35thシングル「君は太陽」
完成までに4年を要した3DCGアニメ映画『ホッタラケの島 〜遥と魔法の鏡〜』主題歌
今回ご紹介する「君は太陽」は2009年にリリースされた35thシングルです。
この曲は、同年公開のCGアニメーション映画『ホッタラケの島 〜遥と魔法の鏡〜』の主題歌として起用されました。
『ホッタラケの島 ~遥と魔法の鏡~』は、フジテレビ開局50周年記念作品として企画された、3DCGアニメ映画です。
監督を務めたのは、佐藤信介。
佐藤監督は2011年、人気漫画作品を映画化した『GANTZ』シリーズや、有川浩の小説の実写化映画『図書館戦争』シリーズの監督としてよく知られているのではないでしょうか。
当時アニメ映画の主流であったピクサーやドリームワークスといった海外のアニメーション会社による3DCDアニメ史上に一石を投じるべく、日本のアニメスタジオ、プロダクションI.Gが制作。
プロダクションI.Gは日本が誇るトップクラスのアニメ制作会社です。
1997年のアニメ映画『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズをガイナックスと共同制作したことで、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
その他にも2008年の押井守監督の『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』などを手掛けています。
この『ホッタラケの島 〜遥と魔法の鏡〜』の制作にあたっては、従来の手法に頼らず、新しい表現を追求するためにソフトウェアの開発から着手することから始めました。
完成までは、実に4年を要したということ。
3DCGに対応しながらも、ピクサーやドリームワークスとは違う、日本ならではのセルタッチ、懐かしさを感じるような温かさを表現するのにかなりの時間を費やしたそうです。
様々な映画祭で受賞
国際的に高い評価を受けた作品
この『ホッタラケの島 〜遥と魔法の鏡〜』は、その甲斐あってか高く評価され、数々の映画賞で受賞しています。一部を挙げると、
- 第33回日本アカデミー賞:優秀アニメーション作品賞
- 第14回ファンタジア国際映画祭:特別賞
- 第9回映像技術賞:アニメ部門映像技術賞
- 第13回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門 審査委員会推薦作品賞
- 第14回ソウル国際マンガ・アニメーション映画祭:審査員特別賞
など、このほかにもいくつかの賞を受賞。
日本国内のみならず海外の賞も受賞しています。
3DCG分野で海外に大きく後れを取っていたといわれる日本のアニメーション技術がここまでできることを国際的に示し、高く評価されたことがよくわかりますね。
ちなみにこの映画のヒロイン、遥の声は女優の綾瀬はるかが担当していました。
映画の世界観にぴったりと監督も太鼓判!
大人になると忘れてしまいがちな、子供のころに持っていた大切だったもの。
そういったものを思い出させてくれるこの映画に、スピッツのこの「君は太陽」はぴったりでした。
佐藤監督も、映画のイメージにふさわしい曲だと語っていたそうです。
この上なく爽やかで、ちょっと切なく、瑞々しい。
スピッツの魅力満載の「君は太陽」は、まさにこの映画の世界観を表していたのではないでしょうか。
「君は太陽」の歌詞
ではここからは、「君は太陽」の歌詞の世界を見ていきましょう。
理想じゃなくたって、大丈夫
「あきらめた」 つぶやいてみるけど
あきらめられないことがあったり
訳を知って なるほどそうかそうか
少ない知恵しぼって 小さくまとめたり
でも 見すかされていたんだね
なぜか 君はくちびるをへの字にしてる
あふれ出しそうな よくわかんない気持ち
背中をぐっと押す手のひら
斜めった芝生を転がっていくのだ
止めたくない今の速度 ごめんなさい
理想の世界じゃないけど 大丈夫そうなんで
出典: 君は太陽/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
大人になるにつれて、諦めてしまうことはたくさん出てきます。
それは大切な人を守る為だったり、生きていく為だったりしますが、中には物分かりよく諦めきれない何かが、心のどこかに残っていたりします。
訳知り顔で納得したように、自分に思い込ませようとしたり。
そんな、何となくだましだまし生きている姿を見て、”君”は不機嫌になります。
そんなのはあなたらしくない、まるでそう言っているかのようです。
そういった、いろんな想いがあふれそうになっていたら、”君”がその背中を押すのです。
ぐっと、力強く。
一人ではできなかった、心の奥で眠っていた諦めきれない夢を起こしてくれた。
一度押されて勢いがついたら、もう止まりません。
急転直下、一気に状況は変わっていきます。
誰も、それを止めることはできません。誰に何と言われても。
全部のことがOKっていうわけじゃないけれど、とりあえずはいい感じに進んでいるから、大丈夫だと笑いながら。
渡れない 濁流を前にして
座って考えて闇にハマってる
愛は 固く閉じていたけど
太陽 君は輝いて僕を開く
こぼれ落ちそうな 美しくない涙
だけどキラッとなるシナリオ
想像上のヒレで泳いでいくのだ
ヒリリと痛い昔の傷 夢じゃない
明日憧れの岸に たどり着けるよ
出典: 君は太陽/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
困難なことを目の前にして、チャレンジもせずに理屈をこねるだけ。
知らず知らず愛するということについても、そんな風になっていたのでしょう。
そんな自分に、君は太陽のように温かさをくれた。
自分の中でぐるぐるしてるのが愛なんじゃなくて、ちゃんと相手に向かい合わなくちゃいけないって、気付かせてくれたのです。
ぶつかり合って、泣いてもいい。
映画のように美しくなくても、それぞれの持つ素晴らしさがあります。
”渡れない濁流”=困難を前にして佇んでいても仕方ないのです。
とにかく動いていかなければ。多少の擦り傷は負うかもしれないけれど。
そうしていれば、いつかは希望が見えてくるのです。