ずっと待ってた奇跡より
目の前の笑顔が正解だ
こんなことが奇跡なら
明日から地球大回転 大回転
出典: 七つの海よりキミの海/作詞:畑亜貴 作曲:神前暁
「七つの海よりキミの海」の歌詞でもっとも”エモい”感情を感じるパートがここです。
人はパートナーに対し「運命」や「奇跡」の出会いを求めてしまう傾向があります。
しかし本当の幸せはいつも目の前にある平穏な日常の中にあるのではないでしょうか?
小さな幸せを毎日少しずつ積み上げていくことが実りある人生。
天変地異のような「運命」や「奇跡」を待ち続けている間に小さな幸せを見逃すのは勿体ないです。
アニメ作品内で主人公のむろみさんは何百年も生き続けます。
長い人生の中で様々な恋愛(主に魚類ですが)を経験しますが運命の相手には出会えませんでした。
しかし向島くんとの何気ない日常を繰り返すことで真の幸せに気付いたのです。
なぜそれほど「タイヘン」なのか?
タイヘンだ タイヘンだ
もう一回言うぞタイヘンだ
斬新な遭遇は法螺吹き話でおしまい?
タイヘンだ タイヘンだ
人間はみんなタイヘンだ
超常な発見が無駄口話のなれあい?
出典: 七つの海よりキミの海/作詞:畑亜貴 作曲:神前暁
「アヴァンギャルド」と「ポップソング」を両立させた「七つの海よりキミの海」。
その完成度の高さこそ「大変だ!」と叫びたくなる事件ですが...。
他者が集い何気ない日常を共にすることって実はすごく大変なことなのではないでしょうか?
人類に争いが絶えないのはいつだって他者との違いを許容できないことが原因です。
宗教が違う、人種が違う、性別が違うということだけで人間は簡単に戦争を起こしてしまいます。
遥か昔から21世紀になってもこの構図は変化する兆しさえ見えません。
だから些細な日常の幸せに気付いてしまった上坂さんは「大変だ!」と声を上げるのです。
海上でスキップ、スキップ、ルン・ルン・ルン♪
今日も海はどんぶらこ 波チャプれ背びれパンパンパン
今日も海はどんぶらこ 波チャプれ尾っぽでパンパンパン
パン・パン・パン!
出典: 七つの海よりキミの海/作詞:畑亜貴 作曲:神前暁
普段と変わらず波しぶきを上げる海上。
これは私たち人類にとっての平穏な日常のメタ表現です。
何気ない日常の素晴らしさに気付いたとき私たちはどうするでしょう?
歌を歌ったり、スキップをしてみたり♪
そうして幸せを噛みしめるのでしょう。
人魚のむろみさんは背びれや尾っぽを海面に叩きつけることで幸せな気持ちを噛みしめるのです。
つまりこのパートの擬音は人類にとっての「ルン・ルン・ルン♪」と同一なのでしょう。
畑さんの作詞能力の高さに感服するばかりです。
そして上坂さんの声優として磨いてきたスキルにより心地よく発音される擬音。
見事にアイドルのコール&レスポンスとして成立しています。
かつてこのようなアイドル・コールが存在したでしょうか?
溢れ出す「キミが好き」という想い
瀬戸際ならば会いたくなるはず キ・マ・リ!
不吉な台詞あやうい告白ですね
瀬戸際だから恋しくなるのが オ・キ・テ!
どんな海よりキミだけ見ていたい
出典: 七つの海よりキミの海/作詞:畑亜貴 作曲:神前暁
「愛の告白」
その想いを告げることは2人の関係性に明らかな変化を生じさせます。
より親密になるか。もしくはそこで関係性が断絶してしまう可能性も秘めているのです。
椎名林檎さんは「愛の告白」を「呪いの呪文」と表現したことがあります。
しかし私たちの心の器は想い閉じ込めるにはあまりにも小さく脆弱です。
許容量限界を超えた想いは器から溢れ出してしまいます。
4行目のフレーズはまさしく溢れ出した恋する気持ちです。
タイミングを逃さないで!
大事なのは鮮度だよ
心から叫ぶあいらぶゆー
やっぱ男子も鮮度だし
西から東へ大接近 大接近
出典: 七つの海よりキミの海/作詞:畑亜貴 作曲:神前暁
気持ちを伝える上で大切なこと。
それはタイミングです。
しかし告白するのに最適なタイミングなど方程式で導き出せるものではありません。
思い立ったが吉日。
2人の距離が近づいた瞬間を逃していけませんね。
同時に畑さんの歌詞の面白いところは「鮮度」と「send(送る)」をかけていることでしょう。
さらに4行目のフレーズはロシア好きの上坂さんが歌うことで東西冷戦の終結さえ感じてしまいます。