゆく
出典: 夜天/作詞:薔薇園アヴ 作曲:薔薇園アヴ
1行目から2行目前半もまた大切な誰かを想う「心」、ひいては主人公たちの感情でしょう。
感情とは複雑で、簡単にカテゴライズできるものではありません。
その反面、心に抱いた気持ちは確かに存在するものです。
だからこそ、逆にその思いを試され試練のような場面はたくさんあります。
喧嘩や離別など、人間関係の壁にぶち当たるたびに当人は悲しみに呑まれるでしょう。
意見の相違によって、一度繋がれた手が離れることだってあります。
そのたびに、悲しみよりも大きな痛みが襲ってくるのではないでしょうか。
しかしそうした経験があったとしても、人は生きていかなければなりません。