「太陽の破片」は何と戦っている?
「尾崎豊」たる所以
「太陽の破片」は、1988年6月にリリースされた7枚目のシングルとなります。
アルバム、『街路樹』の先行シングルとしても話題になりました。
「尾崎」たる所以がヒシヒシと伝わる楽曲です。
なぜ戦うのか?向かう先にある太陽とは一体?
恋愛なのか社会がテーマ?「太陽の破片」を余すところなく考察します!
見えない敵
昨晩 眠れずに 失望と戦った
君が悲しく見える 街が悲しいから
出典: 太陽の破片/作詞:尾崎豊 作曲:尾崎豊
単純に一夜を切り取ったシーンではありません。
失意の淵で、見えない敵へと立ち向かっているのです。
ともすれば、自暴自棄にはまり込んでいるのかもしれません。
一体何と戦っているのでしょうか?
周りの存在すら見失っている、主人公。
誰も全てが信じられなくなっているのです。
唯一、大切な人でさえ疑う目で見てしまっているのでしょう。
止め処なく疑心暗鬼に陥ります。
見えるもの何もかもが薄暗く、荒廃した闇の中にいるようなのです。
世界が消えて無くなり、沈んでしまえばいいとさえ感じとれるイントロではないでしょうか。
生きていることさえ苦しく、ちょっと触れるだけで壊れてしまう有り様が垣間見えます。
孤独と葛藤する主人公
昨晩 一晩中 欲望と戦った
君を包むもの全てが 僕を壊すから
出典: 太陽の破片/作詞:尾崎豊 作曲:尾崎豊
大切な人への想いが、次第に増幅していく主人公。
おそらく、今は側に誰も居ないとも読み取れます。
孤独という暗闇の中。
一切姿の見えない影を、手探りで追いかけ続けているのでしょうか。
追えば追うほどズルズルと、虚無感という深みへと落ち込んでいくのです。
大切な人を想う気持ちが、拍車をかけ自分自身を破滅へと追い込んでしまいます。
本当は必要な存在だと分かっていたはずなのです。
戦わないと得られない真実とは?
その果てには、愛する人を突き放したのです。
失ってからはじめて気づかされる、「絶望感」。
何もかもから、自らを遠ざけようとする主人公。
自業自得ともいえる報いは、愛する人への懺悔ともいえるのです。
掴めない時間
すり変ってゆく現実との はざまに
描いた夢が 愛を傷つける
暮しはただ 街明りに照らされ
何を信じるの どこへ向かうの
僕の手も握らずに 消えるのは何故
出典: 太陽の破片/作詞:尾崎豊 作曲:尾崎豊
予想とは反し、刻々と時は流れていくのです。
「現実」をいつまでも受け入れられない、主人公。
愛する人と過ごした日々が、思いもかけず一転してしまったのです。
そのギャップに更なる戸惑いを憶えるのでしょう。
愛するがゆえ、それが足かせとなっているのかもしれません。
募る想いが独りでに、記憶を辿らせるのです。
さらに深く、光が届かない心の奥底へと塞ぎこんでしまう主人公。
孤独に耐える心の部屋には明かりが灯っていないのでしょう。
窓から射し込む灯りと、太陽の光だけが心のよりどころなのです。
自分の心にある閉ざされた部屋と同じだと、重ね合わせているのでしょう。
2人で歩むはずだったこの道。
今や行くあてがなく、全く先が見えない暗い夜道なのかもしれません。
離れ離れになってしまった、お互いの気持ち。
愛する人の残像を当てもなく追いかけ続ける、主人公。
彷徨いながら、ふと伸ばした手の先にはおぼろげに何かを手にします。
その手が掴んだモノは、愛した人の古い記憶だったのです。
太陽が射し込む光が影をつくり、手のひらからこぼれ落ちていったのでしょう。